玉川大学 読売新聞社立川支局 共催 連続市民講座第11回「AIとロボットが創る未来の社会─人間と協働するAI・ロボット─」

2019.01.10

2018年4月より玉川大学では読売新聞社立川支局と共催の連続市民講座「進む大学研究 最先端の現場から」を開催。この公開講座は玉川大学8学部・研究所の先生方が講師を務め、それぞれの専門分野での“最先端”についてわかりやすく講義してきました。そのラストを飾る第11回の講座は12月22日に「AIとロボットが創る未来の社会─人間と協働するAI・ロボット─」をテーマに行われ、多くの聴講者を集めました。講師を務めた工学部情報通信工学科岡田浩之教授は、本学学術研究所の「先端知能・ロボット研究センター(AIBot研究センター)」主任でもあります。

AI(人工知能)とは大きく定義すると「コンピュータに知性を与える手段の総称」と話す岡田浩之教授。まず家族とロボットが共存する「未来の家庭」を描いたイラストをスクリーンに映します。
「私はこのイラストをAI・ロボットの未来像として25年前から使っています。お掃除ロボットの“ルンバ”が誕生して16年経ちますが、まだイラストのように人とロボットが協働する家庭は実現されていません。おそらく2050年になっても『ドラえもん』や『鉄腕アトム』のような知能を持ったロボットは無理でしょうから、当分の間このイラストを未来の家庭として使っても問題なさそうです」

映し出された「未来の家庭」のイラスト

人間と協働するロボットの身体=ハードウェア技術に関してはすでに相当高いレベルに達しています。そのため人間がプログラミングしたり、操作することでロボットは「知能があるように」振る舞うことができます。ネックとなるのは知能=ソフトウェア技術で、ロボット自身が判断を下して人の暮らしをサポートする「自律ロボット」を実現するのは「まだまだ先の話」だと岡田教授は解説します。
メディアで大きな話題となった囲碁やチェスの名人に勝ったAIは、「膨大なデータ処理能力によってあらかじめプログラムされたことを力業で実現しているにすぎない」そうです。また、人間でも難しい心臓手術を成功させたり、難病を診断する医療向けAI・ロボットも同様で、限定されたタスク(課題)を遂行するためにプログラム通りに動いているだけです。現在のAI・ロボットは決して「自律」して働いているわけではありません。

人間の仕事をAI・ロボットに奪われるという多くの人が恐れている懸念も「今後数十年は心配ない」と岡田先生は断言します。これまで単純作業がAI・ロボットに置き換わると言われてきましたが、岡田教授によると実はその逆で、医師、弁護士、大学教員など高度な判断や専門性の高いスキルのほうがAI・ロボットに置き換えるのは簡単で、人が何気なく行っている単純作業こそがAI・ロボットには難しいことなのだそうです。
「現状のAI・ロボットはあくまでも機械であり道具。この世に生まれて以来、多くのことを学習し続けて、無意識を含めて様々な能力を身につけてきた人間の“知”を過小評価すべきではありません」
人間が生来身につけた動作をすべて分析してAI・ロボットに設定するには、最先端の情報処理技術を駆使しても追いつかないほどの膨大な時間と労力が必要となるそうです。

現在のAIブームは「第3次」といわれています。第1次ブームは「人工知能=Artificial Intelligence」という言葉が初めて使われた1956年から1970年頃まで。第2次ブームは1980年頃からで、わが国では通産省(現在の経産省)のプロジェクトがスタートするなど世間でも大きな注目を浴びました。しかしいずれのブームも当時の情報処理技術では、人間の知能へのアプローチに限界があったため、やがて下火になりました。
2010年頃からの第3次ブームは、情報処理技術の進展やインターネットによるビッグデータの出現を背景に「ディープラーニング(深層学習)」に代表される機械学習や表現学習など、まさに「知能」の領域に迫るAIとして注目されています。前述の通り、現在のAI・ロボットは「知能がある」のではなく「知能があるように見える」だけなのですが、囲碁などのゲーム分野や医療、株取引などの限られた仕事においては人より機械が優れていると示せたことが従来のブームと異なっており、機械学習の限界もまだ見えていません。岡田教授はこの第3次ブームの先に、機械が人間に取って代わるのではなく、「人間の能力を拡張する技術」を想定しているのだそうです。そのためにも「人間の持つ知能の研究がますます大切になってくるでしょう」と講演を締めくくりました。

赤ちゃんの研究をはじめ、AI、認知科学、ロボットテクノロジーをキーワードに、多彩な分野の研究者が協力し合い人と「技術」が調和する社会の実現をめざしている玉川大学学術研究所AIBot研究センターでは、岡田教授をはじめとする多様な分野の研究者が、人の心や知能のメカニズムにアプローチしています。学問領域の垣根を越えたその研究活動の先に“人間と協働するAI・ロボット”の姿が見えてくるはずです。