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玉川のアクティブ・ラーニング 9

高学年公民科 中里孝男教諭の授業

授業を生徒のプレゼンテーションで進めながら学習内容の構造的な理解を促しています。

中里孝男 Takao Nakazato
玉川大学大学院文学研究科教育学専攻修士課程修了。大学院在学中の1997年から非常勤講師として玉川学園で教え、2002年から現職

プロアクティブ・ラーニング(PL) コース11年生の「倫理、政治経済」は、この日が13回目。これまで授業は中里孝男教諭による一斉授業でしたが、形式が変わります。

生徒は教員の助けを借りずに教科書の内容を説明する。自分のプレゼンで全員が十分に理解できるように事前学習が欠かせない
 

「予告通り今日から教科書を1項目ずつ割り振って、みんなのプレゼンテーションで授業を進めます。私は何も助けませんよ」

まず中里教諭から配布されたのは「プレゼン評価用紙」です。授業終了後に記入して提出するもので、「話し方」「創意工夫」「内容」 などを軸に評価します。

資料作成から評価まで生徒主体で行うこのアクティブ・ラーニングでは、生徒はプレゼンのために自分が話す教科書の内容を構造的に理解することを求められます。また非日常的な授業は教室に良い緊張感をもたらし、効率的に学びを深めることができます。

この日の発表者は秋山穂乃香さん。担当する項目は「中小企業の現状」です。画面に資料を映し出すとスタートです。

経営環境が悪化した際は、大企業が下請けへの発注を減らすことで中小企業を「景気の調節弁」としていること。低賃金の発展途上国に製造拠点が移り、国内産業が衰退することを「産業の空洞化」と呼ぶこと――。

中小企業をめぐるキーワードを随所に織り込みながら説明する秋山さん。公的な資料である『中小企業白書』をもとに、「最近は少子高齢化と後継者不足で中小企業の休廃業が増加しているそうです」と、教科書にはない最新の状況も紹介します。

生徒がプレゼン用に作成する資料の量は毎回10枚程度。前日までに中里教諭に提出する。 当日の持ち時間は10分
 

プレゼン終了後は質疑応答へ。「近年では『系列企業』が減っているそうですが、その理由は?」と声が上がります。

秋山さんは「コンピュータやインターネット関連の分野などで、大企業がつくった枠組みによらずにビジネスをする企業が増えたからだと思います」と言って、自らの考えを披露します。

生徒同士の質疑応答を見ていた中里教諭は、「質問の回数も数えています」とひとこと。授業に積極的に参加する姿勢を求めます。

質疑応答が終わると、最後は中里教諭による講評です。秋山さんが提示した「中小企業の休廃業」に関する新聞記事も掲げ、生徒の知的好奇心を刺激します。

人に伝える責任を負って臨むプレゼン。その責任感を持って取り組む中で、より確かな理解と知識を獲得していきます。

5段階の評価のほか、改善の提案など、プレゼン担当者へのコメントを必ず書く
 

ニュースをより深く理解できるようになった

プレゼン終了後、講評する中里教諭。この日はプレゼン導入の初回だったにもかかわらず、秋山さんがほとんど原稿を見ないで発表しきった点、持ち時間の10分で終えた点を高く評価した

私は理系志望なのですが、社会の勉強はもともと好きです。日頃、テレビや新聞でニュースに触れていて、政治や経済の話題にも関心があります。以前、アメリカのトランプ大統領が企業に国内での生産を求めているニュースを見ましたが、今回調べた「産業の空洞化」という概念と関係がある話なのかなと感じています。

「中小企業」というテーマは、父が経営者ということもあり、親しみを感じながら調べることができました。プレゼン資料は、休日を1日使って作成。発表前日に読んでみたところ12分かかってしまっていました。そこで本番はより簡潔に話すことを心がけ、結果的に10分で終えられました。

質問を受けるうちに気づいたのは、私には「なぜそうなのか」を理解してもらう説明が足りなかったということ。政治経済はキーワードの説明が多くなりがちですが、例えばある法律が制定されたことを説明するなら、「なぜ必要だったのか」といった社会的な背景まで含めて知ることが、効率的に学ぶためにも大切だと感じました。

【秋山穂乃香さん】

学びのDATA

PLコース11年生の「倫理、政治経済」でプレゼンによる授業を導入したのは2013年度から。生徒は年間で2~3回、プレゼンを担当する。後日、生徒全員が教科書の内容をもとに作成された問題を解く。その際、中里教諭が解説を加えることで、内容のより深い理解を促している

プレゼンの評価用紙。振り返りと他者の視点を受け入れる機会になる
生徒の発表が年間の授業時間数に占める割合

2017年5月8日取材
『全人』2017年7/8月号(No.818)掲載

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