『全人』生涯学べ(2020年9月号)

山中千鶴さん

松戸市立
六実小学校教諭

2013年玉川大学文学部人間学科入学。通信教育課程で学び、小学校教員2種免許状取得。中学校社会、高等学校公民の免許状も持つ。今年度は1年生を担当する

自分で考え意見を持つ子どもを育てたい

 教員になる目標を持ちつつも、文学部人間学科に進学したのは、「これが自分の専門なんだ」と思えるものを携えて卒業したかったから。考え過ぎて不安になることが多かった私は、「考える」を自分の武器に変えるために哲学を学びたかったのです。
 学科で取得できるのは中学・高等学校の免許状でした。でも小学校教員にも関心があったので、通信教育課程で学びながら小学校2種免許状を得られる「小2免許特別プログラム」にもチャレンジ。3年次からは通学と通信で学ぶハードな日々が続き、電車内でレポートを書いたりもしました。
 スクーリングでは、企業勤務や子育ての経験を積んでから教職をめざす方々との交流が貴重でした。「企業で行われている取り組みを教育に生かしたい」「保護者からは学校がこう見えている」といった熱意や意見に触れ、教育をまったく新しい視点で捉えられるようになりました。
 在学中はずっと小・中のどちらにするか悩んでいましたが、臨時任用だった教職1年目に小学校で教えたことが決め手になりました。
 学校は「正解を言えばマルをもらえるところ」と思われがちです。でも哲学を学んだ私は、児童が自分の意見をぶつけあって、新しい何かを生み出すことを重視しています。だから「自分で考え、それを伝えられる人になろう」と言い聞かせています。

提出し続けたレポートは宝物。今でも見直し実践に役立てている

 「考える」を促す仕掛けのひとつが、毎日のプレゼンテーションです。これは帰りの会に日直が行うもので、初回は私が「悩み」をテーマに設定し、くしゃみの音が大きくて困っていると打ち明けたら、みんなが笑顔で前のめりに。今では各々テーマを定めてプレゼンしています。自分の考えや思いを話す楽しさを感じてもらう場にしたくて始めましたが、お互いの考えや意外な一面がわかったりして、クラス内で共感が生まれる機会にもなっています。
 係活動にも仕掛けを取り入れました。給食係、配り係といったものは当番にして、学校生活を楽しくする係を自分たちで考えようと提案したのです。すると「怖い話をする係」が生まれて、普段は目立たない子が朝の会で披露してくれるようになりました。
 こうした取り組みが生きて、昨年の社会の公開授業で成果が出ました。「社会は暗記」と思われるのが嫌で、題材は裁判員制度に。裁判員候補になった人が辞退したり、裁判所に来なかったりと、制度に課題があることを取り上げました。背景を調べると若い層や外出のむずかしい高齢者が辞退しがちとわかったので、「どうやったら協力してもらえそう?」と問いかけました。すると「若い層向けにYouTubeでPR動画を流す」「高齢者にはモバイル端末を貸してオンラインで参加してもらう」など、調べたことをもとに提案が次々と生まれました。考えて、意見を言うための取り組みの成果が出て嬉しかったです。
 でも私は発言だけで評価するつもりはありません。普段から全員に持たせているブレインストーミング用の紙に、思いついたことは何でも書いてもらっていますが、発言しない児童の紙にも面白いことが書かれたりしています。それを私が見つけ出し、みんなと共有して学びを深める――それこそ、私のめざしたいことなのです。私なりの仕掛けを通じて「考える」を実践できる子どもを育てていきたいですね。

2015

「小2免許特別プログラム」でともに学んだ通学課程の仲間と大学教育棟 2014で。授業の空き時間に通信教育課程の学修を進めた

2016

通信教育課程のスクーリングで。音楽や図工など、通学課程では学べない科目を積極的に履修(写真中央)

2017

教職についた通学課程の仲間たちと。卒業後も連絡を取り合い、情報交換を続けている

My Precious Day

2019年に行った社会の公開授業での板書。児童の考えや意見を引き出して整理した。思考の下地となる、調べる力やデータを読み解く力を日頃から養うことの重要性を痛感した