K-12教職員の授業力向上を目指し、授業公開・授業研究会を実施しました

2015.02.09

玉川学園では、教育活動のさらなる発展のために「質保証」をキーワードにした『Tamagawa Vision 2020』を構築し、新たな玉川ブランドの確立と社会の要請に応える教育を推進しています。2014年度は『Tamagawa Vision 2020,Action Plan 2014』の「教職員の資質・能力の向上」を目指した「K-12学内研修会(授業研究会)」を行いました。

教員の「授業力」磨きを目指した学内研修会

昨年の秋「K-12学内研修会(授業研究会)」が行われ、本学園の幼稚部と低学年・中学年・高学年のK-12教職員が各ディビジョンの公開授業を参観しました。授業公開終了後に教科会を開いて、授業の振り返りや検証を行い、教職員の授業力向上を目指す試みとしています。学内研修会の会場は本学園の幼稚部から高学年までの園舎や校舎、サイテックセンターや記念体育館等。多くの先生たちが各授業の参観ポイント資料を手にし、1日かけて各ディビジョンの授業を参観しました。

今回の研修会を振り返り、K-12教務委員長である酒井健司中学年教育部長をはじめ、各ディビジョンの先生方から話を聞きました。

開催のねらいについて、酒井健司中学年教育部長は次のように説明しています。

酒井健司中学年教育部長

玉川学園が小中高一貫教育の「K-12一貫教育」をスタートさせたのは2006年。以来、教科内では横断的な研究会、あるいは各ディビジョンでの研究会を行ってきましたが、幼稚部から高学年までの教職員が一斉に授業参観し、教科会を行うのは初めての試みです。開催理由の第一は、子供たちの学力向上の鍵を握る、教員の「授業力」をブラッシュアップすることにあります。各教員は工夫を凝らし授業設計をしていますが、やはり客観的に授業を参観して、検証することが必要だと考えたからです。さらには、これまでの日本の授業形態の多くは「講義型」ですが、「自分の考えを伝える力」を養う「アクティブ・ラーニング」や「双方向授業」の新しい授業形態の導入が増え、若い先生方が大学の教育学部や教職大学院で学んだ新しいメソッドによる授業を、この機会に吸収することも目的の一つにあります。
2014年度から7年生(中学1年生)以上の生徒に「授業力アンケート」を取り、授業が理解しやすいかなど多項目にわたって評価しました。その結果を各教員にフィードバックするなど、授業力アップを目指した多角的な取り組みを実践しています。また、本学園は幼稚部と小中高のK-12一貫教育を実践しており、適切な学び直しを繰り返すスパイラル式の指導により学力の向上を図っていますが、そのためにもディビジョンや教科を越えて、教員が情報を共有し改善に役立てる契機にしたいと考えています。

遊びながら難しい思考方法にチャレンジする保育活動

公開授業を担当した各ディビジョンの教員に話を聞きました。幼稚部年長組担当の大池絢子教諭は次のように話しています。

大池絢子教諭

玉川学園は幼稚部から大学までワンキャンパスで学ぶことができますが、幼稚部の活動を他のディビジョンの教職員が見学する機会は少ないと思います。幼稚部では「遊びから学ぶ」ことを重視しており、低学年から高学年までの教職員に参観してもらい、理解しやすい「学ぶ」姿勢につながる保育活動として、「年長児チャレンジプログラム」の活動の一つをご紹介しました。これは、年長組後期から保育時間を延長し、言語、数量、科学、運動などさまざまな領域の活動を特別プログラムとして行ってきたものです。今回は「宝箱の中身をわけてみよう」と題して、仲間当てクイズや、2,3人のグループで宝箱の中身(切手やリボン、型紙、マカロニなど)を分類し、どのような基準や法則で分類したのかを説明したり、予想したりするものです。「分類」といっても小学校の前倒しの勉強ではなく、頭の中のたくさんの力を総動員して働かせて考えることを、つねに意識させることを心がけています。

