最先端の科学技術「生体認証」。その一端に触れる講演がPLコースの生徒対象に行われました

2015.06.18

6月3日(水)、高学年PLコースの10年生と12年生の合同授業「情報の科学」で「自分を見分ける生体認証のしくみ」と題された講演が行われました。お話をしてくださったのは、三菱電機株式会社情報技術総合研究所の松下雅仁氏。生体認証の分野を牽引するエンジニアの一人です。
そもそも、生体認証とはどんなものなのでしょうか。指紋や静脈、網膜など、その人固有の生体器官の特徴、情報を用いて個人を特定する技術が生体認証です。一部のスマートフォンや銀行のATMを利用する際、機械に指を押し当てることがありますが、これらは指紋や静脈による生体情報を用いた認証技術です。個人を認証する場合、この生体認証以外にも生徒証や印鑑のような所有物による認証方法や、パスワードなど知識による認証方法があります。所有物による認証は容易に作成できる一方で偽造が容易だったり、盗まれる可能性があります。一方で知識による認証は経費が抑えられますが、こちらも盗まれる可能性があり、また本人が忘れてしまうといった問題もあります。これに対して生体認証は、指紋などその人固有の生体情報を用いる分、複製されることもなければ、紛失したり忘れることも、盗まれることもありません。こうしたことから、生体認証はさまざまな分野で注目を集めているのです。

「ここで、皆さんの指紋を見てみましょう」と松下氏。指紋の紋様は大きく分けて渦状紋、蹄状紋、弓状紋があり、一人の人間であってもそれぞれの指で紋様は異なります。どの指がどの紋様に当てはまるのかを、生徒たちは虫眼鏡を使って調べていきます。この講演には約30名の生徒が参加しましたが、指ごとの紋様のタイプが合致する生徒さえ一人もいませんでした。指紋の紋様が完全に一致する確率は640億分の1と言われており、世界中の警察機関が犯罪捜査に採用しています。ちなみに世界の警察で使用されている指紋認証機器の約7割が日本製とのこと。個人を特定できる指紋は、非常に有効な生体認証システムなのです。
現在の指紋認証は、指紋の紋様を採取して照合するだけでなく、指の爪側から光を照射することで指紋パターンを透過するといった技術も開発されており、より多くの分野での活用に期待が集まっています。

しかし、この生体認証システムにも課題がないわけではありません。まずは認証システム機器の設置にコストがかかる点。また、ある意味で究極ともいえる個人の生体情報を用いた認証システムであるため、科学技術が進歩し、万が一その情報が盗まれて複製された場合でも、本人側がパスワードのように認証データを書き換えられないという問題があります。そうした課題の解決にも、今後取り組んでいきたいそうです。また松下氏はこうした生体認証システムの研究開発と同時に、人の感覚を評価する方法などについても研究を進めているとのことでした。「たとえば『面白い』とはどういうことなのか。それを定義できれば、誰もが面白いと思うことを科学的に開発できます」と松下氏。「工学の分野は、皆さんが勉強している数学や科学の延長線上にあります。基礎的な知識さえあれば、あとは他の人とは違う視点やアイディアを見つけることで、世の中に無いモノやコトを生み出すことができるのです。一人でも多くの人が、そうした世界に面白みを感じて、エンジニアをめざすことを期待しています」。 生体認証という、身近でありながら工学の最先端といえる技術に触れることができました。講演を聞いた12年生の男子学生は「指紋の紋様の認証方法などが印象的でした。僕自身も工学系の勉強にとても興味があるので、非常に面白かったです」と語ってくれました。

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)にも指定されている玉川学園では、今回の講演以外にも、科学に関するさまざまなプログラムを実施しています。こうしたプログラムを体験した生徒が、科学技術の分野に進むことを願っています。