小原一仁先生第1回 外の世界ってどんなところだろう?

2016.06.14

今回初めてコラムを執筆するにあたり、まずは簡単な自己紹介から始めたいと思います。1978年奇しくも世間では一大イベント(?)のクリスマス・イブに、私は、アメリカ合衆国(以下、「アメリカ」)カリフォルニア州にあるスタンフォード大学病院で生まれました。米国での滞在は僅か1年10カ月程度で、以来、玉川学園高等部を卒業するまでは日本で育ちました。大学からは再び米国に渡り、学士、修士、博士号を取得しました。
留学時代には9.11の同時多発テロが起こり、テロ前後でアメリカ社会が一変したことは、今でも鮮明に覚えています。特に、それまでは潜在化していた人種差別が一瞬で顕在化したことは、日本人である私にはとても衝撃的でした。このような社会的(あるいは人種・民族的)閉塞感も目の当たりにしたアメリカ生活ではありましたが、それでも私は多くのことを経験し学ぶことができました。
そこで、第1回目のコラムでは、アメリカ的価値観の中でも特に私自身強く感銘を受け、以来自身のモットーの一つに掲げているものを紹介したいと思います。

Think out of box.

日本のことわざにも「井の中の蛙大海を知らず」がありますが、それを実行することの難しさは、私も常々痛感していることです。
しかし、アメリカでの生活の中で、これを実行に移している人がとても多いように感じました。もちろん規定の枠に囚われないアウトローな自分カッコいいという単なる勘違いさんもいましたが、自分の限界を自らが設定してしまうことを好ましく思わない果敢な姿勢に、いつしか私も魅了されました。ついつい無難な選択を下しそうになるものですが、敢えて未だ到達できぬ世界に思いを馳せることで自分の限界に挑戦し、目の前に立ちはだかる壁を打破するバイタリティは、今も尚世界にそのプレゼンスを誇示する大国の国民だけのことはあると、認めざるを得ません。
18歳で渡米してから僅か7年程度の学生生活でしたが、自分が陥りがちな安定性への選好にブレーキを掛けてくれる考え方に巡り合えたことは、非常に幸運なことだと思います。革新的な何かが創出されなくても良い、今自分を取り囲む状況に甘んじることなく、それを打破するために最大限の努力を払う、そんな生き方は、研究者にとっても重要ではないでしょうか。
それにしても、全てが規格外の大きさというのもアメリカの特徴ですが、そんな国の食事事情も規格外なことが多いです。オチを付けるつもりはありませんが、アメリカの食事に慣れ親しむと、自分の体も規格外になりがちです。