開講科目

教育学研究

教育哲学研究

教育の目的を「人格の完成」「人格陶冶」「善き人間の形成」というような形で理解するとすれば、そこには必ず道徳の問題が関わってくる。本講義では、善き人間(人格者)になるとはどういうことかという観点から「正義」や「自由」の意味について理解しつつ、それらと教育との関係を哲学的に問うて行きたい。
すなわち一性(いつせい)を問う哲学的な問いとしてまずは「正義とは何か」「自由とは何か」を掲げ、正義の女神に象徴される「秤」「剣」の意味や、我々が通常有する「欲望の自由」とそれに対立する「道徳的自由」などの意味を明確にしたうえで、そもそも「教育とは何か」という根源的な問いへとアプローチしてみたい。

教育思想史研究

教育基本法に示される「人格の完成」という教育目的は、田中耕太郎の著書『教育基本法の理論』にも示されているように、カントの「人格概念」の影響を多分に受けている。
カントの教育思想は、「人間とは教育されなければならない唯一の被造物である」という言で有名な『教育学』にて示されるが、彼の「人格概念」はギリシャ時代より続く形而上学的概念によって支えられているため、これらを理解しておかねばカントの教育思想を正確に理解することはできない。
そこで、この授業では教育思想史的な観点から、形而上学に基づくカントの「人格概念」を理解し、それがどのような形で教育基本法の「人格の完成」に影響を与えたのかを明らかにしてみたい。

比較教育学研究

諸外国における教育制度、教育理念が、相互にどのような影響を及ぼしてきたのかを、主要国の事例から分析する。制度的及び思想的アプローチを織り交ぜながら、今日の教育学の生成と発展を理解する。多くの国で共通する要因を取り出すとともに、その国、その時代の独自性を把握し、その要因を説明できることを目指す。それによって、日本の教育の特質を理解し、説明する力を養う。

教育史研究

「教育学は如何なる学問か?」この問題は教育学の歴史と共に古く、現在においてもなお未解決のまま問われ続けている。
本講義では、いち早く大学で教育学を講じ始め、教育学の確立へ向けて腐心し続けてきたドイツにおける教育学の歴史を繙く。特に、20世紀のドイツ教育学の相貌を規定したディルタイ学派の所謂「精神科学的教育学」に着目し、その教育学理論の特質、敵対する学派との論争点、教育学と教育実践との関係、ナチズムとの関係等を検証し、歴史的意義と今日的意義について考察していく。その際、「精神科学的教育学」の代表的思想家から、玉川学園ともゆかりの深いE.シュプランガーとO.F.ボルノーを中心に取り上げる。

教育心理学研究

現在、学校現場で生じている学習不振、発達障害、非行、不登校、「いじめ」などの諸問題に対して、最近の教育心理学の研究成果をもとに具体的対応法を検討するのが本講義の目的である。
具体的には、成長・発達の概念、認識能力の発達、教授学習や理解のメカニズム、知識を規定する認知的・文化的な諸要因、教育臨床、脳科学、子どもや保護者の教育環境、関係機関との連携等を踏まえ、教授学習活動を推進する事例や教育活動を妨げる事例に対して、どのような対策を実施していくことが可能なのかを検討することとする。知能検査や発達検査を各自で実施できるようにするとともに、各検査の問題点や実際に教授活動にどのように応用していくかを検討することとする。

臨床心理学研究

児童・生徒の教育活動を支援する上で臨床アセスメントが必須となることを踏まえ、面談法、観察法、事例研究法、心理検査法などの各技法、およびそれらの理論的背景を習得し、各子どもに対して具体的な対応法を検討できるようになることを目指す。具体的には、DSMⅣ(2013年にはDSMⅤを予定)に基づき各臨床アセスメントの特徴を理解し、どのような事例ではどのような技法が求められるのかを判断する能力を育成する。
さらに、従来の検査では不十分な教育上の諸問題に対して、自ら質問紙を作成し、児童生徒の心理分析・行動評価を実施できる心理側的尺度法についての知識(記述統計の基礎や推測統計の基礎、および多変量分散分析や重回帰分析、因子分析、共分散構造分析等の多変量分析)の習得を目指す。

