故きを温ねて 51

君の体操が始まったよ

大グラウンドにて、デンマーク体操チームの模範演技(1931年9月13日)。
堀内豊秋大尉も岡山でこうした演技を見たのだろう
『海軍體操教範』(1942年12月発行)。文庫サイズで図版が豊富である

1931(昭和6)年9月、小原國芳はニルス・ブックのデンマーク体操チーム一行を招聘した。文部省(当時)が学校体操にスウェーデン体操を採用した直後であった。そのためデンマーク体操は社会体操で普及させることになった。

ブック一行は玉川学園公演など全国40数カ所で実演と講演を開催。10月3日の岡山での開催には、江田島の海軍兵学校体操教官の堀内豊秋大尉が参加。その後、堀内は玉川でデンマーク体操の指導を受け、狭い軍艦内でも体操が可能となる独自の工夫を加えた。そして「海軍体操ニ関スル所見」にて「(ブックの)基本体操実施ヲ見学スルニ及ビ全ク驚嘆……常ニ端正ナル姿勢ヲ以テ優雅ナル表現……体操ノ生命ガ人間ノ生命ト完全ニ一致」(『堀内豊秋追想録』)と述べ、実験的に軍艦内にてデンマーク体操を行った。その結果、病人減少の成果も踏まえ軍当局にデンマーク体操採用を提言した。

1940年10月、堀内の信念と熱意により全海軍がデンマーク体操を採用する『海軍體操教範』が試行された。永野修身大将から連合艦隊旗艦「陸奥」に小原が呼ばれたとき、甲板で水兵たちの体操が始まった。小原は永野から「君の体操が始まったよ」(『教育一路』)と言われたとのこと。

その後、デンマーク体操は鉄道(現JR)やラジオ体操にも広がった。小原國芳によるブック招聘は「日本の体操に大きく貢献」(『デンマーク体操』外園一人)と評価されている。

(文=白柳弘幸 教育博物館)
『全人』2017年12月号(No.822)より