故きを温ねて 38

子供たちにとりては無限の知識の庫

1966(昭和41)年10月、玉川大学出版部にて『玉川児童百科大辞典』の編集。
メガネ姿で鉛筆を持つのは、同書監修者でもある小原國芳
1940(昭和15)年、初代『兒童百科大辭典』の販売宣伝のため、台湾に赴いた学生たち。同書は現在でも台湾各地に所蔵されている

1932(昭和7)年、わが国で初めての児童向け「百科辞典」を玉川学園出版部(当時)が出版することになった。小原國芳は「『兒童百科大辭典』が、日本にはじめて生まれます。これで日本も漸く文化國の仲間入り」(『女性日本』創刊號・昭和7年5月)と述べた。

本学出版部による「百科」発行の足取りをたどってみよう。『兒童百科大辭典』全30巻、『学習大辞典』全32巻、『玉川児童百科大辞典』全30巻、『玉川こども百科』全100巻、『玉川百科大辞典』全31巻、『玉川児童百科大辞典』全21巻、『玉川新百科』全10巻、『玉川こども・きょういく百科』全31巻。そして9回目になる『玉川百科こども博物誌』は全12巻になる(今年5月から刊行開始)。

日本国内で、戦前から現在にわたって「百科辞典」を発行し続ける出版機関は他にないと思われる。自学自習、個性尊重、労作教育等を掲げた本学の創立理念を具現化するため、さらには日本国内に児童中心を旗印とした新教育を広めるため、『兒童百科大辭典』の出版は不可欠なものであった。

小原は「兒童の世紀はいよいよこれで日本にも來るわけです……子供たちにとりては無限の知識の庫であり、趣味溢るゝ自學自習書です」と続けている。

玉川大学出版部は国内有数の大学出版機関として学術書の出版を続けているが、児童向けの絵本も出している。小原國芳の唱えた「子供たちにとりては無限の知識の庫」となる出版への信条は脈々と受け継がれている。

(文=白柳弘幸 教育博物館)
『全人』2016年10月号(No.809)より