教育課程研究

学校教育において、どのような教育の目的・目標に従って教育内容が設定され、どのような成果を挙げてきたのか、また、どのような課題が生まれてきたのかを、歴史的経緯に従って、理論と実態を分析する。これを踏まえて、今日の学校教育における教育内容の計画・実施・到達について、どのような仕組みで運用されているのかを分析し、どのような改善が可能なのかを考察する。

教育方法学研究

「教育の方法・技術」は、「何を」「何のために」教育内容とするかということと不可分なことがらであり、ただ単に効率の良い手段を求めることが教育方法を検討することではない。そうした背景・教育内容と対応させながら、「方法」を問題にしたい。具体的な授業場面における「方法」がどのような意味を持っているかについて、「社会に開かれた教育課程」を軸にしつつ、方法の意味を問い直していく。
題材は「生活科教育」や「総合的な学習の時間」を中心にとりあげていくが、方法の妥当性を検証する方法についても実際の分析・検討作業を通じて身につけられるように進める。

教育技術研究

本講では、教育技術研究を中心とした教育方法研究に関わる内容について学ぶ。教育方法は、教育技術に関する知識のみならず、各教科の内容や教育課程、教科の特性に関する知識、学習心理学に関する知識などをもとに、それが実践知として体現され暗黙知化していくものである。
本講の前半では、これらについての指摘や課題をレビューする。本講の後半では、受講者の関心のある題材を取りあげ、教育方法の視点からそれを問い直す過程を通じて、教育方法研究の手法について伝えていく。

教育社会学研究

教育に関して、学校教育といったフォーマルな教育から、家庭における子どものしつけ、メディア等によるインフォーマルな社会的影響等、広い範囲の人間形成作用を扱い、社会学的な視座からの理解を深める。それに基づき、教育に対する柔軟な発想を養い、多方面から教育作用を構成している社会現象の考察を試みる。

教育行政学研究

教育行政に必要な法律知識を確かなものとする。教育基本法や学校教育法、地方教育行政法等の主な規定の意味を検討する。その上で教育行政と学校制度の制度的、社会的意味を理解する。また、戦後教育改革以降の教育政策の大きな展開を理解する。
主な内容として、教育行政と法令、国と地方の教育行政機関、教育行政の目的・目標、学校制度・学校体系、学校制度、初等中等教育行政、高等教育行政、生涯学習行政、私学行政を取りあげる。

教育経営学研究

学校設置者と学校の関係は、近年の動向において、学校の自主性・自律性の問題としてとらえ直しが行われるとともに、学校運営に必要な権限と財政基盤をどのように確保するのかが問われている。
「人・物・金・マネジメント」をどのように組み合わせ、全体最適を目指すのかを考える。主な内容として、教育行政学と教育経営学、臨教審の改革提案と学校、学校改善の理論的動向、学校参画と学校ガバナンス、学校選択と学校市場、効率的な学校運営、労働市場と学校を取りあげる。

教師教育学研究

教員養成・研修及び教員の生涯成長・ライフコースの設計に関する教師教育学の知見を総合的に教授する。本専攻における研究の基本を修得し、今後の研究の全体を把握することを可能としたい。

教育学量的研究方法

教育に関わる問題について、量的研究方法が適切な研究テーマやリサーチクエッションと事例研究を示しながら、量的研究方法の基礎を学んでいく。実験法と調査法の違いや統計学の基礎と考え方を理解し、それぞれの仮説の検証において適切な分析方法を選択することを学び、自分の興味に沿ったテーマの量的研究方法を実践する。

教育学質的研究方法

教育学の諸問題にアプローチする質的研究方法を学ぶ。文献検索、先行研究の整理から問題を設定していく方法、またその問題へのアプローチとして、観察、インタビューという方法とその分析の基礎を学ぶ。