参観の感想で「楽しそうに遊んでいるようでいて、『分類』という難しい思考方法にチャレンジし、しかも幼児が45分間も集中していることに驚いた」といった声が多く寄せられました。固定観念に縛られているのは大人で、思いもよらない分類の方法、あるいは集中力に各先生方も感心しています。それだけ子供たちには無限大の可能性があることを、参観した皆さんに理解してもらえたと思います。

他のディビジョンの参観の中で、1年生(小学1年生)の算数の授業が印象的でした。幼稚部の学びが活かされている授業の方法で、学びの原点の時期を大切に育み、積み重ねていくことの重要性を改めて感じました。保育者として、さらなる方法の工夫を模索したいと考えています。

学齢に応じて基本的な言語技術を習得する

低学年の2年生国語を担当した小川浩輝教諭は次のように話します。

小川浩輝教諭

2年生国語のカリキュラムに「主語」と「述語」の仕組みを確認し、自分の考えを順序立てて伝える言語技術の基本を習得する内容があります。そこで、今回の公開授業では「一枚の絵で考える」という単元で、1枚の絵を細かく観察して一文を作り、自分の考えを互いに伝え合いました。電子黒板を活用してスキー場の絵を提示し観察したことと、そう考えた理由を主語と述語を使って発表しました。
授業で大事にしているのは、45分間の中で教員の発する言葉数よりも、子供たちの言葉数を多くすることです。その時間に約3分の2程度の時間を割くようにしています。学びの場での発言が日常生活にも大きく影響すると考え、授業では発言を促しつつ、主語と述語を使って順序立てて発言させることをとくに意識しています。

たとえば、低学年の子供との会話でよくあるのが、トイレへ行きたい時に、「先生、トイレ」と単語を連ねただけで話します。そんな時は、「先生はトイレではありません。『先生、僕(私)はトイレへ行きたいです』と相手に伝わるように話しましょう」と注意。保護者会や個人面談でも日常生活での発言を意識してもらうようにお伝えしています。家庭でも子供の発言に対して、大人は想像できたことを「こうでしょ」と先回りして簡単に答えを言ってしまいがちです。子供がきちんと伝えようと考えるチャンスを奪わないよう気をつけたいと思うのです。
授業後の振り返りでは、中学年の先生から「中学年の生徒でも自分の考えに対して理由を述べずに、単語だけで会話をしていることがあり、低学年から指導してくれるのはありがたい」と感想をもらいましたが、どのディビジョンでも基本的な言語技術を意識して使えるようにしなければならないと思います。他のディビジョンを参観しましたが、幼稚部から高学年までの15年間の積み重ねは大事だと改めて考えました。

授業を効果的に進める機器類の活用を提案

中学年からは、英語科の島田美奈教諭が行った7年生(中学1年生)の授業について、次のように解説しました。

島田美奈教諭

書画カメラとパソコンに接続して大型モニターへ映し出せる機器類を整備していただいたので、活用した授業としてご提案することを念頭におきました。現在進行形を勉強していますが、授業開始後のウォーミングアップとして大型モニターに人物がいろいろな動作をしている写真を映し出し、何をしているのか当てるゲームなどを行って、積極的に発話することから始めています。リスニングで正しい発音を意識させたり、授業のまとめに書くことで頭の中を整理するように授業を構成しています。
とくに、大型モニターの使用は、教科書に視線を落としてボソボソとしゃべるよりも、目線が上がり発話も明瞭になり授業が活発化しました。「英語科には効果的な使い方だ。」と、授業参観の感想がたくさん寄せられました。自分1人で授業設計を考えていると、「これでよい」と思い込んでしまいがちで、軌道修正してくれる人はいません。

今回の学内研修会によって各ディビジョンの英語科の先生、あるいは他教科の先生方からご意見をいただける機会となったことは、収穫だと思っています。今後の自分自身の課題として、バリエーションを増やし、子供たちが飽きずに、英語を嫌いにならずに興味を持続できるようにしていきたいと考えています。

