科学するTAMAGAWA 生徒の生きる力を育むサイエンスクラブ

2013.11.25

理科や科学に興味がある生徒が、
自主的に研究に取り組むサイエンスクラブ。
それは、高度な科学的知識を身につけるだけでなく、
生きる上で必要となる力を育む場になっています。

生徒の自主的な研究活動の場

玉川学園には、5-12年生*(小学5年生から高校3年生)を対象としたサイエンスクラブがあります。これは、テニス部や吹奏楽部などと同じ課外活動(クラブ活動)で、授業ではありません。理科や科学に興味がある生徒が集まり、それぞれ好きなテーマについて研究を行っているのです。今回は、サイエンスクラブ担当教員の一人で、高学年の理科(化学)を指導する原 美紀子(はら みきこ)教諭に、その活動内容や活動の意義について話を聞きました。

サイエンスクラブの成り立ち

「サイエンスクラブが発足したのは今から7年ほど前のことです」と原教諭は話します。「玉川学園のカリキュラムには、自由研究という時間が週に1時限分用意されています。これは各教科や芸術、スポーツなど幅広い分野から生徒が自分でテーマを決めて、1年間を通して研究に取り組むものです。その中には理科も含まれているのですが、週1回の授業時間では、時間のかかる実験や継続的な観察が必要な実験などは行うのがむずかしい状況でした。生徒の方からも『もっと実験がしたい』という要望がありましたので、それではクラブ活動として活動しようということで、サイエンスクラブが誕生しました」。

サイエンスクラブ実験風景

現在サイエンスクラブは、火・木・金曜日の放課後と土曜日に活動を行っています。「特に土曜日は時間が長く取れるので、時間のかかる実験も行うことができます。もともと玉川学園は理科の授業内での実験が多い学校ですが、それでも教科書に載っているすべての実験を行うことはできませんし、まして各生徒の興味や疑問に応える実験を行うことは不可能です。理科に興味がある生徒はやはり実験が好きですから、サイエンスクラブは、そういう生徒の意欲に応える場となっています」。

発表の場を設けて目的意識を高める

現在サイエンスクラブに所属しているのは5〜12年生までの18名。各生徒がそれぞれにテーマを見つけて研究に取り組んでいます。「ただし、好き勝手に実験をやればいいというわけではありません。テーマを一つに絞って時間をかけて研究を行い、それをレポートにまとめることを義務づけています。まとめたレポートは、中学・高校生の公募コンクールとしては最も歴史と権威がある『日本学生科学賞』への応募をはじめ、何らかの形で発表する場を設けています。
生徒達のレポート

1年間の研究の成果をまとめるわけですから、その分量はかなりのものになります。少ない生徒でもA4用紙で30枚くらい、中には6年生で65枚ものレポートを書いた生徒もいます。レポートの作成はいやがる生徒も多いのですが、単に『実験しておもしろかった』ではあまり意味がありません。レポートをまとめることで、考える力やまとめる力をつけて欲しいと思っています」と原教諭は話します。

さらに、ときには多くの人の前でポスター発表や口頭発表を行う機会もあるそうです。「例えば、玉川学園が指定を受けているSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の生徒研究発表会では、他校の生徒や先生に対して発表する機会があります。日本化学会主催の発表会などでは、大人の研究者たちが学会を行っている横で発表することもあり、発表会やコンクールによっては、大学の先生が見に来ることもあります。聞いてくれる人がいると生徒もやりがいがあるようで、普段は引っ込み思案な生徒も、本当に一生懸命研究成果を伝えようとしますね。このように発表の場があると研究に対する目標になりますし、やり遂げた達成感も味わえます。それが、生徒にとっては次の研究へ向かうやる気にもつながっているようです」。

生徒の主体的な研究姿勢を重視

サイエンスクラブでは、なるべく「これをやりなさい」という指示はしないと原教諭は言います。「本当に興味があることでないと1年間にわたる研究は続きません。ですから、研究テーマもできるだけ自分で考えてもらっています。でも、5〜6年生くらいだと『何をやったらいいかわからない』という場合も多いので、例えば『身近なことで疑問に思っていることを調べてみたら?』とか、『理科の本の中からおもしろそうな実験を探してみたら?』というアドバイスはします」。

