小島佐恵子先生第2回 大学教員・職員への関心

2016.07.26

 大学に関心をもったきっかけについて前回はお話しました。今回はどのようなことに関心を持ったのか、もう少し詳しくお話しようと思います。私は、大学はもっと学生に働きかけてもいいのでは、と思っていました。当時の大学は、講義に出ずに何かに没頭していても誰にも何も言わないという寛容さはあったものの、全体的として学生を鼓舞するようなシステムはあまりなかった気がします(あくまで主観です。すみません)。そのようななかで、大学における学生支援はどのようになっているのかということに関心をもちました。
 大学院生になると、国立大学の独立行政法人化を始め、日々大学が形を変えていきました。在籍していた大学でも、現代的な課題に応えるような科目が増え、しかもそれを学部横断で履修できるようになり、語学科目も非常に充実していきました。学生や教職員の起業を促す場所もでき、やりたいことを後押ししてくれるような雰囲気ができていきました。その頃、指導教員の訪米調査に院生数名でついていくという計画が持ち上がり、初めてアメリカの大学に行く機会も得ました。そこでは学生支援の部門は細かく分かれ、非常に丁寧に学生の要望に応えているように見えました。もちろん履修のシステムや学生の気質、背景等、さまざまに異なるためにアメリカでは多くの対応が必要とされているわけですが、当時の私はそれを見て感動してしまい、アメリカの学生支援制度への関心を高めていきました。そして学生支援に携わる職員が大学院で養成されているということも知りました。このことをきっかけに、現在も学生支援に携わる職員の研究をしています1。彼らは大学院での学びを機に、博士課程に進学し、教員へとキャリアを転換することもあります。そこから、教員と職員の職務の違い、文化の違い、そうしたことにも関心をもつようになりました。また、近年、世界的にその領域が曖昧になってきていることも指摘されています。
 たとえば、(玉川大学もそうですが)近年、大学職員が職を持ちながら大学院で学ぶ機会が増えています。中央教育審議会では、大学運営の高度化に伴い、従来の教員と事務職員の垣根を超えた人材の養成も検討され始めており、その例として研究のマネジメントをするリサーチ・アドミニストレーターや、大学内のさまざまなデータを収集・調査分析し、戦略的な計画を立て、改善していくインスティテューショナル・リサーチャー等が挙げられています。こうした教員・職員の間に位置する業務は「第三領域(third space)」2と呼ばれ、すでに国内外で研究が進められてきています。日本でも、上記のような業務は教員が担当している場合もあれば、職員が担当している場合もあり、大学によってさまざまです。はたしてこうした職にはどのような能力が求められ、どのようなキャリア・パスが描けるのか。現在共同研究を進めているところです3

  1. 若手研究(B)「財政困難下の米国大学における学生支援職の変化と戦略に関する理論的・実証的研究」(研究代表:小島佐恵子)
  2. Whitchurch, Celia, 2013, Reconstructing Identities in Higher Education: The rise of ‘Third Space’ professionals, London: Routledge.
  3. 基盤研究(C)「高等教育新興プロフェッションの養成メカニズムに関する実証的研究」(研究代表:二宮祐)