LEDによる野菜生産技術を学ぶため、コートジボワールから研修生が来日

2014.10.22

アフリカ諸国の中でも経済成長が著しく、貿易面で日本との関係も深い国、コートジボワール。今年の6月から、このコートジボワールの研修生が来日し、玉川大学で農業に関する研究を行っています。
玉川大学では以前から、LED(発光ダイオード)を使った多段式自動水耕栽培システムを使って野菜を生産する研究を進めてきました。屋内のクリーンルームを使うことで安定的な生産が可能。しかも洗わずにそのまま食べられるほど、衛生面も万全です。この研究を推し進めているのが、農学部の渡邊博之教授。我が国の食料自給率の低さに危機感を抱いた渡邊教授は、20年以上前からこの研究を行ってきました。

この水耕栽培に興味を持ったのが、コートジボワールのANADER(Agence Nationale d’Appui au Développement Rural)の関係者たちでした。ANADERはコートジボワールの農業省の関連組織で、農業技術についての研究開発を行っています。彼らは2013(平成25)年に横浜で行われたアフリカ開発会議で来日した際に、玉川大学を訪れてLED植物栽培研究設備を見学。そしてこの年の年末には小原芳明学長と渡邊教授がコートジボワールに招かれ、農業大臣を前にスピーチを行う機会を得ました。玉川へ研修生を送るという話が、この場でまとまり、2014(平成26)年の6月、研修生としてニャン・コウアディオ・エリアンさんが来日しました。

 赤・青の光源で成長の違いを調べる 

ニャンさんはANADERの技術員で、コートジボワール国内で農業技術の指導などを行っていました。日本には10年前にも研修に来たことがあるそうです。今回の研修は1年間の予定で、LEDによる水耕栽培のノウハウを身につけることが目的。最終的にはコートジボワールで栽培できるような野菜のLED水耕栽培方法についても学んでいきたいとのことでした。 「この研究に取り組んでみて難しいこともありますが、新しいことを学んでいるので難しいのも当然です。だから研究が大変だとは思わないですね」と、非常に前向きなニャンさん。自身の研究だけでなく、周りの大学院生の研究内容についても興味があるそうです。キャッサバ芋やトウモロコシなどが主食で、レタスやトマトといった野菜も食べる習慣があるコートジボワールですが、栽培時に使用する水の衛生面などが問題となっており、このLED水耕栽培技術が解決の一助になるのではと期待が集まっています。

LEDを光源とした野菜の生産技術を海外に広めていくことについては、渡邊教授も以前から考えていたそうです。「ただ、当初は日本と自然環境が近いアジア諸国からスタートしたいと思っていました。けれどもコートジボワールとの交流を通して、アジアを飛び越してアフリカで展開する可能性が出てきたのです」。世界で最も過酷な自然環境の一つであるアフリカでこの技術が定着すれば、どこでも通用するはず。今、そんな期待も生まれています。

「今回はコートジボワールで我々の農業技術を広めるチャンスを得ました。けれども農業は工業生産のように、機械を設置すれば製品ができるわけではありません。そこには作物栽培をしっかりと管理できるニャンさんのような存在が不可欠なのです」と渡邊教授。ニャンさんが懸け橋となって、玉川大学の新しい農業技術がコートジボワールの暮らしを変える日が来るのかもしれません。 渡邊教授がコートジボワールへ行った際に、10年前の東南アジアのような、これから経済が発展していく高揚感のようなものを感じたそうです。農業インフラがまだ整っていない分、最新の農業技術が一気に浸透する可能性もありそうです。今後アジアやアフリカの人口は爆発的に増加するといわれており、食糧問題は今を生きる私たち共通の、重要なテーマです。このLED野菜生産技術が果たす役割も、非常に大きいに違いありません。玉川からコートジボワールへ、そして世界へ。玉川大学の挑戦は、まだ始まったばかりです。

* LEDによる野菜生産技術の研究を行っている「Future Sci Tech Lab(植物工場・宇宙農場ラボ)」をご紹介します。