9月24日(日)、玉川大学工学部 "情報通信工学科"キックオフ・シンポジウム 「未来の社会」を開催しました

2017.10.06

さる9月24日(日)、University Concert Hall 2016にて、工学部「情報通信工学科」のキックオフ・シンポジウム「未来の社会」を開催しました。このシンポジウムには同学科の岡田浩之教授のほか、人工知能(AI)、ドローンなど未来を開く産業分野で活躍している4人の講演者をお迎えして、それぞれのスタンスから「未来の社会」を語っていただきました。当日は学生や一般の方々などで会場は満員。講師の方々の熱のこもったお話に熱心に聞き入っていました。

2017年4月、玉川大学工学部に「情報通信工学科」が設置されました。このシンポジウムは、近年大きく注目される人工知能(AI)やロボット技術などに学びの焦点当てた新学科の教育研究コンセプトを広く社会に知っていただくために、各界の第一人者をパネリストにお招きして開催されました。

実は「情報通信工学科」が玉川大学に設置されるのは2度目のこと。最初の「情報通信工学科」は1972年に設置されました。シンポジウムの開会挨拶の壇上に立った小原芳明学長はこのことに触れ、1970年代には「情報」「通信」「工学」という3つの分野は一つにはなり得ないという考えがまだ根強く、新学科設置認可には時間を要したというエピソードを披露。ESTEAM教育(ELF・Science・Technology・Engineering・Art・Mathematics)を推進している玉川大学が開設したAIやロボットなど最先端分野にも取り組む新しい「情報通信工学科」への期待を語りました。

以下、4人の方々の講演の概要を紹介します。

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「ロボットとAIが創る未来の社会」

玉川大学 工学部情報通信工学科/学術研究所先端知能・ロボット研究センター(AIBot研究センター)研究センター主任
岡田浩之教授

トップバッターで登壇した岡田教授は、まず情報通信工学科と同時に発足した本学学術研究所先端知能・ロボット研究センター(AIBot研究センター)のプロフィールを紹介。脳科学研究所との「赤ちゃんラボ」など、人の発達に学ぶ認知発達ロボティクス研究を通して「人間の研究の上にロボットを考える」玉川大学ならではのロボティクス研究について解説しました。
また「玉川ロボットチャレンジプロジェクト」を通したK-12 一貫教育で行われるロボティクス教育にも触れ、従来のSTEM教育にロボティクスと芸術を加えバージョンアップしたSTREAM教育(Science・Technology・Robotics・Engineering・Art・Mathematics)の意義を提唱しました。
さらにお掃除ロボットを例に、この20年間、ロボットができることはそれほど進化していないこと、そうしたロボットのハードウェアのボトルネックを救うためにAIに期待が寄せられていることに言及。ディープラーニング(深層学習)による機械学習・表現学習が可能になった「第3次AIブーム」の先にある「知能とは何か?」という問題意識、前述のロボティクスとSTREAM教育の重要性を指摘し、一過性の「ブーム」への危惧と「人間の知に対する過小評価」への懸念を表明しました。

「情報知能の汎用化するインパクトとは何か」

株式会社ドワンゴ ドワンゴ人工知能研究所所長
山川 宏 氏

山川氏は、わが国を代表する人工知能研究者で「第3次AIブーム」の立役者の一人です。その「第3次AIブーム」の原動力となったディープラーニング(深層学習)について動画を交えた解説の後、人間のプロ囲碁棋士に勝ったグーグルAIの例をあげながら、世界のIT企業が取り組んでいる脳全体や大脳新皮質に学んだ汎用人工知能(AGI)開発トレンドを紹介しました。
そうしたAIの進化が社会に与える不安として労働の問題があります。すなわちAIが人間の職業を奪うのではないかという懸念です。山川氏は、人が経済的価値を生み出す職業を「大陸」、生産における機械化の広がりを「海」にたとえて、機械化の海の中に埋没していく「職業大陸」という概念を図解で紹介しながら、逆にAIが不得意なスキルや人間としての価値を発揮する領域など「人間が機械より優位になりうる価値」について語ります。
最後に、山川氏自身の考えとしてAIと共存する望ましい未来社会像「EcSIA(Ecosystem of Shered Intelligent Agents)」を提唱。これは「万人の幸福」と「人類の存続」のトレードオフの緩和をAIが担い、多様なAIと人類によって大自然のように複雑広大なエコシステム(生態系)が形成される社会像です。

