多様性を認め、それを生かせる教員になるために。神奈川県立地球市民かながわプラザ(あーすぷらざ)の方による出張授業が行われました。

2017.12.04

10月27日(金)、教育学部の専攻科目「教職実践演習」において、神奈川県立地球市民かながわプラザ(通称:あーすぷらざ)の職員の方をお招きしての出張授業が行われました。この授業は、4年間にわたり学んできた教職課程の集大成といえるもの。これまでの授業や学外活動、実習で得た経験を総括し、身につけたスキルを自己分析しながら授業力や指導力に磨きをかけていくことを目的としています。授業計画やクラスマネジメント、模擬授業などを学修・体験しますが、その中で「日本語を母語としない児童の支援」といったことについても学んでいくのです。この日は、前回の授業でさまざまな事例について学んだ学生たちが、実際にそうした子供たちや保護者と接している現場の方からお話を伺う、貴重な機会となりました。

あーすぷらざでは、日本語を母語としない児童生徒の支援として、学校や教員へのサポートを行ったり、外国人向けの相談窓口を開設しています。また、多言語で書かれた絵本、様々な国の学校の書類、教材、本など、日本語を母語としない大人や子供だけでなく、そういった人たちを支援する学校の教員や支援員にとっても、役立つ資料を集めた図書館や情報のリソースセンターでもあります。この日の授業のゲストスピーカーとしてお招きしたのは外国人教育相談担当職員の渡辺早織さんと外国人教育相談タガログ語サポーターの宮嶋ジャネットさん。渡辺さんは玉川大学文学部比較文化学科で学んだ卒業生でもあります。

日本で生活する外国人が増加する中、その子供たちが児童・生徒として一般の学校で学ぶ機会も増えています。外国籍の子供もいれば、日本生まれでも両親が外国籍の子供や、日本国籍でも外国で生まれ育った子供もいます。あーすぷらざではこうした多様な背景をもつ子供たちを総称して「外国につながる子供たち」と呼んでいます。現在神奈川県の小中学校に在籍している外国につながる子供たちの中で日本語指導が必要とされている児童生徒数は5,000名以上。「これは全国2位の人数です。しかし日本語の問題だけでなく、文化や習慣の違いによる多くの問題も生まれています」と語る渡辺さん。現在、大学の教職課程での指導内容にはこうした状況への対応は含まれておらず、学生たちは現場に出て、初めて対応方法を考えることになるのです。

フィリピン出身の宮嶋さんによると、フィリピンでは女の子は幼い時期からピアスを身につけるとのこと。また学校へおやつを持ち込むことも当たり前とのことですが、「こうした習慣を持った子供があなたの受け持つクラスに転校してきたときに、どのように対応するべきか。皆さんも考えてみてください」と渡辺さん。学生たちは数人のグループに分かれ、話し合います。ピアスに関しては「怒るのではなく、保護者とも相談をする」、「他の児童に周知し、本人にもなぜ皆が驚いたかの理由を話す」といった意見が、またおやつに関しては「文化の面から指導する」、「学校のルールとして保護者にも伝達する」といった意見が発表されました。学生たちの相手の立場を思いやった意見を興味深そうに聞いていた宮嶋さん。ご自身も子供たちが日本の学校に通っていた時、学校からの連絡に戸惑うことも多かったと話しました。また、宮嶋さんと同じように日本で子育て経験のある他の教育相談サポーターさんから「遠足の連絡で『飲み物を用意してください』と書かれていたが、水筒がイメージできず、ペットボトルのコーラを持たせたことがある。またプールカードや防災ずきんなども、最初はよく分からなかった」という話を聞いたことがあるとのこと。

教員は、外国につながる子供たちだけでなく、その保護者とも緊密なコミュニケーションを取ることが重要なのだそうです。「外国人の家庭では、子供の学校だけが日本との接点である場合もあり、そうした意味でも教員の役割は非常に重要です」。
渡辺さんも「大切なことは広い視野を持ち、個に応じた視点で捉えること」と語ります。また、保護者と接する際には分かりやすい日本語で伝えることが大切なのだそうです。何より、外国につながる子供たちの存在は、他の児童・生徒にとって多様な価値観や文化を理解する絶好の機会。「そうした子供たちの存在を『大変だ』とマイナスに捉えるのではなく、クラスにとってプラスになることなのだと考えてほしいですね」。

学生にも話を聞いてみました。「今日の授業で、外国につながる子供たちの保護者の場合、学校からの連絡をきちんと理解できないといった事例があることを知りました。そうした際に担任教員は早く馴染むようにと言うのではなく、自ら歩み寄る姿勢が大事なのだと思います。来年度から小学校教員になりますが、文化の多様性を子供たちに教えていきたいと感じました(女子学生)」、「外国につながる子供たちのことは知っていたのですが、対応方法としては保護者や外部機関との連携というだけで、自分の中では具体的な連携先や方法が見えていませんでした。教員になった時、そうした場合にどこと連携すればいいのかを知ることができたので、とても役立ちました(男子学生)」、「ゼミであーすぷらざへ行ったことがあるのですが、今回は保護者の方の生の声を聞くことができ、とても参考になりました(女子学生)」、「多様な考え方は外国につながる子供たちに限らず、日本の子供にも当てはまる話だと思います。卒業後は教員になることが決まっているので、広い視野を持って子供たちと接したいと思いました」。

外国につながる子供たちへの対応は、各学校や担任教員に委ねられていることが多いのが現状ですが、これから教壇に立つ学生たちにとってそうした子供たちや、彼らと接する日本の子供たちへの適切な指導について学んだことは、とても意味のあるものになりました。

神奈川県立地球市民かながわプラザ(通称:あーすぷらざ)

あーすぷらざは、日本語を母語としない児童生徒の支援として、学校や教員のサポートを行ったり、外国人向けの相談窓口を開設しています。また、多言語で書かれた絵本、多学校の書類の雛形、教材、本など、日本語を母語としない大人や子どもだけでなく、そういう人達を支援する学校の教員や支援員にとっても役立つ資料を集めた図書館や情報のリソースセンターもあります。