テーマを決めたら仮説を立て、その仮説を検証する実験方法を考え、実験するという流れになりますが、その際もなるべく口出しはしないそうです。「例えば、『リンゴを切って置いておくと色が変わるのはなぜか』というテーマを研究する生徒がいて、『空気中の酸素が原因ではないか』という仮説を立てたとします。でも、空気中には窒素や二酸化炭素もありますよね。そういう場合は、『他の気体は調べなくてもいいの』ということは言います。あるいは、比較する実験なら『変数は一つにして、他の条件はそろえないと、きちんとした結果が得られないよ』という話をしたり、結果の表し方が『きれいだった』などという感想にならないように、数値を使って表すなど客観的で説得力のある方法を考えるように助言したりします。つまり、生徒の考えたことが理論立てできているかどうかをチェックするのが、私たち教員の役割だと考えています」。

また、サイエンスクラブは基本的には一つの教室で全学年の生徒が活動しています。そこで生徒同士の交流が生まれることも、良い相乗効果を上げていると原教諭。「1年間も研究していれば、うまくいかないことが必ず出てきます。そんなときには他の人の研究を手伝ったりしながら、生徒同士で『何でだろう?』『ここが違うのでは?』などと考え合うシーンも見られます。また、高度な研究に取り組んでいる先輩に憧れて発表の仕方などを真似する後輩もいれば、後輩に実験のやり方などを懸命に教える先輩の姿も見られます。そのように、興味や学年が異なる生徒が集まって研究を行うことで、自分たちで学び合う環境ができていると思います」。

大学や研究施設がワンキャンパスにあるメリット

研究テーマによっては、かなり高度な知識やむずかしい実験が必要になることもあるそうです。「テーマによって化学、物理、生物を専門とする3人のクラブ顧問が対応しているのですが、それでも対応しきれない研究が出てきます。そんなときは、大学の農学部の実験機材を借りたり、工学部の先生に教えてもらったりしています。例えば、ロボットの研究を行っている生徒がいますが、工学部の先生に電話して『わからないことがあるので、今からロボットを持って行きます!』とお願いして教えてもらうこともありました」。

「また、11年生(高校2年生)のある生徒は、玉川学園の井戸水の水質調査を研究テーマにしていましたが、玉川学園の水質管理を行う環境技術センターの方が協力してくださり、施設を見学させてくれたり井戸水の採取を手伝ったりしてくださいました。同じ敷地内に大学や各種研究施設があり、先生方や職員の方がとても協力的なのは、私たち教員の立場としてもとても心強いですね」と原教諭。ちなみに、この水質調査の研究は高校化学グランドコンテストでポスター賞を受賞しました。

生きる上で必要となる力を育てたい

このように、高度な研究も行っているサイエンスクラブですが、ほんとうの目的はそこではないと原教諭は言います。「サイエンスクラブに所属する生徒は全員が理系というわけではありませんし、進路もさまざまです。ですから、理科の知識を深めることだけが目的ではありません。むしろ、自分で仮説を立てたりデータを使って考察したりする力や、自分の意見をまとめたり相手に伝えたりする力、あるいは、失敗しても粘り強く取り組む姿勢など、生きていく上で必要となる力を身につけて欲しいと考えています」。

「サイエンスクラブに所属していた卒業生で、大学は経済学部に進んだ生徒がいたのですが、その生徒は『AO入試でプレゼンテーションを行うとき、サイエンスクラブでレポートをまとめたり発表していた経験がすごく役に立った。どんな進路に進んでも、サイエンスクラブでの経験は無駄にならない』と後輩達に話していました。そんなふうに、『サイエンスクラブでの取り組みが役に立った』といつか思ってもらえたら、教員としては非常に嬉しいです」。