松本博文先生に第8回北欧日本・韓国研究学会のお話を伺いました
昨年の夏のELTamaでは、松本博文先生がヘルシンキ大学で行われた「第8回北欧日本・韓国研究学会」の発表と重なってしまい、残念ながらご参加いただけませんでした。せっかくですので、事務局ではそのときに松本先生が発表されましたお話しをお伺いしてきました。スペースの関係で面白い具体例をお示しできないのが残念です。
松本先生: 本発表では、言語景観(街中で見られる言語使用)研究の中でも、その社会的な側面よりも特に言語的な側面に焦点をあてました。一つの標識や看板において複数の言語が使用されている場合、全ての言語において同じ情報が与えられていると思われるかもしれませんが、実際には言語間で相違が見られる場合が少なくありません。今回は日本語と英語の二言語に絞り、両言語間における情報相違を質的に分析するとともに、その問題点について論じました。 その中心的な議論は、英語により提供されている情報が、日本語により提供されている情報と比較した際に不十分で、実質的には機能しない場合があるということです。これには、日本語の情報の「訳」として考えられるような英語の情報も含まれます。このような標識では、本来英語表記により意図されている情報の受け手(英語話者)が、標識により意図されている情報内容を得られないことになり、実用面で大きな問題があります。 今後もこうした事例を収集・分析することで、日本における言語景観の問題点を明らかにするとともに、より実用的な英語使用への意識を高めていくことができればと考えています。
日本語版
松本博文(2010)「言語景観の言語学的研究 日本の日本語・英語二言語表記標識における情報相違」第8回北欧日本・韓国研究学会(NAJAKS 2010)口頭発表、ヘルシンキ大学(フィンランド)、8月19日。
オリジナルの英語版
Matsumoto, Hirobumi (2010) ‘A Linguistic Approach to Linguistic Landscape: Information Gaps in Japanese-English Bilingual Signage in Japan’, Oral Presentation at the 8th Conference of the Nordic Association of Japanese and Korean Studies (NAJAKS 2010), University of Helsinki, Finland, 19 August.