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「第1回SGH 玉川学園模擬国連会議」が開催されました

2015.03.24

模擬国連は、1923年にアメリカのハーバード大学にて開催された「模擬国際連盟」を原点に、国際政治の仕組みへの理解や国際問題の解決策を考える過程を体験できる教育プログラムです。現在、世界中の大学、高校の授業や課外活動として行われています。「第1回SGH 玉川学園模擬国連会議」は、全国各地のSGH指定校をはじめ14校約140名の生徒が参加する大規模な会議となりました。その様子をご紹介します。

玉川学園がホスト校として開催する模擬国連会議

2月8日(日曜日)、「第1回SGH玉川学園模擬国連会議(Tamagawa Model United Nations:TMUN)」が開催されました。この会議は、文部科学省が平成26年度からスタートさせた「スーパーグローバルハイスクール(通称SGH)」に、玉川学園中学部高等部が指定されたことからはじまります。SGHとは、将来国際的に活躍できるグローバルリーダーの育成を目的に、国内の高等学校や中高一貫教育校の中から56校を指定。各校は生徒の社会課題に対する関心と深い教養、コミュニケーション能力、問題解決力などの国際的素養を育成するために、先駆的な教育課程の研究開発が求められます。玉川学園高等部では、以前から取り組んでいた「模擬国連」を研究開発の一つのテーマとして進めてきました。
「模擬国連」とは、参加者が各国の代表として与えられた議題について国内情勢や外交関係を考えながら日本語や英語で討論を重ねます。会議では国連総会だけではなく、国連安全保障理事会・国際連合経済社会理事会等も行われ、大学生の会議では国連から離れた国際会議をシミュレートすることもあります。交渉力や異なる文化・価値観を許容するコミュニケーション力、英語力の向上を目的にしたもので、玉川学園高等部ではSGH指定以前から国際バカロレア(IB)クラスの有志による「模擬国連」がラウンドスクエアでも行われています。教育プログラムとしての成果が著しいことから、平成25年度から一般クラスでも選択授業になるなど学内での広がりをみせ、いっそう活発なプログラムとして多くの生徒が参加しています。
また、玉川学園高等部では学内だけでなく他校を招いた模擬国連を開催するなど、他校との交流も行われています。このような土壌のある玉川学園高等部がSGH指定校によびかけて、「第1回SGH TMUN」が開催されることになりました。


※国連等で行われる国際会議をシミュレートする会議

生徒が運営する模擬国連会議に玉川学園中学部高等部の生徒がチャレンジ

当日は、玉川学園講堂に全国のSGH指定校を中心に各地から14校、約140名の生徒が集まり、「第1回SGH TMUN」が始まりました。担当国1カ国につき2~3名の大使で行う会議ですが、参加人数がたいへん多いために会場を二つ(A会場、B会場)に分けての開催となりました。議題は「核軍縮・不拡散・非核兵器地帯」で、同じ議題を二つの会場で同時に行います。参加校と担当国は以下の通りです(50音順)。

各国の立場や提言を知る「交渉ペーパー」
  • 愛媛県立松山東高等学校 A:オーストラリア・ケニア、B:オーストラリア
  • 開成中学高等学校 A:イギリス・グルジア・ドイツ・北朝鮮・イラン、B:イギリス・グルジア・ドイツ・北朝鮮・イラン・南アフリカ
  • 公文国際学園 A:スイス、B:スイス・インドネシア
  • ぐんま国際アカデミー中高等部 A:カナダ、B:カナダ、韓国
  • 佼成学園女子中学高等学校 A:韓国
  • 国際基督教大学高等学校 A:ニュージーランド、B:Aと同じ
  • 渋谷教育学園渋谷中学高等学校 A:ブラジル・フィジー・ポーランド、B:Aと同じ
  • 頌栄女子学院 A:フランス・モンゴル・リビア・トルコ・カザフスタン、B:Aと同じ
  • 筑波大学付属高等学校 A:アメリカ、B:Aと同じ
  • 西大和学園中学高等学校 A:インドネシア
  • 広島女子学院中学高等学校 A:日本・ロシア・南アフリカ、B:日本、ロシア
  • 立教女学院中学校高等学校 A:スウェーデン・パキスタン、B:Aと同じ
  • 立命館高等学校 A:ノルウェー・ナイジェリア、B:Aと同じ
  • リンデンホールスクール中高学部 B:ケニア
  • 玉川学園中学部高等部 A:中国・インド・イスラエル、B:Aと同じ
腕章が目印、運営スタッフの紹介

二つの会場では、ホスト校である玉川学園中学部高等部の生徒が、議長・会議監督・書記などのフロントをはじめ、会議を裏から支えるスタッフ役などを担っています。玉川学園が模擬国連に取り組むきっかけを作ったのは、「日本模擬国連日吉研究会」。これまでさまざまなアドバイスを受け、玉川学園で展開する模擬国連の基礎を築きました。

