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【動画付き】ロジカルな議論の構築を学生同士で学び合う、国語教育学科が行う新たな取り組み

2017.12.22

私たちが日常的に使っている日本語。けれども日本語を指導する場合はもちろん、自分の考えを発信したり表現する場合、まずは正しく日本語を理解している必要があります。外国の人が日本語を学んだり、私たち日本人がネットを使って世界に向けて情報を伝えるといったことが増えた現代、日本語をきちんと理解し正しく運用する力は今まで以上に求められています。こうした時代の変化に対応できるよう、2017年に誕生したのが玉川大学文学部の国語教育学科です。この学科では豊かな文章表現や論理的思考を身につけることにより、高度な日本語運用能力の習得を目指しており、そのためにさまざまな科目で学びを深めます。

今回、紹介する「言語表現入門」もその一つ。1年次に2コマ連続で行われるこの授業は、読み取った情報を基に思考を巡らし、その論理的な考察を口頭・記述で表現する力を身につけることを目的としています。ここでは、11月15日(水)に行われた授業を中心にレポートします。

この日の「言語表現入門」では、“トゥールミン・モデル”について学びました。これはイギリスの分析哲学者であるスティーブン・トゥールミンが考案した論証モデルです。論証モデルとしては三段論法が有名ですが、この論証モデルはもう少し複雑な構成になっており、事実、論拠、裏づけ、限定、反駁、主張という6つの要素によって組み立てられます。たとえば、三段論法の見方では「山田くんは日本人である」という主張を導き出すためには、「山田くんは千葉出身である」という事実と「日本国内の出身ならば日本人である」という論拠があればよさそうに感じます。しかし、日常の論理では、その論拠が正しいといえるのはなぜか、いつも確かにそのように言えるのかといった疑問が起こりえます。そうした疑問に答えるために、さらにどのような裏づけ、限定、反駁が必要なのかを考えていくものです。
この授業を担当する篠崎祐介助教が授業の冒頭で説明を行った後、学生がグループを組んでトゥールミン・モデルについて具体例を挙げながら話し合っていきます。まさに学生が主体となって授業を進めており、学生たちは議論が行き詰まると篠崎先生に相談しています。そして授業の後半では学生の一人が教壇に立ち、一つの事例を挙げながら、そこで必要になる要素についてみんなで話し合っていきます。こうして、この日の授業は終了しました。日本語を適切に運用する上で論理的思考力が必要となります。その力を養うための一つの科目である「言語表現入門」で、学生たちはトゥールミン・モデルの構築に真剣に取り組んでいました。

授業を終えた学生に話を聞いてみました。

文学部国語教育学科1年 池田昴哉さん

「国語科教員を目指しているのですが、この学科は“国語からKOKUGOへ”と謳っており、グローバルに国語が学べると思い入学しました。この言語表現入門では学生が自主的に学んだり、いろいろなグループとディスカッションを行うので、発信力や語彙力が身についたと思います。今日の授業で学んだトゥールミン・モデルはとても難解なのですが、多くの人の意見を聞くことで、理解を深めることができたのではないかと感じています。こうした意見交換の際に欠かせないのがコミュニケーション力ですが、実際に多くの人と関わることでしか高めることができません。この授業を通してコミュニケーション力はもちろん、人の話を聞く力や深く考える力が身につきました」

文学部国語教育学科1年 津川理乃さん

「この授業では毎回先生から課題が出て、全員の意見を学生同士でまとめていくことが多いのですが、最初は仲のいい友だちと議論を行いがちです。けれども積極的に他の人とも意見を交換することで議論がふくらんでいくんですね。これまで経験したことがないような授業だなと感じています。今日は意見を取りまとめる役割も担当しましたが、私がリーダーということではなく、皆の前で話すのが得意なので担当しました。そういうことが苦手でも優れた意見を持っている人はいるし、それを引き出すのも自分の役目だと思っています。将来は教員をめざしているので、知識を教えるだけでなく、今日の授業で学んだことを生かして皆にヒントを与えて意見を引き出せるような教員になりたいと思っています」

授業を指導する篠崎先生は「教職であっても一般企業であっても、相手を説得する能力が求められます。強めに言ったり繰り返すことが説得力につながると思われがちですが、そうした感情に流されないロジカルな考えをもってほしいと思っています」と語ります。こうした論証モデルは学生の学修のプラスになるだけではありません。今回の学習指導要領の改訂によって大きく変わる国語科の教育内容にも関係しているそうです。

「高等学校の国語の科目構成が『現代の国語』『言語文化』を必修科目とし、そこに『論理国語』『文学国語』『国語表現』『古典探究』といった選択科目が加わるとされています。論理的思考の育成は教育の重要な課題ですが、それが国語という教科に明確に位置づけられることになります」と篠崎先生。「言語表現入門」は、そうした次の時代の教育内容を先取りしていると言えるかもしれません。
学習指導要領の改訂により、これまで以上に国語科は重要な役割を求められます。国語教育学科では、こうした変化にも対応した教育を行っていきます。

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