健康教育研究センター主催「スポーツと教育2017」としてワークショップ「パラリンピアンに学ぶゴールボール」が開催されました。

2018.01.17

玉川大学教育学部健康教育研究センターでは、毎年「スポーツと教育」として、オリンピック・パラリンピックに関するシンポジウムを開催しています。今年度は、初めてのワークショップとして「パラリンピアンに学ぶゴールボール」を開催。五輪代表候補選手の指導のもと、教育学部教育学科保健体育専攻の学生ら約50人がパラリンピック種目のゴールボールを体験しました。

「ゴールボール」とはどのような競技なのか?

ゴールボールは、視覚障がい者が楽しむ球技で、もともとは第二次世界大戦で視覚に傷害を受けた傷痍軍人のリハビリテーションのために考案されました。日本には1980年代初期に伝わっていましたが、全国的に知られるようになったのは1992(平成4)年頃から。東京や京都でゴールボール教室が開催され、競技の普及と競技者の育成が行われるようになりました。現在、日本は女子代表チームがパラリンピックの常連で、ロンドン大会では金メダルを獲得しています。

ゴールボールは、バレーボールと同じ広さの18m×9mのコートを使用します。9mの短辺いっぱいにゴールが設置され、1チーム3名の対戦で、鈴入りのゴム製ボールを転がして相手ゴールに入れる得点を競います。選手全員はアイシェードという目隠しのゴーグルを着用し、完全に見えない状態で競技を行います。パラリンピックには視覚障がい者でなければ出場できませんが、日本ゴールボール協会(JGBA)主催の国内オープン大会には視覚障がい者以外も選手として出場できます。

パラリンピアンが参加者を直接指導

当日、玉川学園を訪れたのはゴールボール男子日本代表チームの小林裕史氏(株式会社三菱総合研究所)と川嶋悠太氏(アシックスジャパン株式会社)、そして正眼者(視覚障がいがない人)であるJGBAの熊坂哲兵氏です。
小林氏は27歳。生まれつきの弱視で左目の視力はほとんどないそうです。高校時代に部活でゴールボールと出会って以来、パラリンピアンを目指して練習を積み重ね、現在は代表チームの副キャプテンを務めています。
川嶋氏は野球をやっていた小学校4年生の時に突然視力が落ち、中学校から盲学校に通学。そこでゴールボールと出会いました。高校生の時に世界ユース大会予選で敗れ、その悔しさから競技に真剣に取り組むようになったそうです。
熊坂氏は、教員を目指す大学の講義でゴールボールに出合い、その魅力にとりつかれました。今では選手として視覚障がい者とともに競技を楽しみ、JGBAスタッフとして競技の普及活動などに取り組んでいます。

まず、参加者は記念体育館内の教室に集まり、小林氏を講師に競技の歴史とルールについてパワーポイントを使ってレクチャーを受けました。
必要とされるのは「パワー」「スピード」「空間・方向感覚」という競技の3要素に「先を読む」「裏を読む」戦術、「ボールを恐れない強い心」と「ボールを受け止める強い肉体」、そして最も重要な「チーム力」であるなどの解説に、未体験の競技ながら様々なスポーツに親しんでいる保健体育専攻の学生はイメージをつかむことができました。
続いて女子日本代表とトルコ代表との世界レベルの試合VTRを見て、このあとに予定しているゴールボール体験のイメージをつかみます。

その後、全員が体育館2階の球技場に移動し、あらかじめ用意されていた仮設のゴールボールコート2面を使った体験会がスタートしました。
まず2人の代表選手と熊坂氏の指導で、男女別に重さが1.25kgもあるゴム製ボールの投げ方と全身を使ったディフェンスの動作を何度も繰り返しました。保健体育専攻の学生たちは、何度か繰り返すうちに基本的な動作を身につけ、回転しながら投球したり、チームでパスを回したり、休憩時間にはミニゲームを試してみたり、積極的に取り組んでいました。

小学生から大学生までが競技の魅力を実感!

熊坂氏が審判を務めた試合形式の体験会は、最年少の参加者だった小学生3人と川嶋選手1人の対戦から始まりました。目がまったく見えない状態にとまどい、最初は思わず目隠しのアイシェードに手をやって外しそうになる(本来は反則)子供たちでしたが、少しずつ恐る恐るながらも楽しそうに投げ始め、最後には日本代表の中でも鉄壁のディフェンス力を誇る川嶋選手から見事に1点をもぎ取りました。
次に保健体育専攻の女子学生が3人ずつのチームを作って次々に対戦。ゴールボールのコートに縦横何本も引かれているラインには太いヒモが埋め込まれており、その凹凸を触ることで自分の位置を把握できるようになっています。しかし、初めて体験する学生には正確に自分の位置を把握することがとても難しく、しばしば全く違う方向にボールがいってしまうことも。それでも小林氏から「初めてでここまで投げられるのはさすが」と感心されるプレーも随所に見られました。
最後に男子学生が3対3で対戦。力強いプレーで、バウンドが強すぎる「ハイボール」などの反則も多かったのですが、スピード感とパワーあふれる試合展開にギャラリーも手に汗を握ります。「おそらく私たちでもあのボールは止められない」と2人のパラリンピアンが感心するほどのゴールも生まれました。
最後は小林、川嶋両選手も加わって、男子バスケットボール部選手らの学生チームと対戦。アイシェードでまったく見えないはずなのに、転がるボールの行方やライン際ぎりぎりをまるで見えているかのようにコート内を動き回る2人のパラリンピアンに、学生たちから思わず溜息がもれます。
視覚をまったく使わないゴールボールは聴覚が重要となるので、試合中にギャラリーは歓声を上げることができません。しかし、それでもプレーに参加しているという意識が参加者全員に広がっていました。

体験会終了後、小林、川嶋両選手から「玉川の学生さんは初めてとは思えないほどディフェンスがしっかりできていました。練習すればきっと上達します。2018年秋には目が見える人でも参加できるゴールボールのオープン大会が開催されますので、ぜひ挑戦してください」と学生たちへの期待の言葉をいただきました。短かい時間でしたが、ゴールボールという競技が持つ魅力を知ることができた今回のワークショップ。参加者にとっては未体験のパラリンピック競技の面白さを実感するとともに、多くの方が抱える障がいというものをあらためて考え、多様性を認め合う気持ちを高める貴重な機会となりました。