初等教育研究

初等教育研究

初等教育の研究の範囲は広く多岐にわたるが、本講では、まず初等教育における本質論、制度論、教育内容・方法論について概観する。その上で小学校教育の特質を踏まえ、教育課程ならびに学習指導等の領域を中心に講述する。
具体的には、教育改革の中での小学校教育の現状、新学習指導要領と小学校教育、学力向上と小学校教育などのテーマを取り上げていく。さらに現在の小学校教育をめぐるさまざまな課題についても、理論と実践の両面から考察することとしたい。

小学校授業研究

主に生活科と社会科を取り上げ、デューイの教育思想にも学びつつ、思考と表現、習得と活用をキーワードにした今日的な小学校授業の課題について考える。日本における授業研究の歩みを振り返ったり、名人と呼ばれる授業者による代表的な授業を事例に授業の成立条件に関して考察したりする。
また、言語力を育むためにどのような社会科授業が望まれるか、知識と技能の習得や探究的な学びを支える諸条件についても様々な角度から考察したい。

コンピュータと教育

本講では、情報化が教育内容や教育方法、学びの在り方や教員の指導力に及ぼす影響について学ぶ。主として3つの概念で学習を進めていく。第1に教育方法の改善としてのICT活用である。第2に高度情報社会を見越した能力開発としての情報教育である。第3に情報化による業務の標準化や改善などの観点で捉えられる校務の情報化である。本講では、政策の動向や学校現場の実態を克明に紹介しつつ、受講者による発表・討論によって深い理解と行動の変容を目指して進めていく。

カウンセリング研究

現代の教育現場では、教育相談に代表されるように、対人関係にまつわる問題が増加している。この授業は、カウンセリングの基礎が身につき、心理学的な視点をもちながら人とかかわることができるようになることを目的とする。そのために、ロールプレイを実施し、具体的なやりとりを試みる。日常生活のコミュニケーションに容易に取り入れることができる交流分析についても学習し、コミュニケーションパターンや関係性について考える。さらに、カウンセリングの視点をもちながら、子どもや保護者の話に耳を傾け、本当に伝えたいことは何かを見極めることができるようになるために、事例検討を行う。
事例は、子ども、保護者、教員、臨床心理士など複数の視点から考察し、マニュアル的な解決ではなく、問題を解決することができる力を養う。さらに、心理検査やコラージュ療法を体験することにより、自分自身についての理解を深めることも同時に行う。

特別支援教育研究

現在の学校教育の大きな課題の一つである特別支援教育について、その対象となる高機能広汎性発達障害児やLD児、ADHD児等を含めた指導の難しい児童生徒の理解ならびに指導の方法、さらにはそうした児童生徒の在籍する学級、学校の運営について、ミラーニューロンやワーキングメモリー等最新の知見も含め、主として自閉症の障害特性などから考える。加えて、いわゆる軽度の発達障害児と同様な行動をとる「母子関係の悪い」子どもの指導についても考える。

乳幼児教育研究

幼児教育研究

本授業では、「幼児教育」とは何か、その変化する時代の中でその本質を問うことを目的とする。特に、現代社会においては、子育て環境も劇的に変わる中で、幼児教育の在り方が制度的にも見直されようとしている。そうした中で、幼児教育実践の「質」とは何かを探究することを中心的なテーマとして位置付けたい。
具体的には、倉橋惣三の誘導保育論、レッジョエミリアの保育論、あるいは、OECDのstarting strongやアメリカのNICHD調査等の世界的な幼児教育の質的研究に着目し、授業を行う。単なる講義ではなく、受講者による発表、討議をもとに進めていく。

幼児表現研究

教育の根幹となる乳幼児期における音楽教育のあり方をさぐる。現在、音楽は『表現』という領域に統合されているが、『表現』という領域は指導にマニュアルが作りにくく、かつ保育者自身が様々な表現手段に触れる機会が少なかったことから、子どもたちの表現を感受する能力が不足しているように見受けられる。
この授業では音楽・造形または身体表現を中心に据え、実技を通して、まず自身の表現力を高めることを学ぶ。それに加えて、子どもたちの様々な表現に気づき、それを受け止め発展させていけるような指導方法を検討する。