担当国の大使として白熱した議論や交渉が繰り広げられた二つの会場

開会式に引き続き、2会場で各議長がギャベル(木槌)を叩いて開会宣言をし、会議がスタートしました。各校は事前に割り当てられた担当国の大使として、周到な準備を行い会議に挑んでいます。会議では各国が公式発言(スピーチ)で自国の意見を表明し、国家間で議論したり、個別に交渉したりすることを繰り返し、草案の作成から採決までを目指します。使用言語は、各国のスピーチや公の発言は英語、個別に行う議論や交渉である「アンモデレートコーカス」は日本語で行われました。
議題の「核軍縮・不拡散・非核兵器地帯」と参加国の顔ぶれをみると、現在の国際情勢を彷彿させるもので、活発な議論が予想されます。2会場ともスピーチやアンモデレートコーカスでは、担当国になりきった大使の議論や交渉で白熱。意見の方向性の近い国々がグループを形成し、大使らの交渉の輪が二重三重になるなど、活発な議論で会場は熱気に包まれていました。

模擬国連のアンモデレートコーカスは、実際の国連での会議外の交渉活動にあたるため、議論外の交渉場所が、国連内のカフェや食堂であったり、国連外のレストランであることから、その雰囲気づくりの小道具としてお菓子を出します。この会議でも全国各地からの参加校がご当地のお菓子を持ち寄り、真剣な議論のなかにも交流を深める和やかな風景も見られました。
会議中には、玉川学園の生徒による広報スタッフが「模擬国連新聞」を発行。会議の進行状況や大使へのインタビューを提供するなど、会議を盛り上げる役割を担っていました。この新聞は会議中に2回発行され、会議の運営だけでなく、タイムリーな話題を活字として提供する報道の姿勢もみられました。また、サポートするスタッフがマイクやメモを手に走るなど、会議のスムーズな進行を目指す玉川学園中学部高等部の生徒の頑張りに、頼もしさが感じられました。

ランチをはさんで午後の会議が始まると、模擬国連の会議はいよいよ大詰めを迎え、同じ立場をとる国が譲歩や妥協などを繰り返し、草案を提案した国と賛同する国が協力しあって、賛同国の意見を盛り込んだ草案づくりが進められます。最後に、最終草案を提出した国がスピーチし各国の投票となり、今回の会議で採択する決議案を決定しました。

結果、採択された決議案は、A会場ではアメリカ(筑波大学付属高等学校)、B会場ではブラジル(渋谷教育学園渋谷中学高等学校)と中国(玉川学園高等部)でした。なかにはユニークな草案もありました。核兵器不拡散条約(NPT)で核保有国とするアメリカ・ロシア・イギリス・フランス・中国の5か国(P5)に、一時的に核保有疑惑国のインド・パキスタン・北朝鮮を加えたP8として国際的に核保有を認めた上で、徐々に核兵器を削減しようとするもので、多くの賛同国を集め異彩を放っていたことも、模擬国連のおもしろさを表していました。

表彰式の様子

再び議長がギャンベルを叩いて閉会を宣言し、2会場での模擬国連が終了しました。閉会式では、会議の盛り上がりや草案づくりなどに多大な貢献をした国に各賞が贈られました。会場を埋める生徒から机を叩くドラムロールに合わせて発表。A会場からは、優秀大使にポーランド(渋谷教育学園渋谷中学高等学校)とブラジル(渋谷教育学園渋谷中学高等学校)、最優秀大使はインドネシア(西大和学園中学高等学校)が選ばれました。B会場からは、優秀大使にケニア(リンデンホールスクール中高学部)とブラジル(渋谷教育学園渋谷中学高等学校)、最優秀大使は中国(玉川学園中学部高等部)が選ばれました。また、特別賞として急きょ議長賞がもうけられ、A会場ではインド(玉川学園中学部高等部)、B会場ではスイス(公文国際学園)が選ばれました。会議を締めるのは、参加者全員での記念撮影。達成感でいっぱいの弾けるような笑顔が印象的でした。そして、「来年もまた玉川学園で会いましょう」と互いにエールを交わして、「第1回SGH TMUN」は幕を閉じました。

大会議を成功に導いたフロントスタッフの声をご紹介

会議終了後、フロントを務めた生徒や、最優秀大使賞に選ばれた生徒、日本模擬国連日吉研究会に所属していた玉川学園卒業生に話を聞きましたので、ご紹介します。

A会場会議監督――本杉さん(11年生)

ホスト校として「模擬国連運営委員会」を立ち上げ、委員長を務めました。会議運営は生徒も指導してくださる先生も初めてのことで、約1年前から準備を始めましたが、慣れないことばかりで時間も労力もかかり、戸惑いの方が多かったように思います。それでも、無事会議が終了した時の達成感は今まで感じたことのないくらい大きく、思わず涙があふれてしまいました。他校の方から、「高校生が運営するこんな大きな大会は見たことない」「来年も絶対に参加するよ」と声をかけられ、心の底から「チャレンジしてよかった」と思いました。模擬国連(MUN)に携わることは、人として大きく成長できるすばらしい機会です。玉川の新しい伝統になるよう、後輩がつないでくれることを強く願っています。