スーパーサイエンスハイスクール指定校としての授業を展開

高学年からは、11年生(高校2年生)の物理の授業を担当した中村純教諭が次のように話しました。

中村純教諭

玉川学園は、2008年度より文部科学省の「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」に指定され、将来の国際的な科学技術系人材を育成することを目指して理数教育に重点を置いた研究開発の拠点として、カリキュラムの開発等を行っています。指定期間は5年間で、本学園として2期目の指定を2013年に受け、今期の研究開発課題を「国際バカロレア教育を参考にした創造力と批判的思考力を育成する学び」としました。この物理の授業は、SSHの活動と結び付いている授業で、生活に密接した体験や基礎概念から自分の知識を組み立てていくことにより、将来的に活用できる知識が身に付くと考えています。

OPPAシート

その実践のために、活用しているのが、「ワン・ページ・ポート・フォリオ(OPPA)」。A3用紙1枚に1単元7~9時間での学びを時間ごとに記入していくものです。今自分は何を学んでいるか、もう1人の自分が客観的に自分を見る能力である「メタ認知能力」を身に付けることが、学力向上に欠かせないと考え、OPPAを活用して学びの前と後で自分がどのように変化したかを書き出し、物理で学んだことを外側から確認し、知識として身に付けたいと考えています。
今回の授業参観では、子供たちの発達の過程を理解していても、実際に見て分かることが多い。子供たちの集中力を切らさないように、学齢ごとに工夫が見られました。

各ディビジョンの先生方の工夫を共有することが、この学内研修会において私が目指すものであり、課題だと考えました。私自身は授業で書画カメラとプロジェクター、スクリーンを使用しましたが、室内を暗くしないと見えないこともあり、参観の感想で「生徒への視線を増やした方がよい」と意見があり、生徒一人ひとりに対する気配りができていなかったと反省し、改善に努めたいと考えています。

教員の「授業力」をいま一度見直し、改善へつなぐ

幼稚部から高学年まで一斉に行った授業公開と教科会は、授業公開担当教員、参観した教員ともにたいへんに有意義な1日とすることができました。この成果を今後どのように活かすのか、酒井中学年教育部長は次のようにまとめました。

私たち教員は、学校の中で何ができるかを考えがちですが、「教育」は大学で終わりではありません。「生涯教育」という言葉の通り、社会に出てからコミュニケーション能力、問題解決能力、情報処理能力、判断力などの力を要求されることが大きいのです。12年生までの一貫した「全人教育」を実践する本学園で、私たち教員によってそれらの能力を身に付けさせるため教育の責任は重く、いま一度「授業力」を考え直したいと考えています。そのためには、高等教育から社会につなげる力には何が必要かを、もう一歩踏み込んで分析して、それぞれのディビジョンで必要な基礎力を明確にしなければなりません。各ディビジョン、各教科で複合的に検討した結果をフィードバックし、来年度へつながる改善を続けたいと考えています。

  • 玉川学園の教育システムについて
    玉川学園では、Kindergarten(幼稚部)から12年生(高校3年生)までの、6-3-3の学校システムに縛られない学年進行型の幼小中高一貫教育を実施しています。
    共通の学力観のもと、幼稚園から12年生までの発達段階を考慮し、系統性をもたせながら学習内容とその指導のあり方、生活の仕方を設定しています。現在、低学年校舎には1-4年生が、中学年校舎には5-8年生(小学5年生から中学2年生)が、高学年校舎には9-12年生(中学3年生から高校3年生)が生活しています。これらの校舎を隣接させることで生徒間の交流が活発になるとともに、学校種間の教員の連携も活性化しています。異学年交流の活動は、下級生は先輩である上級生にあこがれて成長し、上級生にとっては下級生との生活の中でリーダーシップをとり自己肯定感や自尊感情を育む大切な機会となっています。
    また、昨今話題になっている、小1プロブレム、中1ギャップ、高1クライシスといった学校間のギャップの解消にもつながっています。