障害児保育研究

障害のある子どもや、かかわりの難しい子どもの保育に関する課題は実践の中で大きな問題となっている場合がある。しかし、障害のある子どもを受け入れて、その育ちや発達の保障が可能となっている保育実践もある。この違いは何か。「インクルーシブ教育・保育」「合理的配慮」をキーワードとして障害のある子どもの保育に関する質的研究を具体化する。質研究の課題としては保育全般を対象とし、具体的な保育方法や環境構成などを明らかにすることが本講義の目的である。

幼児と人間関係

幼児期の人間関係の形成は人として育つために最も重要な課題である。その根幹となる母子・家族関係を基本とし、幼稚園・保育所・児童養護施設等における人間関係の形成や仲間と共に育つことの必要性を保育の世界は強く意識する必要がある。また、障がいのある子どもの育ちにとっても人間関係の形成は重要な課題である。
本講では、障がいのある子どもを含む、人間関係の形成について実践的かつ理論的に学ぶ。実践の中で人間関係の育ちを実現するためには、保育者の資質や専門性が問われる。保育の現場で頻繁に起こるトラブルやいざこざ、葛藤が人間形成にどのような影響を与えるのか。具体的な場面考察と事例研究によって明らかにしたい。研究の手法としては、ビデオ分析や幼児理解と記録を活用し、考察する。

幼児と保健

豊かになったわが国では、子どもたちの健康に関する課題は、感染症から生活習慣病予防へと、あるいは身体的健康からこころの健康の保持増進へと移ってきている。そのような変遷をふまえながら、本講では、生涯の健康や人格の基盤が形成される幼児期における健康に焦点をあて、まず、幼児期の発育・発達の特徴や、罹患しやすい疾患や事故について基本的な理解を深める。さらに、親子関係や人間関係も含めた子どもたちを取り巻く養育環境が幼児の心身の健康に与える影響についても考えたい。これらのことをふまえ、現代の子どもたちのwell-beingの実現や健康問題の発生予防のためには家庭・保育現場・学校・社会はどのような対応をすべきかについて考察をすすめていきたい。

IB研究

IB教師教育ⅠA

PYP、MYP、DP、CPの原動力は、国際教育に対するIBの理念である。プログラムには、国際教育の本質をめぐる考えが深く刻み込まれており、「IBの使命」および「IBの学習者像」として示されている。
IBプログラムでは、「国際的な視野」をより明確な言葉で定義づける試みと、実践を通じてその理想に近づこうとする努力を、IB認定校の使命の中心として位置づけている。このコースでは、IBプログラムは国際的な視野をもつ人間の育成をどう目指しているのか、そしてそれをどう学校の教育カリキュラムに入れていく必要性があるのかについて検討する。

IB教師教育ⅠB

IB教育者にとってもっとも大きな使命は学習者の変化成長を促すことである。学習や生活のあらゆる場面、あらゆる機会を活かし、「いま」と「いまから」のより豊かな人生を実現するために、学びの場を創造・実践し、学習者の変化成長を保証することである。とくに、学習や生活の基盤となる日々の授業がもっとも大切な教育の場であり、教育の機会となる。授業の質が学習者の変化成長と直結すると考えられる。
このコースでは、協同学習の理論と技法を手がかりとしながら「協同による活動性の高い授業づくり」について検討する。

IB教師教育ⅠC

国際的な教育者は、生徒の知識、理解、技能の発達には、学習者と学習に焦点が当てられるべきだということを認識している。したがって、IBプログラムのカリキュラムの枠組みと、枠組みを支えるプロセスに理解を示すことは、IB教員が持つべき必要不可欠な知識となっている。このコースは、指導と学習との関係、及び、国際的な教育の推進とIB実践の実施に効果的だとして示されうる様々な指導法の理解を促進することに焦点を当てている。このことは、学習者の学習支援において、どのようにプログラムを伝達し、評価をするか、ということを決定する際の基礎となる。

