8/5・6「World Robot Summit」ジュニア競技のトライアル競技会を玉川学園で開催

2017.08.21

夏休み中の8月5日(土)・6日(日)、玉川学園高学年校舎アトリウムを会場として、「World Robot Summit(WRS)」ジュニア競技のトライアル競技会が開催されました。当日は国内7チーム、海外6チームが参加し、コミュニケーションロボット「Pepper」を使った熱い戦いが繰り広げられました。

2020年、オリンピックの年に世界のロボットエンジニアが愛知と福島に集結

「World Robot Summit(以下、WRS)」とは、経済産業省と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の主催によって、2020年に愛知と福島で開催予定の新しいロボット国際大会のこと。世界中のロボットエンジニア・研究者が、日本に集結し、競技会と展示会を通して、ロボット技術が私たちの暮らしや産業・社会をどのように変えていくかを提示します。競技会は「ものづくり(Industrial Robotics Category)」「サービス(Service Robotics Category)」「インフラ・災害対応(Disaster Robotics Category)」と「ジュニア(Junior Category)」の4つのカテゴリーに分かれており、このうち「ジュニア」は19歳以下のメンバーで構成されたチームで競います。

さらに、ジュニア競技には「スクールロボットチャレンジ」と「ホームロボットチャレンジ」という2種目があります。今回のトライアル競技会では「スクールロボットチャレンジ」が行われ、コミュニケーションロボットPepperを使って、学校生活の中でロボットを活用するアイデアとプログラミングの技術を競い合いました。競技会に先立つ8月2日(水)~4日(金)にはワークショップも開催され、来年10月開催のプレ大会、そして2020年の本大会に向けて、生徒と運営側で競技のルールや運営方法などが話し合われました。

トライアル競技会会場となった 玉川学園から2チームが出場

玉川学園からはロボット部(チーム名:玉川ブラックペッパー)とサイエンスクラブ(チーム名:玉川学園サイエンスクラブ)の2チームが参加。それぞれ初めて触るPepperに悪戦苦闘しながら、トライアル競技会に臨みました。

まず、初日(5日)に行われたのは「スキルチャレンジ」。Pepperと「英語で会話する」「人を認識して挨拶する」「人が触った場所をセンサーによってPepperに答えさせる」「大きなサイコロの数字をPepperが答える」など、あらかじめ決められたタスクに関するプログラミングを競いました。

2日目は「オープン・デモンストレーション」。学校環境の中でPepperを活用するアイデアを各チームが自由に考えて、それを実現するプログラミングを競いました。

玉川学園からエントリーした2チームの健闘ぶりを紹介しましょう。

玉川ブラックペッパー

5年生から12年生まで部員約30名を擁するロボット部から4人が参加。「玉川学園キャンパスで校門から目的の校舎まで案内してくれるPepper」というアイデアで大会に臨みました。まず、なぜこのアイデアを採用したかについて生徒たちに聞いてみました。

片岡吉翔さん(7年生):「玉川学園はとても広いので、初めて来た方が道に迷うことがあります。そこで門の所に目的地まで案内するPepperがあれば便利だと思いました」

高田弦さん(9年生):「お店などにあるPepperはその場からあまり動きませんが、僕たちはロボットとして“動く”ものを作りたかった。その点もこのアイデアを採用した理由の一つです」

準備期間は、試験期間をはさんで1カ月弱。短い時間の中でプログラミングを完成させました。競技会当日は発表時間ギリギリまで、真剣な表情でプログラムのチェックと動作確認のリハーサルを繰り返す姿が見られました。そんな熱意が実ってネットワークトラブルなどで予定されたパフォーマンスをやりきれないチームが続出する中、「玉川ブラックペッパー」は見事に発表内容を完遂。移動するPepperをステージの端でぴたりと停止させた時は、会場客席から自然と拍手がわき起こりました。発表終了直後の興奮冷めやらぬ生徒2人の声を紹介します。

谷脇圭祐さん(8年生):「今は『やりきった!』という気持ち。昨日の『スキルチャレンジ』でパフォーマンスが上手くいかなかったので、今日はメンバー全員が全力を尽くして発表に臨みました」

後藤祐哉さん(7年生):「とにかく緊張した~(笑)。Pepperのプログラミングは僕にとってとても難しかったですが、来年のプレ大会に向けて、もっと勉強しようとあらためてやる気が出てきました」

左から 片岡さん 高田さん 谷脇さん 後藤さん

ロボット部顧問 有川淳教諭

ロボット部は、毎年、「WRO(World Robot Olympiad)」「FLL(FIRST® LEGO® League)」、そして「ロボカップジュニア」という3つのロボット大会へのチャレンジを活動の柱としており、「ロボカップジュニア」ではこれまで2度の全国優勝の実績があります。今後、WRSが4本目の柱になることを期待しています。
今回、初めてPepperに触れた生徒たちは、まずマニュアル片手に電源の入れ方から学び始め、途中試験期間をはさんで1カ月に満たない準備期間でよく頑張ったと思います。1日目の「スキルチャレンジ」で思った通りのパフォーマンスができず、また海外チームとのスキルの差を実感して、大きなショックを受けたようです。そこから生徒たちの目の色が変わりました。2日目は自分たちの持てる力を存分に出し尽くしたと思います。この経験を糧により広い視野からロボット研究に取り組めるようになってほしいですね。

