福島県の玉川村との産官学連携がスタート。初年度は芸術学部の学生が特産品パッケージのデザイン制作に取り組みました。

2017.06.23

玉川大学では産学官連携による教育活動を数多く行っています。その一つとして2016年の秋からスタートしたのが、福島県石川郡玉川(たまかわ)村との「特産品パッケージデザインプロジェクト」です。このプロジェクトは玉川村が地域創生加速化交付金を活用して魅力ある村づくりを推進するため、大学と行政が連携して行うもの。2016年度は3年間継続事業の初年度にあたり、地元である福島大学が地域創生のための調査活動を、そして玉川大学が特産品のパッケージデザインの作成を担当することとなったのです。

福島県の中南部に位置する玉川村は自然豊かな環境で、さるなしという果実が特産品となっています。さるなしは、キウイを小さくしたような形状で、キウイと同じマタタビ科マタタビ属の果実。「ベビーキウイ」「ミニキウイ」といった名称でも知られています。味はキウイに似ています。あまりの美味しさに猿が食べてしまい、なくなってしまうことが、さるなしという名称の由来とされています。玉川村ではこのさるなしを出荷するだけでなく、ワインやドリンク、ジャム、ロールケーキなどの加工品も開発し、販売しています。2017年7月30日には全国のさるなし生産自治体を招いての「さるなしサミット」開催も計画されています。
玉川大学では、このさるなしを使ったワインとドリンクのパッケージデザインのリニューアルを担当することになり、芸術教育学科の中島千絵教授の指導の下、5名の学生たちがデザイン提案を行いました。

プロジェクトのスタートは2016年の9月。実際には中島先生の「芸術教育研究Ⅰ(美術)」という秋学期授業として取り組む課題ですが、10月の授業の開始前からのスタートとなりました。というのも、さるなしの収穫時期は毎年9月頃。しかも3週間ほどという短い期間なのです。この時期に合わせて行った二泊三日の現地視察では、卒業生が女将を務める旅館に宿泊。さらには生産者から直接話を伺い収穫も体験し、地元のイベントに参加するなど交流を深めました。こういった体験を通して学生たちはイメージをふくらませていきました。現地の方たちと接したことで、「皆さんの役に立ちたい」という気持ちも大きくなり、創作活動にもさらに前向きになったようです。

その後も継続的に視察を行い、授業でもデザイン制作に取り組みました。制作するのはドリンク缶、ドリンク6缶箱、ワインラベル、ワイン用紙箱の4アイテム。外部のデザイナー、イラストレーター、カメラマンのアドバイスを受けながら、コンセプトメイキングに始まり、デザイン作成、ダミー製作、写真撮影、プレゼンテーション準備とプロジェクトが進んでいきました。最終的に学生一人ひとりの個性や考え方が色濃く反映された、バラエティ豊かな提案を行うことができました。
パッケージデザインの審査会は今年2月に行われ、ドリンク缶とドリンク6缶箱、そしてワインラベルとワイン用紙箱に、2名の学生のデザイン案が採用されることに。また、他の3名の学生のデザイン案も、玉川村の特産品パッケージに活用されるというサプライズ決定もありました。

視察の様子

プレゼンの様子

今回のプロジェクトに参加した芸術学部芸術教育学科4年の学生たち5人に話を聞いてみました。

「まず『さるなし』という語感や名前の由来に惹かれ、それをデザインに落とし込んでいきました。デザイン制作のために視察に行ったり、現地の方と接したりしたことはこれまでなかったのですが、実際に訪れてみるとイメージがふくらみ、足を運ぶことの重要性を実感しました」
(山田菜津美さん:ドリンク缶とドリンク6缶箱に採用)

「消費者目線を重視し、店頭で埋没しないよう黒を使ったモダンなデザインに一新してみました。また『さるなし』という名称を個性的なロゴにして印象づけた点もポイントです。デザイナーの方のアドバイスでロゴ制作に取り組みましたが、これが私のデザインの軸になったと思います」
(篠まりなさん:ワインラベルとワイン用紙箱に採用)

「他のメンバーよりも1年遅れてデザインを学び始めた私にとっては、少し荷の重い課題でしたが、先生やデザイナーの皆さんのおかげで仕上げることができました。また他のメンバーからもいい刺激をもらったと思っています。今回は弾けるようなインパクトのあるデザインで、さるなしの瑞々しさを表現してみました」
(久保倉優維さん:ワイン用紙箱が、他のジュース用として採用)

「普段の授業であればデザインを提出して終わりですが、このプロジェクトでは私たちのデザインを楽しみに待っている人がいるということで、非常にやりがいがありました。私はキープコンセプトも大切な考え方だと思い、これまでの延長線上にあるデザインを心がけました」
(小山真奈さん:「たまかわ限定」という判子のデザインを、さまざまな特産品に貼るシールのデザインに採用)

「玉川村を訪れた際に感じた懐かしさや温かみを表現するため、レトロなデザインを意識しました。ロゴも既存のフォントではイメージに合わなかったため、自分でデザインしてみました。自分のデザインを学外の方にプレゼンテーションを行い評価していただくことも、非常にいい経験となりました」
(水上咲季さん:ドリンク6缶箱を多目的に活用する方向で採用)

指導を担当した中島教授に話を伺いました。

「玉川村の方と実際に会ってプロジェクトを進めることで、学生たちもコンセプトをデザインへ定着させる過程を学べたと思います。さるなしの瑞々しさを表現するには断面図を表現することが効果的なのですが、『果汁100パーセントの商品でなければ果実の断面図の画像は使用することはできない』という規制があります。こうした制限がある中でのデザイン活動も、学生にとっていい経験となりました。授業では自分の考える『いいデザイン』を突き詰めていきますが、今回は玉川村の方たちに喜んでもらえるデザインを提供したいという想いもあり、何度もブラッシュアップを重ねていきました。また福島大学の学生の皆さんが調査活動を行う様子を見て、自分たちの武器であるデザインでしっかりと結果を出したいという気持ちにもなったのではないでしょうか。本当にすばらしい人たちとの出会いに恵まれたプロジェクトになりました」。

「村と同じ文字を持つ大学」ということから、玉川大学に白羽の矢が立った今回のプロジェクト。学生たちのパッケージデザインは、7月のさるなしサミットに向け、間もなくお披露目される予定です。2年目となる今年度は、芸術学部以外の学部との産官学連携も計画されています。今後も学生の学びの機会を通して、玉川大学は玉川村の総合的なブランド力向上に貢献していきます。