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地球市民としての意識を育てるために。加盟校が活動報告を行うユネスコスクール神奈川県大会が玉川大学で開催されました。

2019.02.08

「人類の知的・精神的連帯の上に平和を築く」という国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)憲章の理念を、学校現場で実践することを目指すユネスコスクール。1953年の発足当時から日本の学校は加盟していますが、現在では1100校と、世界の加盟校の約1割にまで増えています。玉川大学教育学部が2008年に加盟。2009年度より文部科学省「日本/ユネスコパートナーシップ事業」の委託を受け、ユネスコスクール研修会を開催するなど、これまでにもさまざまな活動を行ってきました。
そして12月15日(土)にはこのパートナーシップ事業の一環として、神奈川県ユネスコスクール連絡協議会との共催による「第4回ユネスコスクール(ESD)神奈川県大会」を開催。「 — SDGsに基づく地球市民教育の現場に向けたユネスコスクールの地域連携 — 」と題して、基調講演やパネルディスカッションなど、盛りだくさんの内容で行われました。

総合司会を担当するのは教育学部の小林亮教授です。
「近年、神奈川県でもユネスコスクールに注目が集まり、加盟校も増えてきています。今回の神奈川県大会を、お互いの情報交換や今後の可能性の模索など、学び合う機会にできればと思います」という小林教授の挨拶の後、開会式として玉川大学教育学部長の近藤洋子教授と、神奈川県ASPnet連絡協議会会長の住田昌治先生による挨拶がありました。
「地球温暖化や自然災害などがグローバルな問題となっていますが、同時に身近な問題でもあり、こうした問題について未来を担う子供たちが考えることはとても大事なことだと思います。今回は神奈川県との共催という形で開催することができましたが、毎年文部科学省からのご支援もいただいており、皆様に心から感謝いたします(近藤先生)」。
「先週行われたユネスコスクール全国大会のテーマは『未来はワタシたちを待っている』でしたが、そのためには我々がどのような行動を起こし、どう変容するかが求められています。個々で頑張ると同時に、つながり合うことが大事です。この会をそんな場にしてもらえれば、未来を作る行動が生まれるのではないかと思います(住田先生)」。

その後に文部科学省文部科学戦略官でユネスコ国内委員会副事務総長の池原充洋氏とユネスコ・アジア文化センター国際教育交流部部長の進藤由美氏による祝辞があり、会場は大きな拍手に包まれました。

開会式の後に行われた基調講演では松浦晃一郎氏が登壇しました。松浦氏は1999年から2009年まで第8代ユネスコ事務局長として務められましたが、これはアジアからは初であり、現時点では唯一の選出でもあります。
「松浦先生は在籍中に世界遺産や無形遺産など多くの功績を残されましたが、大きな功績といえるのがユネスコスクールです。日本において21世紀初頭には20校程度の加盟校だったものがこれだけの成長を遂げたのは、先生のご尽力が大きいと思います」と、小林先生も賛辞を惜しみません。
そんな松浦氏の講演は、「ユネスコスクールにおける価値教育の課題と展望」と題して行われました。

松浦氏による基調講演

「平成の30年間は、日本とユネスコの関係が非常に緊密になった期間となりました。その代表ともいえるのが世界遺産です。その一方でユネスコでは教育と文化に注力しており、教育面での大きな成果がユネスコスクールといえます。1953年のユネスコスクール発足当初から日本の学校は加盟していますが、数が飛躍的に増えたのはこの30年です。さらに直近の10年では、日本が中心的な役割を担って「持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development = ESD)の10年」に取り組んできました。1980年代の「持続可能な開発(SD)」から2000年の「ミレニアム開発目標(MDGs)」へ、それが現在の「持続可能な開発目標(SDGs)」へとつながっています。SDGsが目標とする17のゴールの中で、日本は質の高い教育といった分野は評価が高く、2018年の達成実績でも156ヶ国中14位に位置しています。ただ、ジェンダーへの配慮など課題の残る分野も多く、これから考えていかなければなりません。こうした中で世界中の学校との交流から情報や体験を分かち合い、地球規模の問題に若者が対処できるような、新たな教育の開発や発展を目的としたユネスコスクールの意義も高まってきています。特に小学校など低学年から大学までの縦のつながりや、地域社会との横のつながりを強めることが、社会に出てからも高い意識を持ち、生涯実践を続けることに結びつくのではないでしょうか」。

松浦氏の基調講演に続いて、「ユネスコスクールにおけるESDと地球市民教育(GCED)の対話と統合」と題してパネルディスカッションが行われました。パネラーとして登壇したのはESDの実践者として池上敦子氏(成蹊学園サステナビリティ教育研究センター長)と住田昌治氏、そしてGCEDの実践者として松倉紗耶香氏(上尾市立東中学校研究主任)と辰野まどか氏(GiFT グローバル教育推進プロジェクト代表理事)が参加しました。

