礼拝堂の周りがコマルハナバチの結婚式場に!?― 玉川の丘で発見された行動生態学と化学生態学の知見が2つの国際学術誌に掲載。

2017.08.18

自然が豊かな玉川の丘には、コマルハナバチという真社会性のマルハナバチが生息しています。自然生態系では早春から夏にかけて咲く花々の、農場ではブルーベリーやカキの授粉に活躍しています。

聖山に建つ礼拝堂が研究のフィールドに
コマルハナバチの配偶行動 - 左:新女王バチ、右:雄バチ
(撮影:小野正人 教授)

このマルハナバチの配偶行動については、成熟した巣の周りに多数の雄バチが集まり、そこから巣立つ新女王バチを迎えるという様式である事が報告されていました。しかし、ミツバチ科学研究センターの原野健一教授は、早朝に礼拝堂の周囲の緑の間をパトロールするように飛ぶ雄バチがいるのを見つけ観察を続けました。

よく見ると、雄バチは木の葉に体を擦り付けるようにしてすばやく飛び、何やら塗っているようです。そこから、雄バチの下唇腺から分泌されるCitronellolとCitronellalが検出され、その場所に新女王バチが誘引されたのです。この発見により、コマルハナバチは、雄バチが自分の飛行ルートの各所にフェロモンで匂い付けし、そこに新女王バチを誘って結ばれるという配偶様式ももっていることが明らかになりました。

この行動生態学的な見地からの研究成果は、Apidologieにオンライン掲載されました。

掲載論文名

<Apidologie>

Patrolling and scent-marking behavior in Japanese bumblebee Bombus ardens ardens males: alternative mating tactic?
https://link.springer.com/article/10.1007/s13592-017-0534-2?wt_mc=Internal.Event.1.SEM.ArticleAuthorOnlineFirst

著者
  • 1) 原野 健一:
    玉川大学学術研究所ミツバチ科学研究センター教授
  • 2) 久保 良平:
    玉川大学学術研究所ミツバチ科学研究センター特別研究員
  • 3) 小野 正人:
    玉川大学大学院農学研究科応用動物昆虫学研究分野教授
    農学研究科長、農学部長
葉上に止まるコマルハナバチの雄バチ(撮影:小野正人 教授)

さらに,ミツバチ科学研究センターの久保良平特別研究員は、GC/EAD(昆虫触角電位解析装置付きガスクロマトグラフ)を使って、コマルハナバチの雄バチの下唇腺から発散する揮発成分を解析し、分離された3つの成分に対して新女王バチだけではなく雄バチ自身の触角も応答することを明らかにしました。Y字管を使った生物検定も行い、雄バチの下唇腺から分泌されるフェロモン成分に対して、新女王バチだけではなく、雄バチ自身も誘引されることを確かめました。

この発見は、雄バチがフェロモンにより、配偶者である新女王バチを引き付けるだけではなく、自分自身が同じ場所に戻ってこれるような匂い付けの機能ももっていることを強く示唆するものとして、The Science of Nature (Naturwissenchaften)にオンライン掲載されました。

掲載論文名

<The Science of Nature (Naturwissenschaften)>

Male scent-marking pheromone of Bombus ardens ardens (Hymenoptera; Apidae) attracts both conspecific queens and males
https://link.springer.com/article/10.1007/s00114-017-1493-1

著者
  • 1) 久保 良平:
    玉川大学学術研究所ミツバチ科学研究センター特別研究員
  • 2) 原野 健一:
    玉川大学学術研究所ミツバチ科学研究センター教授
  • 3) 小野 正人:
    玉川大学大学院農学研究科応用動物昆虫学研究分野教授
    農学研究科長、農学部長

以上の2つの国際誌にほぼ同時に掲載された研究論文は、ともに玉川の丘の礼拝堂の周辺で繰り広げられていたコマルハナバチの恋のドラマを科学的に明らかにしたもので、また一つ生命の不思議が解き明かされました。今後の研究がますます期待されます。