『全人』2009年7/8月号 No.730より

2009.08.01

今月号の巻頭は「食育のすすめ」と題し、食育について取り上げました。日本のカロリーベースでの食料自給率は今や40％まで落ち込み、先進国の中でも最低水準です。長年にわたって食育の啓蒙に努めてきた服部幸應先生が、子どもの豊かな人間性と生きる力のためには食が土台となることや、食をめぐる環境を語ります。
3回目となるグローバルCOE特別講義には、慶應義塾大学から言語心理学者の今井むつみ先生、連載「家庭力」では映画作家の大林宣彦監督に登場いただきました。
学園ニュースでは高学年と大学生のチアとダンスの国内外の大会での活躍ぶり、たまがわハニーアイスクリームのリニューアル販売開始など。また、玉川っ子なら誰でも歌う「第九」のドイツ語歌詞を入り口に、語学学習から見えてくる世界を論じた研究エッセイの寄稿が秀逸です。

2009年7/8月号目次

5大学が主催した第4回アグリビジネスフォーラムで基調講演する服部幸應先生

戦後の日本の教育は、「知育」「徳育」「体育」を三つの柱として行われてきました。しかし、われわれの「食」を取り巻く環境は変わり、食べ方も変わってきました。食事に集う家族関係も崩れてきている。そこで、「知育」「徳育」「体育」だけでは足りない、もうひとつ「食育」という柱が必要だと考え、数年前に政府に提案いたしました。以後、中央教育審議会など、さまざまな場所で食育の重要性を訴えてきました。
平成17年、「食育基本法」が制定されました。また、平成21年4月からは幼稚園で、23年4月からは小学校で、そして24年4月からは中学校で、食育の授業が導入されることが決定しましたので、今後、授業が進んでいくと思います。ただ、学習指導要領に入っても家に帰ったとき、親が知らなければ元の木阿弥ですから、親の教育も並行してやっていく必要があるでしょう。

「食育のすすめ」服部幸應 p4
さまざまな種類があるゲルマン語系正書法辞典。「ドイツ語」といっても地域ごとに異なり、それぞれの正書法がある

言語は、背景にそれぞれの歴史や文化をもっています。標準語さえあれば方言は必要ないという考え方は、地域のアイデンティティーを否定することになるでしょう。ヨーロッパの中等教育には、二つの外国語を学ぶ伝統があります。国際語としての英語は小学校の段階から必修ですが、それと並行して第2外国語、第3外国語を中学・高校時代に学ぶのです。ちなみに、ヨーロッパの学校で日本語を学ぶ生徒は、古典語以外の第3外国語として学んでいる場合が多いようです。（略）
ドイツの文豪ゲーテは Wer fremde Sprachen nicht kennt, weis nichts von seiner eigenen.「外国語を知らないものは自らの言語について何の知識もない」と言いました。ここでの「外国語」は複数形です。この格言の真意は何かをそれぞれお考えいただきたいと思います。

「ドイツ語学習から見えてくる世界」宮澤義臣 p28