IB教師教育(PYP)ⅡA

IBプライマリーイヤーズプログラム、良い教育の指針を示すことだけではなく、教育内容や、国際教育を推進していく上での自身の役割をより深く理解していくための取組を、個人で、または周囲の人々と協力して積極的に進めていく。

IB教師教育(PYP)ⅡB

学習の成果に対する評価は、学びのプロセスの中心に位置するものである。I形成的評価及び総合的評価の手法について充分な知識を有し、正しい理解をしめすことができるかどうかは、非常に重要な要素となる。

IB教師教育(MYP)ⅡA

学習の成果に対する評価は、学びのプロセスの中心に位置するものである。形成的評価および総合的評価の手法について十分な知識を有し、正しい理解を示すことができるかどうかは、非常に重要な要素となる。
カリキュラムの構築において評価とは、生徒の学びと理解を効果的にサポートしていく上で不可欠なものであり、継続的に取り組んでいくべき分野である。このコースでは、IBミドルイヤーズプログラムがどのようにデザインされ、解釈され、実際に導入されているかについて具体的な知識を身につけ、かつIBミドルイヤーズプログラムが推奨し、求める評価方法に対する理解を深めていくことに焦点を当てていく。

IB教師教育(MYP)ⅡB

良い教育の指針を示すことだけではなく、IBミドルイヤーズプログラムの教育内容や、国際教育を推進していく上での自身の役割をより深く理解していくための取り組みを、個人で、または周囲の人々と協力して積極的に進めていく。
このコースでは、IBの教育に沿った教育的効果の高いカリキュラムデザインのプロセスの探究、学習成果を正しく伝えていくための評価手順の構築、形成的評価及び総合的評価を確実に実施するために必要な教育的プロセスの理解へのサポート、自身の指導に対する振り返りと改善可能な箇所への取り組み、IBミドルイヤーズプログラムの目標達成に向け協力して進める学習に取り組んでいく。

IB教師教育(DP)ⅡA

学習の成果に対する評価は、学びのプロセスの中心に位置するものである。形成的評価および総合的評価の手法について十分な知識を有し、正しい理解を示すことができるかどうかは非常に重要な要素となる。
カリキュラムの構築において評価とは、生徒の学びと理解を効果的にサポートしていく上で不可欠なものであり、継続的に取り組んでいくべき分野である。このコースでは、IBディプロマプログラムがどのようにデザインされ、解釈され、実際に導入されているかについて具体的な知識を身につけ、かつIBディプロマプログラムが推奨し求める、評価方法に対する理解を深めていくことに焦点を当てていく。

IB教師教育(DP)ⅡB

良い教育の指針を示すことだけではなく、IBディプロマプログラムの教育内容や、国際教育を推進していく上での自身の役割をより深く理解していくための取り組みを、個人で、または周囲の人々と協力して積極的に進めていく。
このコースでは、IBの教育に沿った教育的効果の高いカリキュラムデザインのプロセスの探究、学習成果を正しく伝えていくための評価手順の構築、形成的評価及び総合的評価を確実に実施するために必要な教育的プロセスの理解へのサポート、自身の指導に対する振り返りと改善可能な箇所への取り組み、IBディプロマプログラムの目標達成に向け協力して進める学習に取り組んでいく。

IB教育実践研究 Ⅰ

経験豊かなIB教育者には、自らが実践する教育に対してだけではなく、教育を取り巻く環境や状況への振り返りや、国際的な教育者としての自らの役割の模索など、高い能力と意識を備えた教育者であることが求められる。
このコースでは a) カリキュラムデザインと構造(Curriculum design and structure)、b)指導と学習(Teaching and learning)、c)評価と学習(Assessment and learning)、d)専門性の高い学習(Professional learning)の4つのテーマを通して現代社会における課題を明らかにし、詳しく考察を行うなどの取り組みを行う。批判的な視点から課題を分析することにより、自らを取り巻く状況を正しく理解していく。また、学校やIBコミュニティの中で起こる様々な出来事に対して、知識や情報を元に適切な対応方法を導き出していく。

