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玉尾皓平 理化学研究所 基幹研究所長による講演会を開催

2012.12.03

11月28日(水)中学年校舎講堂で、理化学研究所 基幹研究所長および日本化学会 会長を務められている玉尾 皓平 博士による講演会が行われました。中間試験が終了後の午後2時から、主に10-12年(高校1-3年)理系の生徒約150人が熱心に聴講。講演では、未来の科学者・研究者となる世代の高校生に向けて、科学技術や化学にまつわる様々なトピックでお話がありました。

講演は、理化学研究所の紹介から始まりました。財団法人理化学研究所は渋沢 栄一 氏を総代として1917年に設立。今日の独立行政法人に至るまでの歴史について説明がありました。理研での研究成果は、スーパーコンピュータ「京」はもちろんのこと、いろいろな食品開発等にも応用されていることが紹介されました。中には生徒たちもよく知っている商品もあったようです。

次に「我が国の科学技術の底力」の話題になりました。冒頭で玉尾先生は「今の高校生たちは科学技術の恩恵を満喫しています」と述べ、「20世紀後半から科学技術はたいへんな進歩を遂げました。ナイロン、冷蔵庫、テレビ、パソコン、携帯電話といったものは、すべてその研究の成果の上にできあがっているのです。」と続けました。

有機化学者である玉尾先生の今回の講演は、「化学」、とりわけ「元素」に力点が置かれました。フィリップら(村上陽一郎・公子訳)の『パワーズ オブ テン(Powers of Ten)』(1983年、日経サイエンス刊)を引用しながら、人の「皮膚」を拡大し続けていき、血液、赤血球、リンパ球、DNAらせん、分子、炭素原子、炭素といった順で図示されました。先生は「私たちの身体も元素でできている」と述べました。

これまでの研究成果として、化学の学界で有名な「玉尾酸化」の説明がありました。これは先生が発見した、炭素とケイ素結合の過酸化水素酸化の反応です。有機ケイ素化合物へフッ化物イオンと塩基の共存下に過酸化水素を作用させてアルコールへと変換されます。また、「熊田・玉尾・コリューカップリング」にも触れられ、有機化学におけるクロスカップリング反応の一種で、脂肪族あるいは芳香族グリニャール試薬と、芳香族あるいはビニルハロゲン化物とを、ニッケルまたはパラジウム触媒の作用により縮合させて炭素と炭素の結合を作る合成反応について、スライドを用いて解説がありました。

講演が半ばに差し掛かり、生徒たち一人ひとりに配付された「一家に1枚周期表」について紹介がありました。これは、次世代を担う子どもたちが、その周期表をきっかけに化学に興味を持ち、特に家庭で日常的に元素に関心を持ってほしい。そして我が国の科学技術の強さを表現したい。という思いから企画され、株式会社化学同人と文部科学省が共同制作したものです。もちろん、最近理研が合成に成功した113番目の元素も掲載されています。この周期表には、元素記号だけではなく、それらの身近な2つの使用例が美しい図と写真で載っています。その例には日本人科学者の研究成果も散りばめられています。例えば、チタンの光触媒、ガリウムの青色発光ダイオード、ネオジムの強力磁石といったものがありますが、これらはすべて日本の研究所・大学・企業等の研究機関で発見されています。先生からは、「科学を文化にするためには、我が国の研究者の恩恵を、小さい時から日常の家庭生活で実感する環境をつくる必要があります。そのために、この『周期表』をぜひ家でも活用してください。」と、メッセージが送られました。

聴講していた生徒からは、「私たちが普段使っている身近なモノは、一人の人間の発想から始まっていて、それが私たちのセカイを広げているのだと思った。」「まず自分たちが科学好きにならなければ、子供たちも好きになっていかないことが分かりました。将来、自分の子供に科学はおもしろいということを教えていきたいです。」「今勉強していることが、未来の生活をよくしていくことにつながると考えて頑張りたいです。」といった感想が寄せられました。

また講演終了後も生徒が玉尾先生の周りを囲み、先生は一人ひとりの質問に丁寧に答えてくださいました。最後まで残っていた生徒との別れ際に「君は医学部を目指しているんだね。ぜひ、がんばって!」とお声を掛けいただき、先生のやさしいお人柄はこういったところからも感じることができました。

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