小林先生の司会で始まったパネルディスカッションでは、まずパネラーがそれぞれの学校や団体でどのような活動を行っているのかの紹介からスタート。活発な意見交換が行われました。途中からは松浦氏も参加し、「玉川大学から、ESDのモデルを作ってほしい」といった意見も聞かれました。

昼食を挟み、午後は神奈川県ユネスコスクール加盟校からの活動報告が行われ、担当教員や生徒が登壇しました。その後には参加者全員で、GiFTの辰野氏によるSDGsを題材にしたカードゲームに挑戦。経済や環境など、一人ひとりが何を優先するかで社会がどう変化していくのかを実体験できる内容で、楽しみながらも持続可能な社会を実現することの難しさを実感することができました。

その後に行われた閉会式では、公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター参与の渡辺一雄氏からの講評がありました。「教員だけでなく、生徒も登壇し自分たちの活動を報告したことは、とても素晴らしかったと思います。一過性ではない教育をESDは提起していますが、そのためには学校教育に限定されない学校外教育も重要になるのではないでしょうか。こうした目標を永遠に追い続けていくことで、より深い、意味のあるものが生まれるのではないでしょうか。そのことを、これから教師を目指す学生たちも意識し、自ら実践できるようになってもらいたいと思います」。

最後に閉会の言葉として、玉川大学教育学部副学部長の小原一仁教授が登壇しました。「国際会議の場などで未来に対して悲観的な予測が発表されることがありますが、こうした未来を変えるのはやはり教育なのではないでしょうか。今日は貴重な話を聞くことができ、改めて教育の重要性を感じました」。

閉会式の最後には神奈川県大会の宣言文が発表され、参加者からの大きな拍手で採択が決定。こうして一日にわたって行われた「第4回ユネスコスクール神奈川県大会」は幕を閉じました。それぞれの学校がどのような活動を行っているのかを知ったことは、今後の活動にも大きなプラスとなるのではないでしょうか。

神奈川県ユネスコスクール加盟各校による活動報告

横浜シュタイナー学園
多文化交流を行う土台としての「他を受け入れる基礎作り」を目指し、多言語劇や家づくりに挑戦。

横浜国立大学付属鎌倉中学校
鎌倉を題材に地域学習を行うと同時に、ビーチコーミングを通じて環境教育、環境問題に取り組む。

湘南学園中学校高等学校
日中韓青年文化フェスティバルで「人工知能と生活」に関する討議に参加。2019年より湘南学園ESD入試を開始。

東海大学教養学部
第4回ユネスコ・ユースセミナー2018を開催。

横浜市立永田台小学校
地元商店街との交流による地域学習の他、韓国の小学校を視察し、子供同士の交流のための紹介ビデオを作成。

神奈川県立有馬高等学校
東海大学のESDセミナーに参加、また近隣のインターナショナルスクールとの交流を開始。

横浜市立幸ケ谷小学校
すべての活動の中心にESDを据えたホールスクールアプローチを推進。ESD推進部を設置し、業務改善や職員室リニューアルを実施。

玉川大学教育学部
ESDを学校の教育現場で児童生徒に効果的に教えることのできる教員育成を目的に「ESD実践学習プログラムを実施。

横浜市立市ヶ尾中学校
生徒会役員がまずSDGsを学び、生徒会の男女比を修正。またSDGsを常に意識するよう校内にSDGsのカードを掲示。

横須賀市立横須賀総合高等学校
「住み続けられるまちづくりを」実現のため、防災ビデオを作成するなど、防災意識を高めるための活動を実施。

第4回ユネスコスクール神奈川県大会採択 ユネスコスクール神奈川宣言

  • ユネスコスクールの使命は、豊かな教育文化を通じて人々に地球市民としての意識を育て、持続可能な社会をつくることです。
  • ユネスコスクールのネットワークは、個性豊かな文化と文化が出会い、相互に影響しあいながら、より豊かな教育文化を築いていくためのプラットホームであることをここに確認します。
  • 豊かな教育文化は、子ども中心に築かれるのでなければなりません。
  • すべての子どもたちの心身の特性を含む個性、民族的・文化的・言語的な背景の多様性に応じて、その子どもたちにふさわしい教育文化を生み、育てられるよう、校種や機関を越えた連携を築いていくことが必要です。
  • 豊かな教育文化が生まれ育つためには、教職員とそのサポーターの教育活動が自主性、自立性に委ねられていることが重要です。
  • 教育活動の自主性の保障と、それに裏付けられた多様性への指向、そしてお互いの活動に敬意をもってつながっていく姿勢こそが、ユネスコスクール活動のもっとも重要な持続可能性の要件です。そのように足下から考え、実践していくことで、私たちはSDGsを目標達成に向けて力強く推進していきます。

2018年(平成30年)12月15日
神奈川県ユネスコスクール連絡協議会加盟校一同

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