『全人』生涯学べ(2018年3月号)

ユミ・ジェーン・カプランさん

北越高等学校ALT

アメリカ・シアトル出身。高校時代に日本へ留学。ワシントン州立大学卒業後、来日。佐賀県庁に勤務。2014年通信教育課程入学。15年から現職

多様性を尊重する「国際学校」の夢に向かって

 中学校や高校の英語授業で外国人の若者と交流した記憶がある人は少なくないでしょう。ALT(外国語指導助手)と呼ばれる彼らの多くは、文部科学省などによる「語学指導等を行う外国青年招致事業」(JETプログラム)を通して、主に英語圏の国々から来日しています。
 志望者は書類審査を経て母国にある日本の在外公館で面接を受け、合否が決まります。学校現場に入るALTですが、教員資格は必須ではありません。私もこのプログラムで来日したひとりで、職種はALTではなく、英語・日本語のバイリンガルの強みを活かせる国際交流員でした。仕事は自治体での翻訳・通訳、地域や学校での国際交流イベントの企画運営です。地域で教えるALTの支援も生活面での業務のひとつ。そこで私は現職であるALTの実際を知ることができました。
 ALTの仕事は、日本人英語教員の助手として授業や教材の準備などを含めて授業に関わること。イニシアチブは教員にあって、その指導計画にもとづきチームティーチングで授業に臨みます。アシスタントなので、英語スピーチを実演してみせたり、生徒の英語を聞き、より自然な表現を教えたりするなどのサポートが基本です。
 私の場合、多くの生徒と関わる機会を持てるようにとの学校の配慮から、1年生のほぼ全クラス、2、3年は2クラスに定期的に入っています。3年目ということもあり、計画から授業自体まで任せて頂く機会が増えました。自分が計画する授業では、生徒が主体的に考え、英語で自己表現できるようなテーマ設定を心がけています。
 ドラえもんはのび太を助けすぎという意見に同意するか否か、英文エッセイを書いて意見を述べる授業をしたことがあります。「同意。助けすぎは自立につながらない」「助けないと作品が成立しない」など、生徒が何かを発してくれて嬉しかった。正しい意見なんて本来はなくて、自分の言葉で意見を書ければいい。それが自己肯定感につながるし、仲間の意見を知ることは他者を認めるきっかけになるはずです。

違いを認める社会づくりにバイリンガル教育で貢献したい

 私は小さい頃から学校が好きでずっと教員志望でした。成長して「日米の言語・文化を知る自分だからできることは?」と自問するうち、バイリンガルの教育者になる夢が見えました。目標は子どもたちが2つ以上の言語に日常的に触れる教育を行う「理想の国際学校」をつくることです。アメリカと比べて、日本はバイリンガル教育のニーズが明らかに大きい。そのために小学校教員の免許状を取得し、経験を積みたくて通大に入学しました。
 アジア系もアフリカ系も珍しくないアメリカで学んだ私にとって、日本の学校で学ぶ外国籍の児童、外国につながる児童は「違い」に目を向けられてしまって居心地が悪そう。でも学校は自分を肯定できる場であってほしいし、彼らの個性は周囲の子どもたちのプラスになると思うのです。こうした多様な背景を持つ者同士の交流を考えたとき、英語は何より便利なツール。英語に限らず、中国語でもフランス語でもいい。小さいうちから日本語以外の言葉で学び、他者を理解・尊重する。それが自分のプラスになるんだと知ってもらいたいのです。
 世界的に見ても多様性のある社会の実現が求められています。そのニーズを受け止め、学校づくりの夢を追いかけたいです。

2006

父はアメリカ人、母は日本人。家庭では主に日本語を使って育つ。このシアトルの高校在学時、兵庫県内の高校に1年間留学した

2013

佐賀県で国際交流員として地域住民と接した。小中学校に出向き、国際理解教育の一翼を担ったことも

2017

北越高校では英語授業に携わるほか、イングリッシュ・クラブを指導。校務分掌から学校運営の知見も得た

My Precious Day

日本の職場で仕事ができるレベルの日本語力を身につけるべくJETプログラムを志望。佐賀県庁時代は英語の絵本の読み聞かせなど、夢につながる活動に力を入れた