『全人』生涯学べ(2018年12月号)

福山高志さん

江戸川区立
第二葛西小学校教諭

茨城県出身。理系の大学を経て、2006年に通信教育課程へ2年次編入。小学校教員免許状1種と学士学位取得。2014年から現職

理科を軸に探究する意欲を引き出す授業手法を探る

 高校卒業後に理系の大学に入学した私は、近所の学童保育に手伝いで関わっていました。そこでペットボトルのロケットをつくって打ち上げたりすると、子どもたちの反応がすごい。興味を抱き、心から楽しむ姿に心打たれて以来、教員の道を志して今があります。
 今は3年生のときから教えている児童といっしょに持ち上がって6年生の担任を務めています。
 勤務校では5年生から理科と社会は教科担任制度をとっているので、理科は2クラスを教えています。もちろん全教科を教えられますが、黒板を見た先輩教員からは、「理科のときがいちばん気合入っているね」と言われます。指導案づくりも教材の準備も、自分の好きな理科は、知らずに力が入ってしまうようです。
 そんな私が理科の授業で大切にしているのは「導入」です。たとえば気体の性質を学ぶときは、サイダーを子どもたちに見せます。「先生、飲んだら校長先生に言っちゃうよ!」と非難されます(笑)。「先生は何をするんだろう?」と思わせておいて、普通の水との違いを尋ねます。「泡がある!」と言う子がいれば、二酸化炭素が溶けている事実を指摘する子もいて盛り上がります。こうして前のめりになったところで、気体の性質という本題に入っていくのです。
 昨今、子どもたちの理科離れがいわれますが、「結果」が見やすい環境が理由のひとつに挙げられるかもしれませんね。テレビやゲーム、インターネット動画で結果を見ることに慣れてしまい、深く考え、探究する機会が減っているのではないでしょうか。

教員は慢心の許されない職業自ら研鑽を積んで子どもたちの主体的な学びを実現する教員をめざす

 理科の楽しさは自分で立てた仮説を、実験から確かめられることです。私は何ごとも自分で試して結果を見ないと気がすまないタイプなので、なるべくして理科好きになりましたが、「好き」を育むには、興味を引くモノや現象を紹介しながら、「試してみたい」「実験で確かめよう」と意欲を引き出すことが大事だと思います。そのために授業では、インパクトのある導入を心がけているのです。
 教員は子どもたちの探究心や学びを引き出すのが仕事ですが、幸い勤務校では、屋上の太陽光パネルによる発電、雨水利用のトイレ、ツルレイシ(ゴーヤ)を使った緑のカーテンなど、さまざまな仕組みが格好の教材となっていて、理科的な興味をくすぐる機会に恵まれています。
 教員5年目で強く感じるのは、慢心の許されない職業だということです。私自身、常に学び、新しい方法や工夫を導入したいと考えています。教員による研究会や勉強会は公的なもの、私的なものと多々ありますが、私は3年目から東京都小学校理科教育研究会(都小理)に所属し、会合や研究発表会への参加に努めてきました。
 この都小理とは別に、江戸川区内の小学校教員が集う、理科教育の研究組織に関わっています。私を含め、定期的に集まって年4回開催する研究事業の企画を練るなどします。教員同士で授業を見合う「研究授業」の運営が主で、私にとってよい研鑽の場です。
 理科を含めて教育全体が知識偏重から脱し、課題を発見して答えを探究する力の獲得に重きを置くようになりました。子どもたちに負けないように、教員としてよりよい方法を常に模索する人間でありたいですね。

2009

理系の大学に進学後、子どもと関わる活動を通じて理科教育の楽しさを実感。通信教育課程では学生会主催の学習会に積極的に参加した

2013

学生会では役員を務めた。教員になった仲間が多く、教育を共通テーマに卒業後も交流を続ける

2014

自作のブラックボックス。直列つなぎ・並列つなぎによる明るさの違いに注目させるツールとして使った

My Precious Day

2015年、所属する江戸川区立小学校教育研究会理科部の「研究授業」にて。指導の様子を公開し、他の教員からフィードバックを得る。常に新しい指導方法を学ぶことが、教員の責務だと考えている