玉川学園サイエンスクラブ

サイエンスクラブは、今回の競技会で「音楽に合わせて指揮をするPepper」というユニークなアイデアの発表で注目を集めました。

國吉仁志さん(5年生):「玉川学園の一日は『歌に始まり、歌に終わる』と言われていることから、いろいろな曲に合わせて指揮ができるロボットにしようという考えで生まれた、玉川ならではのアイデアです。実際に取り組んでみると、曲の進行に指揮をぴったり合わせるための調整が予想以上にたいへんでした」

ロボット部同様、初めてPepperに触れる生徒たちはプログラミングに四苦八苦。発表直前にもネットワークのトラブルに見舞われるなど、最後まで気を抜けない1日となりましたが、予定していたパフォーマンスをなんとか無事クリアすることができました。ステージに上がった生徒に、競技会に取り組んだ感想を聞いてみました。

中川賀絵さん(8年生):「プログラミングしたとおりにPepperが動いてくれた時は感動しました。もちろん簡単には思った通りに動いてくれませんでしたが(笑)。将来は、ロボット本体から自分で作ってみたいです。社会に役立つロボットを作ることが私の夢です」

中川さん 國吉さん
中山さんが発表

サイエンスクラブ顧問 田原剛二郎教諭

サイエンスクラブの部員は10名で、ロボットに携わっている生徒は6名です。大会としては毎年「ロボカップジュニア」に出場しています。また、今年の第60回日本学生科学賞において、11年生の柳田大我さんが「科学技術振興機構賞」を受賞し、国際学生科学技術フェア(ISEF : International Science and Engineering Fair)の日本代表メンバーに選出されるなど目覚ましい成果もあげています。
今回のトライアル競技会は、慣れない環境の中、生徒たちも戸惑うことが多かったと思います。発表当日はネットワーク環境や会場内の音や光線などの影響によって、Pepperが思った通り動かないなどのトラブルが多発しましたが、チームとしてやりきったことをまずほめてあげたいと思います。
生徒たちは初めて触れるPepperに苦労しながらも、楽しんでプログラミングに取り組んでくれました。Pepperはとても能力が高いロボットなので、今後もWRSへの挑戦を通して、「Python」という言語を使った高度なプログラミングなどにも取り組んでみたいと思っています。

参加生徒
中山敬太さん(10年生)
野田基さん(10年生)
西岡英光さん(8年生)
中川賀絵さん(8年生)
國吉仁志さん(5年生)

プレ大会、本大会に向けて参加者全員がモチベーションアップ!

今回のトライアル競技会の優勝は「スキルチャレンジ(1日目)」「オープン・デモンストレーション(2日目)」ともにオーストラリア「Merrimac State High School(チーム名:#QLDCODEJAPAN)」が独占。玉川学園の2チームは残念ながら入賞を逃しましたが、それぞれ顧問の先生のコメントにあるとおり、生徒たちには将来に向けたかけがえのない経験となりました。

2日間の濃密な時間を共有した国内外の13チームのメンバーは、大会後のレセプションで、チームと国を超えて楽しく語り合っていました、最後は互いの写真を撮り合いながら、大会での再会を誓って解散。それぞれのホームグラウンドに戻って、今回の経験を糧にプログラミング技術のさらなる向上を図っていくことでしょう。

WRSジュニア競技委員会副委員長 玉川大学工学部情報通信工学科 岡田浩之教授に聞く

WRSの4つのカテゴリーの中でも「ジュニアカテゴリー」には、次世代のロボット技術者育成という大きな使命があります。私たちWRS運営スタッフは、参加する子供たちにとって有意義な大会にするために、最大限の努力をはらっています。今回のトライアル競技会も、国内外のチームが実際の競技を行うことで、ルールや大会運営におけるさまざまな課題を試し、改善点を洗い直すなどしてよりよい大会運営ができるようにしていきます。

玉川学園の2チームを含む国内のチームは、海外チームの競技への取り組み方に大きなインパクトを感じたようです。私の目から見ても海外チームはとてもレベルが高いと感じました。子供たちには、この大会を通して「世界は広い」ことを知ってもらうのは大切なことです。同時に「自分たちも十分世界で戦える」という自信もつけてもらいたいと思っています。

2020年の本大会では、現在の小学校高学年〜中学生が主力メンバーになることでしょう。今回参加した生徒たちには、世界と戦った感触をしっかりかみしめながら、プレ大会、本大会では頂点を目指して果敢にチャレンジしてほしいと思っています。