坂野慎二先生:教育改革の日独比較Vol.2:小学校での授業改革

2015.11.06

前回は、小学校に入学する以前の教育についてみました。今回は小学校における日本とドイツの様子について、整理してみましょう。

1.日本の小学校改革

日本では、小学校と中学校を合わせて義務教育学校とすることができるように法律が改正されました。こうした改革の背後には「縦のつながり」を重視する必要性があることを読み取ることができます。「小1プロブレム」や「中1ギャップ」といった言葉は、お聞きになられたことがあると思います。こうした制度の改革ももちろんですが、そこで何をどのように学ぶのか、ということも非常に重要です。
現在、学習指導要領の改訂についての準備が進められています。内容での変化として、外国語(主に英語)の学習が3年生から始められることになりそうです。方法のキーワードは「アクティブ・ラーニング」です。子どもが主体的に学ぶことがその中心です。子どもたちが「一人ひとり生き生きと学ぶ」ことはすばらしいことです。きっと学習成果も上がることでしょう。でも、そのためにはいくつかの条件が必要になるはずです。

2.ドイツの小学校改革

ドイツの小学校では、小学校で学年混合学級を取り入れるところが増えています。州が法令で導入を規定しているところも少なくありません。学年混合学級とは、主に1年生と2年生とが同じクラスで学ぶ学級です。学び方を理解している2年生の行動が1年生のお手本となるのです。1年生も小学校の勉強になじみやすくなります。
学年混合学級では、すべての子どもに同じ課題を一斉に行うという方法は通用しません。それぞれが自分で課題に向き合い、1年生は2年生の助けを受け、2年生は先生の助けを受けながら学習していきます。その基盤となっているのは学習の個別化です。もちろん、全員で歌を歌ったり、ゲームを楽しんだりもします。しかし、算数や国語の勉強では、みんなが同じ内容にはならないのです。

3.考える視点

日本の学校は、同じ年齢の子どもが学級をつくることになっています。しかし、子どもの発達は同じ年齢でも様々です。理解の早い子もいるし、ゆっくりな子もいます。一斉教授では、いわゆる「上の子」や「下の子」は授業に関心が持てなくなっていきます。ドイツの学年混合学級では、理解の早い子は1年で3年生に進みます。理解がゆっくりな子は3年間学年混合学級で学び、それから3年生へと進みます。また、ドイツでは、発達が順調ならば、小学校への入学も本来より前の年度に入学することもできます。子どもの理解度に合わせた学級編制という考え方がその基盤となっています。外国につながる子が多いドイツの学校では、こうした工夫が必要であったともいえるでしょう。

[関連文献] 坂野慎二(2015)『海外の教育改革』放送大学振興会

(教授 坂野慎二)