B会場会議監督――清水さん(11年生)

参加生徒や引率の先生方やサポートの方々を含めると、200人近い大会議になりました。このような大会議で初めて会議監督を任され、MUN独特のルールを覚えるのがひと苦労で、何度も何度も練習して覚えました。会議の流れをまとめた解説書(TMUN Procedure)や議題についての概説書(Background Guide)では執筆を担当し、まとめるのが大変でしたが、自身のリサーチ能力を高める機会になったと思っています。また、会議の進行においては、場が盛り上がるようにアドリブを入れて進行し、白熱した議論に発展させることができました。責任の重い立場でしたが、人を束ねる統率力、英語力も発揮することができたのはよかったと思っています。学内でのMUNとは異なり、他校生の玉川生と異なる視点、論点にたくさんふれることができ、大きな収穫になりました。

A会場議長――須田さん(11年生)

議長に決まった当初は、模擬国連で使われる単語も分からないところからスタートしました。議長には会議を公平に、しかもスムーズに進行させる役割があり、議長が決断に迷って会議を停滞させることは許されません。事前の練習でも先生から「あなたが会議を止めているのよ」とたびたび指摘され、決断力、それも瞬時に決める即決力が求められていると痛感しました。本番では、もう1人の議長に相談する暇もなく、次々と実践していくうちに、次第に迷いが消えていったことが強く印象に残っています。厳しい指導の賜物で、よい経験になりました。また、他校を招いての会議で、異なる考え方に刺激を受けました。たとえば日本に住んでいると日本の見方でしか各国の情勢を判断していませんが、他の国からすると正しくないこともあるかもしれません。他者の価値観に触れ理解することの大切さに気付く、貴重な機会でした。

A会場議長――ブラックさん(11年生)

IBクラスでのMUNで議長を務めたことはありますが、他校を交えての会議では初めてのことでした。他校から集まった大人数に混乱することもありましたが、時間が経つにつれ議題をベースに意見交換が盛んになり、会議がスムーズに進行できたことは、とてもよかったと思っています。議長の公平な立場で会議を客観的に見ることで、意見が多勢に流されやすいことが分かりました。次回、大使として参加することができたら、担当国の立場をしっかりと把握した上での議論や交渉を心がけていきたいです。自分にとっても大きな収穫のある会議だったと思います。

B会場議長――内山さん(9年生)

これまでのMUNでは大使として参加していましたが、会議全体を把握したいと思い、議長に立候補しました。他校にはMUNに熟練した方も多く、かなり緊張しました。前半は会議を仕切るのが難しかったけれど、会議が進むうちに次第に慣れ、無事閉会できて本当によかったと思います。議長は素早い判断が求められ、間違えると信用を失ってしまいます。時には自分のミスでなくても、議長として潔く謝罪することの大切さに気づかされました。この経験を通して、会議は本来どのような形で進行するのがよいのかを考えられるようになったと思います。

B会場最優秀大使賞――西澤さん(11年生)、佐藤さん(10年生)

多くの賛同国を確保できたことは、私たちの草案を信頼してくれていたことだとうれしく思いました。P8をつくるということがとてもユニークだったので、そのユニークさに賛同してくれたのではないかと思います。他校からたくさんの方が集まっての会議に参加することができて、とても楽しい時間でした。そのうえ、最優秀大使賞をいただき思い出に残る会議となりました。

玉川学園卒業生――草薙さん

大きな会議を生徒の手で作り上げたことは、すばらしいと感激しています。MUNの熟練度が高い学校もそうでない学校も混在し、スタート時はなかなか話が弾まないようでしたが、会議が進むにつれて、交流が深まる様子が見て取れました。人見知りだった私が大使として見知らぬ人たちの前でスピーチし、個別交渉していた当時のことを思い出しました。会議を通じて、「人見知り」の壁を自分から崩すことができたのです。MUNは国際情勢の知識が増えるだけでなく、他校との交流など人として成長できるすばらしい機会だと思っています。

最後に模擬国連担当の先生方にお話をうかがいました。
「『第1回SGH TMUN』は、ホスト校である玉川学園中学部高等部の生徒が運営する会議で、私たち教員も初めてのことでした。生徒主体の『模擬国連運営委員会』を発足させ、バックグラウンドガイドをまとめるためにリサーチし、推敲を重ねていきました。また、当日は会議開始直前まで運営の調整をしたり、昨年11月開催の『全日本高校模擬国連大会』を見学するなど、地道な活動を重ねてきた結果、すばらしく充実した大会になりました。他校との交流も深まり、次回へ続く基盤ができました。参加してくださった全国各地のみなさまにも感謝いたします」。

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