「赤ちゃんはどのようにこの世界を見て、感じているのか?」2/17開催 第13回「赤ちゃんフォーラム」レポート

2018.03.08

玉川大学脳科学研究所脳科学研究センターには、赤ちゃんの言語獲得、また視覚や聴覚を含む心の発達のしくみを脳科学的なアプローチで解き明かす調査・研究を行っている「赤ちゃんラボ」が設置されています。 同ラボの調査には0~30カ月児と保護者の方、約2000人がご協力いただいています。

脳科学研究センター主催の「赤ちゃんフォーラム」は、「赤ちゃんラボ」での調査研究の成果などを発表する機会として、国内外の研究者や学生のほか、育児をしているお父さんやお母さんまで幅広い方々を対象に、2004年からほぼ年に1回のペースで開催しています。

2018年2月17日(土)に開催された第13回「赤ちゃんフォーラム」は、本学と同じく「赤ちゃんラボ」を設置している中央大学文学部の山口真美教授をお招きし、昨年4月に本学脳科学研究所所長に就任した小松英彦教授との二本立ての講演会となりました。

講演1 「赤ちゃんの視覚世界を科学する」

中央大学文学部 心理学研究室 山口真美教授

山口教授は、乳児の顔認識の発達、なかでも赤ちゃんの視覚についてユニークな手法で研究に取り組まれています。3〜4カ月までは形を認識する能力が未熟で大人とは異なる不思議な視覚世界を見ている赤ちゃん。しかし脳の神経細胞と神経細胞を結びつけるシナプスの急激な増加により、5カ月ぐらいから大人と同じような立体感を獲得します。こうした脳の発達と視覚の関係について、山口教授が行った実際の実験に基づきわかりやすく解説。数カ月の間で目まぐるしく変化する赤ちゃんの視覚に対して会場から驚きの声が聞かれました。

講演2「質感を感じる脳の動き」

玉川大学脳科学研究所所長 小松英彦教授

私たちは物を見ただけでその素材がどのような物質(金属、木材、プラスチック、ゴムなど)でできているか、また触ったときにどんな手触りかといった「質感」を感じることができます。赤ちゃんも目に見えるものを手で触ったり、舌触りを感じたり、「質感」を通して世界を理解しようとしています。この「質感知覚」は人が生きていく上で重要な役割を果たしており、感性の獲得にも欠かせない要因と考えられています。
視知覚のメカニズムについて研究を進めている小松教授は「金色とは何か?」という話題から始まり、質感知覚の定義や現実世界の多様性を生み出すその重要性を解説。続けてMRI(核磁気共鳴画像法)装置を使った最新の実験結果などを説明しながら、脳における質感知覚のメカニズムがどこまで解明されているのかを詳しく紹介しました。

研究者と赤ちゃんのお父さん、お母さんが情報交換し、新しいアイデアを生み出せる場に

今回の「赤ちゃんフォーラム」には、日頃から「赤ちゃんラボ」にご協力いただいている親子連れなど、一般の参加者も来場しました。
最後に本フォーラムの企画・運営に携わり、「赤ちゃんラボ」メンバーで、乳幼児の音声コミュニケーション発達について研究をしている梶川祥世リベラルアーツ学部教授に、フォーラムの開催の目的と意義、今後の展望について聞きました。

「今や脳科学分野などの急速な進展とともに、これまでよくわからなかった赤ちゃんの言語獲得や感覚について多くの謎が解明されるようになりました。一人ひとりの価値観や個性、そしてそれらによって構成される人間の文化というものが、どのようなメカニズムで出来上がってくるのか? 『赤ちゃんフォーラム』は、そうした最新の研究成果を専門家はもちろん一般の方々にも広く知っていただくために開催しています。

授乳やおむつ交換ができる部屋を別室に用意

『赤ちゃんラボ』の調査・研究では、日ごろ育児で感じている素朴な疑問や知りたいことなどが重要なヒントになっています。今後もお父さんやお母さんとの情報交換を通して、新しい研究アイデアを生み出せる場にしていきたいと考えています。今回も赤ちゃんと一緒に参加しやすいよう、別室に授乳室を用意しました。赤ちゃんの成長に関する科学的知見を知ることで、育児の苦労を“楽しみ”に変えることもできるかもしれません。次回開催時にも多数のご参加を期待しております」