理化学研究所 梅原崇史 博士による講演会を開催

2014.03.06

3月4日(火)、理化学研究所 ライフサイエンス技術基盤研究センター エピジェネティクス制御研究ユニット ユニットリーダー 梅原崇史 博士による講演会を開催しました。期末試験を終えた9-12年生(中学3年生~高校3年生)の希望者65人が、大学8号館の教室に集まり、熱心に聴講しました。講演は「高校生の未来のために ― 一研究者の視点から ―」と題して、最先端のライフサイエンス研究の紹介と研究者という仕事について講演いただきました。

講演は、理化学研究所の紹介から始まりました。理化学研究所は、日本で唯一の自然科学の総合研究所として、物理学、工学、化学、生物学、医科学などに及ぶ広い分野で研究を進めています。ノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹や朝永振一郎、物理学の寺田寅彦、そしてビタミンB1を発見した鈴木梅太郎といった科学者を輩出しています。現在では外国人研究者を含めて約3,000人が日夜研究を続けています。また、同研究所が研究開発した技術はいろいろな製品にも活用されていることも紹介され、中には私たちがよく目にする食料や飲料品もありました。

次に、梅原博士が現在研究に取り組んでいる「エピジェネティクス」(後成遺伝学)についてお話がありました。細胞を「一軒の家」に例えると、それを構成する要素として、細胞核は「書斎」、ゲノムは「本棚の本全体」、遺伝子は「一冊の本」、遺伝情報は「書かれている文字列」、そしてエピジェネティクスの情報は「本に貼るふせん」と見ることができます。そのエピジェネティクスの実体について、ふせん(エピジェネティクスの情報)を「つける酵素」「読む因子」「取る酵素」についてふれながら説明がありました。身近な例で言えば、三毛猫の毛の色の出方は、エピジェネティクスで制御された結果で決まるとのことです。

講演の後半では、研究者としてのこれまでの経験を紹介いただきました。ご自身の幼いころの体験、中学・高校時代の関心、大学・大学院での専門や研究室の選び方や、博士号を授与されてから研究所の研究者となるまでの様子を、生徒たちにわかりやすく語っていただきました。博士は「自分でおもしろいと思ったことを勉強するとよいですね」「私の場合は、その時々の興味にしたがって研究手法を変えてきましたが、結局、昔夢見ていた薬づくりに近い分野に戻ってきました」と述べました。また、研究者に必要な力として、理系の進路を選択するのであれば当然必要な「数学」「理科」に加えて、研究者として情報収集・発信をするための道具としての「英語」、論理形成に重要な「国語」、その他、もちろん「社会」の勉強も必要だというお話がありました。この他にも中学・高校の「勉強」と、大学以降で行う「研究」の違いについてもお話があり、研究では「自分で問題を考え、それを最初に解いて発表する。その際、正解があるかどうかもわからない場合もある」と語りました。

聴講していた生徒からは多くの質問が寄せられました。「研究所では実験テーマは自分で決めるのですか、それとも他のリーダーのような人が決めるのですか」という生徒からの問いに対して、「そこは重要なところですね。PI(主任研究員)になれば自分でテーマを決めることができます。研究員は、自分の関心ややりたいことをPIと相談しながら、実験テーマを進めます。最近は人材育成面も大切にされています。自分と研究室との相性も重要です」とアドバイスしました。また「エピジェネティクスには酵素以外に、気温や周りの環境という面も含まれているのですか」という質問については、「それは非常に良い質問ですね。これからしっかりと検証しなければなりませんが、環境からも影響を受けたり、その影響を受けたことが情報として子や孫の世代にまで伝わったりすることが示されつつあります。しかしこれは学校の試験で答えるとたぶん×(バツ)になります。ただ、研究の最前線ではこうしたことをみんなで議論しながら研究が進んでいると理解してください」とお答えいただきました。さらに、講演終了後も梅原博士は、生徒一人ひとりの質問に丁寧に答えてくださいました。聴講した生徒にとっては、今後の自分の進路を考えていく上で、貴重で重要な機会となりました。