授業レポート「英語科コースデザイン研究」(英語教育専攻2024年春学期)

「英語科コースデザイン研究」では、学生自身がLanguage Course Manager(教育プログラム管理者)の立場を想定し、英語教育プログラムのモデルを作成するという実践的な課題に取り組みました。大学の教職課程では、教材研究や授業計画、教職に関する法規について学ぶことが多い一方で、管理職の立場に立ったマネジメントやプログラム全体の運営に関する学びは少ないのが現状です。この授業では、管理職の視点から英語教育プログラムを作成しました。
この授業で英語教育プログラムを作成する際、自身の理想だけではなく、社会のニーズや法規による制約をどのように取り入れるかが大きなポイントでした。プログラムの設計において、教育現場の現実と理想をすり合わせる作業が必要であり、現代社会で求められるスキルや能力に対応したカリキュラムを構築する難しさを感じました。特に、評価される側としての視点ではなく、教師や教育プログラム全体を評価し運営する立場に立つことで、より広範な視点で教育プログラムを構想する力が養われました。授業回を重ねるごとに、プログラムを構築する過程では段階を追って複雑な課題が課され、プログラム作成の難しさを実感しました。どのような方法でプログラムを作成し、またその効果をどのように評価するかという点は、繰り返し議論されました。
今回の授業を通じて、教師の立場ではなく、教育プログラムを管理・評価する立場で英語教育を考えるという、普段では得難い経験をしました。それぞれの学生が個性のある英語教育プログラムを作成し、互いに共有することで、多様な視点やアプローチに触れることができました。こうした学びは、今後の教育活動において非常に役立つものと感じており、管理職の視点から教育を考える機会が増えれば、さらに質の高い教育実践が可能になると実感しました。 

(文責 英語教育専攻 N.K.)

北米を始め、EU諸国、東南アジア諸国では、大学院でLanguage Course Managementのコースを履修するという研修が中堅の学校教員に課せられている例は多いのですが、日本においてはキャリアの後期に管理職研修はあるものの、中堅教員向けの英語(外国語)のプログラム運営に特化した研修は殆どありません。また大学・大学院の教職課程では教壇に立ってすぐに役立つことが優先されるため、このような科目が設定されていることはあまりないでしょう。この授業は受講者が様々なレベルの英語プロフラムの管理者という想定の上で、プログラム設計のシミュレーションを行います。最初は「理想」のプログラムを描いた上で、言語学、教育学、マネジメントなどの複数の観点で文献を読み、ディスカッションと振り返りを繰り返しながら、「現実的に可能な最良のプログラム」を作っていきます。そして最終的には、はじめて教科レベルのマネジメント(例えば英語科教科主任など)に携わる際に備え、初任からどのようなことに注目し準備できるかを考え、自分の番が来た時に慌てずに業務を遂行できるようになることを目指しています。この科目が開設されてから、10年以上経ちますが、未だに他大学に類似した科目はないと思います。英語教育専攻の科目群では異質な科目かもしれませんが、ちょうど初期の履修者がLanguage Course Management を実践する年代になって来たこともあり、この科目での学びを現場で活用できるという実感を得ているようです。

(「英語科コースデザイン研究」授業担当者 小田眞幸)