『全人』生涯学べ(2018年6月号)

寺崎佑亮さん

東京都町田市立
忠生小学校教諭

大学で児童福祉を学ぶ。卒業後、生命保険会社勤務を経て2014年に通大に3年次編入。16年に小学校教諭1種免許状取得。17年から現職

特別支援学級での経験を活かしたクラスづくりを

 教員1年目の昨年度、私は特別支援学級(くわのみ学級)で教えました。在籍する児童は、自閉症や情緒障がいをもつ子どもたちです。知的な発達の遅れはないものの、コミュニケーションや感情のコントロールに難があるため、小集団の学級で学習するのです。
 在籍児童12名に対し、教員は私を含めて3名で、教員1人あたりの児童数は2、3名程度と手厚い指導ができる体制でした。
 特別支援学級で学ぶかどうかは、市の教育センターに就学相談をした上で保護者が決定します。教員の方では、就学前の児童の状況について幼稚園・保育園からの情報で把握します。
 入学後は子どもの様子を見ながら、4月末頃をめどに担任教員が個別指導計画を立案します。これは具体的な目標や指導の内容や方法について児童ごとにまとめたもので、年間を通した指導の基本となるものです。
 特別支援学級の授業は、通常学級と同じ教科書を使用し、内容も進度も大きな違いはありません。学力面での問題はないため、ほとんどの児童に共通した目標として、「通常学級で学ぶこと」を掲げています。
 目標達成への特徴的な取り組みのひとつが「自立活動」です。週2回各1時間、ゲームやロールプレイを通して社会的スキルやコミュニケーション力を培います。これは拠点校から来校する巡回指導教員と連携して行います。

児童一人ひとりが自己効力感を得られる指導に努めたい

 また適宜実施する「交流学習」も大切な取り組みです。児童は国語、図工といったように教科単位で時間を区切って通常学級に入ります。みんなといっしょに学ぶという目標達成に向けたトレーニングといえます。
 交流学習の前に、いつも私は「集中して聞けるか」「みんなと協働しやすいか」といった観点から、担任児童が教室で座る場所を検討するようにしていました。授業中に気持ちが乱れたり、立ち歩いたりしてしまったりしたときは、周囲の児童からの声かけも必要です。こうした配慮に万全を期すべく、通常学級の担任とも打ち合わせました。児童のことを詳しく伝えて、通常学級の側でも準備をしてもらうためです。
 また交流学習に行く児童とめあての確認もしました。めあては、「手を挙げてから発言する」「立ち歩きは3回まで」といった具体的な内容でした。
 交流学習は普段と異なる環境での学習。児童には心身の負担になることでもあります。保護者には実施時期を予め相談し、理解を得て進めました。
 特別支援教育の経験がない中、教員1年目で担任をもった私にとって、通大時代に参加していた自主的な学修グループ、「結いの会」での学びが大きな支えになりました。結いの会では、特別支援教育に携わる方のお話を聞く機会があり、子どもの事例や使いやすい教材など、実務に役立つ情報を予め知ることができていたのです。
 特別支援学級は小さな学級。目が行き届くので、子ども一人ひとりの良さを見つけて本人に伝えやすい。だからその子が「自分にはできることがある」という自己効力感をもつチャンスも増やせます。
 教員2年目の今年度、通常学級1年生の担任となりました。教える場は変わりましたが、子どもの良さを見つけようと心がけた特別支援学級での経験を活かしてクラスをつくっていきたいです。

2012

大学卒業後は、「一度は社会を見よう」と一般企業に就職。優秀な営業成績で表彰されるなど、充実した会社員生活だった(写真右)

2016

学習塾に支援員として勤務。野外体験プログラムに同行し、ウィンタースポーツを子どもたちと楽しんだ

2017

家族との時間は何よりのリフレッシュ。わが子の様子からも発達に関わる知見を得られると感じている

My Precious Day

2017年度に特別支援学級で担任した児童から贈られた作品や手紙。試行錯誤しながらも親密な距離感で教えることができ、1年間を通して児童の成長を実感できた