「ドローンが切りひらく未来」

ドローン・ジャパン株式会社 取締役会長
春原久徳氏

2015年に設立されたドローン・ジャパン株式会社は、急速に普及拡大しているドローンのビジネス活用のコンサルティングや技術者養成教育のほか、新しい日本の農業のカタチを提案するドローンによる農業ビジネスを展開されています。
創業者である春原氏は、ドローンの役割は「作業」と「情報収集」であり、集めた情報を加工・分析するためにIoT(Internet of Things:モノのインターネット)やディープラーニングと必然的に関わっていったと語ります。
2016年に黎明期と言われたドローン・ビジネスは、今年に入ってすでに普及期を迎えており、活躍分野、技術、行政の動きとも大きく進展。春原氏はコンピュータを搭載することで自律的に飛行・情報収集できるドローンの動画を見せながら、来場者にドローンの“現在と未来”を実感させてくれました。
こうした「移動型インテリジェントロボット」としてのドローンは農業をはじめ労働人口減少の解決手段として期待されること、さらに「IoT世界の拡大」、「持続可能な社会を作り上げる」ことが期待され、「ロボットフリーな社会」の構築の必要性を提唱。新しい情報通信工学科の研究者や学生にも「この問題を考えていただきたい」と締めくくりました。

「SF小説の世界観が期待する未来社会」

SF作家
さかき漣氏

さかき氏のSF作品『エクサスケールの少女』は、AIが人間の能力を超える“シンギュラリティ”の視点から人類の未来を描いています。講演ではこの作品の執筆過程で感じたAIと人間の未来について語られました。
この作品の執筆を勧めたのは、さかき氏のファンだったITベンチャー企業PEZYComputingの齊藤元章CEO。同氏からは「シンギュラリティをユートピアとして書いてほしい」という要望があり、さかき氏自身も読者の満足度を考え、AIと人間が共存するハッピーエンドを描くことを決意。古事記の「国譲り」と「出雲の製鉄技術」を、「シンギュラリティ」と「AI研究開発」に重ねたストーリーは、AI専門家からも高く評価されています。執筆に先立ち、さかき氏はAIについての記事や文献を広く読み込んだほか、研究会など研究者の集まりにも足繁く通ったそうです。
映画「2001年宇宙の旅」の大ファンであったさかき氏は、人類を脅かすAI脅威論にも魅力を感じていたそうですが、『エクサスケールの少女』の執筆を通して、人間の英知によってリスクマネージメントをしていけば、AIと共存するユートピアの物語は十分可能だという考えにたどり着いたそうです。
また、他のSF作品なども例に出し、人はなぜ地球外生命体にロマンを求めるのかという話から「人は同じように交流できる他者を求めており、今までは宇宙がその対象だったが、それがAIに向かっているのでは」とも語っていました。

  • シンギュラリティとは:人工知能(AI)が人の知能を超える転換点。この転換がもたらす世界の変化のこと

講演の後、4人の方々への質疑応答が行われ、会場から出た「AIは意思を持ちうるか?」「AIが得意な仕事とは?」などの質問に、予定時間が過ぎるまでそれぞれの立場から熱心に回答されていました。

こうして、情報通信工学科キックオフ・シンポジウム「未来の社会」が無事終了しました。情報通信工学科は、社会を大きく変える、「人と人をつなぐ」技術を学び、「未来の社会」で活躍できる人材の育成を目標に教育研究活動を展開していきます。情報通信工学科の活動にぜひご注目ください。

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