英語教育の最新動向を探り、知見の共有を図る「2017 玉川大学英語教育セミナー」を開催

2017.09.13

全学共通の英語教育プログラムを提供する他、英語教育に関するさまざまな研究活動を行う玉川大学ELFセンター。同センターでは、英語教育ならびに研究活動を振り返るフォーラムを毎年開催しています。玉川大学英語教育研究会(ELTama)との共催となる今回は「2017 玉川大学英語教育セミナー」というタイトルのもと開かれました。

「連携」をテーマにCELFとELTamaが初の合同開催

「2017 玉川大学英語教育セミナー」は、8月22日(火)、玉川大学の英語学修拠点であるELF Study Hall 2015において開催されました。今年度は、玉川大学ELFセンター(CELF)と玉川大学英語教育研究会(ELTama)との初めての合同開催となり、「連携」をテーマに多彩なプログラムが用意されました。

最先端の英語教育や玉川大学が展開する教育や研究活動に触れられる絶好の機会ということもあり、当日は本学の教職員のみならず、玉川大学を巣立ち現場で活躍する英語教員、そして大学院生など多数の熱意ある参加者に恵まれました。 その様子をご紹介します。

ELF実践者が経験談や指導方法を紹介

ELFセンターのPaul McBride准教授の開会挨拶のあと、ゲストスピーカーの新潟県立大学のPatrick NG教授による講演が行われました。タイトルは”My transformation as an ELF practitioner:Insights from an Outer-Circle teacher(ELF実践者としての変容、アウターサークルの教師からの洞察)”。“outer-circle”とは、英語が主として第一言語として使われている“inner-circle”に対して、英語が公用語あるいは重要な第二言語的役割を任っている国々を指します。シンガポールやインドなど50か国を超える国々と地域が該当し、3億人から5億人がこの地域に属するとみられています。シンガポール国籍をもつPatrick NG教授は、このOuter- circleの英語使用者の立場から、ELFを利用した英語教育の実践者に至るまでの経緯と変遷を話しました。

英語教育者として20年以上のキャリアを持ちながらも、訪日直後は英米語とは異なるシンガポール英語のアクセントに学生は違和感を感じていたそうです。しかし今は、完全な発音でなくとも様々な国の人たちとコミュニケーションできることを学生たちは学んでいると、これまでの現場での体験を紹介しました。さらに講義で実践しているオリジナルの指導方法など、ELF実践者の生の声に、参加者は興味津々の様子で耳を傾けていました。

活発に意見交換された大学院生の研究発表

TAMAGOラウンジで行われた大学院生の研究発表では、文学研究科英語教育専攻の大野雄真さんと魚本大地さんが、高校生を対象とした”Teaching Demonstration(模擬授業)”で、日常生活でよくある問題、たとえばどこへ行くかを決める場面などを取り上げました。その中で会話中心の授業をどのように進めるかをプレゼンテーションし、利用しやすいフレーズをキーワードに、問題を解決する方法を探りました。

同じく、大学院生の徳木小夏さんはハワイで行われたISLS国際大会で行った研究発表を再度行いました。”Multimodal communication as lingua franca(リンガフランカのマルチモダールなコミュニケーション)”というタイトルで、”Word as image”という手法では、単語の意味を伝えるために、その単語を構成するアルファベットのみを利用して、アニメーションを作り出し、受け手側の興味を自然に引き出します。「実は大学入学以前は英語が苦手でした」と話す自身の体験も踏まえて、全世界で、どんな人でも利用できる英語教育ツールに発展することを期待しているそうです。そのほか、ELFセンターの教員によるポスターセッションも同時開催され、参加者との意見交換が活発に行われていました。

「連携」をテーマに現役教師が教育現場を語る

午後の分科会では、セミナーのタイトルでもある「連携」の具体例として、玉川大学のOB・OGと現役大学院生らとのネットワークづくりの時間が設けられました。そこでは、玉川大学文学部の卒業生であり、現在英語教師として活躍している大鐘宏和さん、川原美菜子さん、有川淳さんが「連携」をテーマにプレゼンテーションを行いました。

発表者のひとり、大鐘宏和さんは、私立の中高一貫校の男子校で英語教師をしており、中学と高校の教師の連携について発表。たとえば、前年度の担任が近くにいるおかげで、生徒の情報交換がしやすく、その情報を引継ぎつつ、自分ならではの指導方法を組み合わせることでオリジナルの指導方法を作り上げているとのことでした。また、他校へ授業を見学に行くなどの情報収集やご自身のブラッシュアップも怠らないそうです。参加者には、後輩の大学院生なども多く、自らの将来像を重ねるように、先輩がたの話に聞き入っていました。

世界規模で見るELFのコミュニケーション戦略

去る6月にヘルシンキ大学で開催された、今年で10回目となるELFの国際学会「10th anniversary Conference of English as a Lingua Franca」。玉川大学からも多数のELF教員が参加し研究発表の機会を得ましたが、その出席メンバーによる分科会も同時に開催され、コミュニケーション戦略に関する発表が行われました。
ELFでは、言語は、その言語が生み出された状況や環境に関連付けて学ばれるべきとしています。自分の考えを伝える話者だけでなく、そのメッセージを受け取る聞き手が強固な協力関係を構築し、その関係を潤滑に維持するためにコミュニケーション戦略が重要です。
分科会では、発表者がこれまでに獲得した見識や、研究プロジェクトを通じて発見に至った指導方法などを参加者と共有しました。

セミナーで得た成果を、英語指導と研究へ活かす

セミナーの最後を締めくくる講演は、リベラルアーツ学部の榎本正嗣教授による「英語教育と英語音声学」。かつての教え子も多数参加し、穏やかな雰囲気の中、ユーモアも交えた語り口で、一見むずかしい音声学を分かりやすく説明しました。話は英語の音構造から始まり、日本人が発音しにくい母音の説明が続きました。教育的視点からは「会話では文脈から情報を得ながら相手の話を聞いているので、多少発音がラフでも相手には伝わる」など興味深い話もありました。

質疑応答では、午後の分科会で登壇された大鐘先生からの、中学1年生の生徒への発音の指導方法について質問が出ましたが「英語を学ぶ際に最初に直面するのは“音”。何らかのヒントになるようなことを提示して興味をもたせればよいのではないか、たとえば、こんなにも英語には母音があるんだよと教えてあげるなど」と回答。その他にも現役の英語教師からの質問には「英語の音声指導も大切だが、イントネーションが大事」と回答されていました。

ELFの広がりは、苦手意識を持たずにコミュニケーションを楽しむツールとして英語に接する場面を増やすことにつながります。
多彩なプログラム構成で、多角的に最先端の教育活動や研究内容に触れられた今回のセミナー。このセミナーで得られた知見を、英語指導として学生へとフィードバックし、また、自身の英語研究の糧にして授業に取り入れるなど、参加者それぞれにとって得ることの多い機会となったことでしょう。