カクレクマノミの人工ふ化を5-8年生の自由研究テーマに

2016.09.05

玉川学園では、大きな成果を上げている5-12年生のサンゴの自由研究に続いて、5-8年生の児童・生徒によるカクレクマノミの飼育と人工ふ化の研究が始まりました。その成長に目を輝かせる児童・生徒たち。これまでの経過をご報告します。

サンゴ研究からもっと広く児童・生徒の関心が生まれるように

文部科学省指定のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)である玉川学園では、課題研究の一つとして、2015年10月、児童・生徒が育てたサンゴを石垣島の海へ移植することに成功し、日本サンゴ礁学会でそれまでの研究成果を発表しました。難しいといわれるサンゴ(ミドリイシ)の飼育の成功の背景には、研究班の水質管理の技術がありました。
この研究を背景に、「サンゴ研究で培った水質管理や飼育のノウハウを生かして、この水槽を広く児童・生徒と共有したい」と、5-8年生学務主任の土屋和彦教諭が、カクレクマノミの飼育を提案。サンゴ班の市川信教諭は「どうせやるならば、よりレベルの高いものにしたい。見せるにしてもきれいに整えるなどして、後の研究につながれば」と考え、カクレクマノミの飼育が始まりました。

試行錯誤を繰り返して明らかになった産卵とふ化

この水槽のろ過装置はアクア・アグリステーションに
活用されているシステムの試作品を譲り受けたもの

カクレクマノミは自然界ではイソギンチャクと共生し、群れの中で一番大きな一匹が雌に、次に大きい一匹が雄に変化することが知られています。水槽にカクレクマノミのつがいとイソギンチャクを入れ、飼育が始まりました。高校生によるカクレクマノミの飼育や研究は愛媛県立長浜高校で行われており、その事例も参考にしました。
水槽では、人工海水を水道水で溶くだけの一般的な方法で海水を管理していましたが、イソギンチャクもカクレクマノミも元気がありませんでした。そこで、サンゴの水槽に使用する純度の高いRO水(超微細孔のフィルターで不純物を除去した水)で人工海水を溶き、サンゴの飼育と同様にサプリメントを与えると、イソギンチャクは元気になり、カクレクマノミも動きがよくなりました。サンゴが育つ環境はカクレクマノミ・イソギンチャクにとっても好ましい環境でした。
そして、2015年11月、イゾギンチャクの根元付近にカクレクマノミの産卵を確認しました。飼育当初はふ化を目的としたものではなかったので、児童・生徒たちは産卵に驚きました。

観察用に水槽を分離。左は産卵用のつがいの水槽。
右はふ化用の水槽

産卵は2~3週間に一度あります。しかし、ふ化直前に卵が水槽からすべてなくなるという事態が起こりました。状態が悪い卵を親が食べてしまうという研究はありましたが、卵は水槽に全く残っていません。イソギンチャクが食べたのではないかという仮説から、イソギンチャクを取り出しました。イソギンチャクがなくても産卵があることは長浜高校の研究で知られています。
さらに、卵がろ過装置に吸い込まれないように、ろ過装置を止めましたが、それでも卵が水槽にない状態が続きました。やはりカクレクマノミの親か他の貝、エビが食べた可能性が出てきました。そこで、カクレクマノミのつがいをタイルと植木鉢だけを入れた水槽に移したところ、植木鉢に産卵しました。さらに親が卵を食べないように、ふ化直前に植木鉢ごと他の水槽に移し、閉鎖的な環境でふ化できるようにしました。
ふ化を促すため、親はパタパタと水を送ります。その状況を作るため、エアレーションで卵に刺激を与えると、翌朝200匹ほどの稚魚を確認することができました。

産卵もふ化も周囲が暗くなり静かになった夜中に行われるため、児童・生徒がその瞬間を見ることは難しい。そこで、どうにかして見ることができないかと、昼間に水槽の周りを暗くし、深夜にはライトで水槽を明るくして、カクレクマノミの体内時計を変化させようと試みました。すると産卵の時間帯が徐々にずれてきました。
また、観察を通して、産卵を前にすると、雌の腹部が膨らみ、雄雌ともに、突くような動作で卵を産む場所の掃除をすることもわかりました。試行錯誤を繰り返し、少しずつカクレクマノミの産卵・ふ化の過程が明らかになってきました。

産卵のために隔離された、つがいのカクレクマノミ。上が大きい雌、下が雄。手前左隅を産卵場所にするために掃除中
銀色のふ化した稚魚。一部は成長してオレンジ色に

カクレクマノミの成長から生まれる飼育、観察への関心

「産まれてる!産まれてる!」。黄色い卵を見て、児童・生徒は目を輝かせます。卵はだんだん銀色になり、ふ化が近づくと銀色の目玉が見えます。「もうすぐだね」「そろそろだね」。ふ化した稚魚が成長して体表がオレンジ色に色づくと、児童・生徒はカクレクマノミがかわいくてしかたなくなります。毎朝、登校一番、校舎のエントランスにある水槽に集まってきます。
カクレクマノミの飼育はサンゴほどデリケートではありません。水槽の水替えも、サンゴに比べて少なく、成魚になれば乾燥した餌で飼育ができます。また、稚魚は生きているワムシやブラインシュリンプを餌にしますが、ワムシの培養に必要なクロレラは玉川学園の水質管理を担当している株式会社環境技術センターから提供されるなど、玉川学園内の連携も大きなサポートになっています。

カクレクマノミの幼魚。水槽の隅に群れをなすことが多い。
この中から雌、雄が一匹ずつ誕生
正面の水槽の横に取り付けられた餌の培養装置。
ここで餌のワムシ・ブラインシュリンプを培養

自分たちでテーマを見つけ、方法を考える夏休みの研究

飼育に主に関わっているのは、自由研究生物班でサンゴの研究をしている児童・生徒です。5-8年生の最上級、8年生が積極的に興味津々の5年生をリードしています。この夏休みも「カクレクマノミの観察のために登校したい」と志願しました。それぞれグループごとに観察のテーマを持ち寄り、実験や観察の方法も考え、市川教諭にプレゼンテーションしました。中には毎日じっくり観察するために、自宅でカクレクマノミを飼育したいという児童・生徒もいました。

テーマ

  • 群れを作るカクレクマノミから1匹を離したら、もとの群れに戻るか。
  • 群れを構成するカクレクマノミにグループ構成の変化はあるか。
  • 産卵の場所を人工的にコントロールできるか。
  • 成長していく過程でカクレクマノミの特徴的なバンド(模様)はどうやってできるか。
  • カクレクマノミは光に集まっていくか。

カクレクマノミから研究の道筋と楽しさを学んでほしい

「サンゴについては、9-12年生ではかなり高度な研究が始まっていますが、目に見えた成長の変化が少なく、5-8年生には少し難しいテーマです。それに比べ、カクレクマノミの成長は目に見えて変化があるので、5-8年生が実験や研究に興味を持つきっかけを作り、また、そのプロセスを体験するには恰好の題材です」と、市川教諭はその教育的意義を語ります。
夏休みの研究を踏まえて、秋からはいよいよ本格的に児童・生徒による人工ふ化から成長までの一連の流れの飼育、観察を行います。
「サンゴと同じように、課題研究としての発表も視野に入れて、実験や科学的な研究に高めていきたいと考えています。世話や管理をしていく中で、まだ知られていないことが発見できればうれしいですが、そうでなくても、疑問に思ったことを実験方法を考え、それを調べ、結論を導き出す過程の難しさ・楽しさを体験してほしいと思います」。

関連リンク