原田眞理先生コラム4: Self Help Groupのプログラム

2018.11.12

今回私は、日本の当事者・非当事者団体で使用できるプログラムを、Stanford Universityの教授と共に作成してきました。東日本大震災後は、その影響(自宅の倒壊・流出、原発事故の放射能による避難指示など)により避難した被災者達は、避難先の土地で自然と新しいコミュニティを形成するようになりました。その際、被災者自身が避難者支援団体の代表となり避難者への支援を行う団体も多く存在し、それを当事者団体といいます。代表者は、当事者であり、支援者であるので、当然のことながらご自身も被災体験があり、大きく心身に傷(トラウマ)を負っている場合も少なくないのです。その一方で避難先の地域の人たち、たとえば自治体の人たちが運営している、その地域に元々存在した団体に避難者が仲間に入って行われているものを、当事者団体と区別して非当事者団体といいます。支援の方法は異なりますが、交流会自体は、当事者であろうが非当事者であろうが、大きな違いはありません。交流会では、お茶を飲んだり、季節の小物や食事を作ったり、地域の歌を歌ったり、盆踊りを踊ったりなどをして、交流(つながり)を中心に、おしゃべりなどを楽しみます。詳しくは私のゼミのホームページをご覧ください。

このような交流会における活動を日本人に適したもので作成したのが今回のプログラムです。検証はこれからになります。以下にそのセッションとタイトルを示し、ポイントのみ解説をします。

表1 Manual for the self help groups of survivors
表1 Manual for the self help groups of survivors

セッション1から6は前回お話したSPRの考え方を一部取り入れながら、身体にも働きかけます。その後、青色をかけたセッション6から11は自由な活動に利用します。小物作りはこれまでもありましたが、このプログラムにはカラオケを入れました。これが一番の特徴です。カラオケといっても日本人は恥の文化がありますので、率先して歌わせることはせず、歌詞に着目します。悲しい歌と力強い歌のリスト(年代別)を作成し、その中から1曲ずつ選んでもらい、その歌詞を配布します。歌詞を見ながら、皆で一緒に歌います。その後ワークシートを記入してもらいます。その歌が自分にどのような意味があるか、どのような気持ちになるか、ということを、自分というよりは歌を通して考えたり感じてもらうということが目的です。表2に悲しい歌(力強くもありますが)の例として「見上げてごらん夜の星を」をあげました。表3にワークシートも掲載しました。みなさんもやってみてください。
これらを交流会や災害公営住宅、復興公営住宅などの新しいコミュニティ作りの際に利用してもらい、その効果を今後検証していく予定です。

表2 見上げてごらん夜の星を(歌詞)
表2 見上げてごらん夜の星を(歌詞)
表3 ワークシート

Worksheet for Karaoke
Sing the song and read lyrics.
1. Have you ever heard this song? Yes / No
2. What do you feel when you sing this song?
3. Do you remember something? Tell your story.