IB教育実践研究 Ⅱ

幅広いスキルとテクニックを駆使した綿密なリサーチの結果導き出される適切かつ信頼性の高い結論は、学習者に深い洞察の力を与えるとともに、教育内容や方針についてどの範囲をどのように転換していけば良いかを見極め、適切な判断を下す上で大きな助けとなるものである。
このコースでは、教育的探究に取り組む上で求められる、正しい方法と手順のもとに探究を進めていくための知識と能力の育成を目的としている。自身の指導を研究する際に必要となるスキルを養うとともに、組織やシステムの枠組みの中での教育のあり方を考察する力を、コースの取り組みを通して身につけていく。

教師教育学研究

教職課程マネジメント研究

大学における教職課程を経営・運営するために必要な事項を総合的に教授する。教職課程の目的と役割、教職課程を構成する法令の理解、教職課程カリキュラムの構造、大学における教員養成組織の設計―教職課程センター等と「教職指導」、教職課程専任教員の資質能力の向上策、地域と連携した魅力ある教職課程の設計など、教職課程に生じる具体的問題を内容とする。

教員養成・研修制度研究

日本の教員養成・研修制度の理解は、教師教育学の基本である。大学等における教員養成と現職の研修とが、いかなる制度によって行われているのか、教育養成・研修行政に関する法制と中央・地方教育行政の具体的な施策と事例、学校経営における教員の力量向上のための研修にも触れながら、教員の養成と研修の今後の方向について明らかにしたい。

教員養成評価研究

大学における教員養成の質的な向上を果たすには、行われた教員養成の事実を評価し、次への見通しを得る必要がある。これを教員養成評価という新たな方法によって行う機運が高まっている。従来の教職課程認定制度に対して、教員養成の過程と結果を評価することで教員養成の質的な向上を結果しようとするものである。諸外国の先行事例を踏まえ、今後の制度設計と運営について、大学の役割に焦点をあてながら考察する。

教師教育教授法研究

大学における教職課程カリキュラムに関する教授法を研究する。教育職員免許法に規定される「教職に関する科目」を対象として、科目の目的、教授の内容(講義の概要と到達目標)、教授の実際と方法の改善、評価と学生指導のあり方について、具体的な事例を交えて、今後に教職課程担当者となる立場を前提に研究を行うものである。本科目では、教職入門、教育原理、教育制度等、教育の基礎理論に属する領域を扱う。

関連研究

中等教育研究

中等教育研究の範囲は広く多岐にわたる。中等教育の特質をふまえながら、受講者の関心の対象となっているさまざまな学校種に対応させつつ、教育課程ならびに学習指導等の具体的な事例を中心に検討する。中等教育に対応するそれぞれの学校におけるカリキュラム、授業の構成、学習指導の実際を、制度や学習指導要領との対応や教科書のあり方などとの関連を考えながら検討し、新たな中等教育のあり方をカリキュラムと学習指導の両面から検討するという形で進める。

高等教育研究

日本の高度成長期に大学は社会の「人的資本」需要に応える供給機関として重要な機能を果たしながら拡大してきた。その後の大学数の増加と少子化によって、日本の大学のユニバーサル化は促進される一方、多くの大学が入学定員割れを起こすことにもなった。特に、私立大学は「私高公低」とまで云われたが、 Social upward mobility を保証するものであった。しかし、日本経済の縮小もあって、昨今の大学卒業は就職すら保証できなくなってきてしまっている。
本講義では、上記の大学をとりまくきびしい状況を踏まえ、「大学の機能」「大学の新しい役割」「大学の品質」「大学にとっての顧客」「On Demand Education」「一年次教育」「学力低下」「大学教育費の内部返還率」といったことを中心に、私立大学の今後について考えていく。果たしてこれからの時代において大学には「投資」的性格があるのか、それとも「消費」の対象となるのかを探る。

全人教育研究

小原國芳の提唱した「全人教育論」の特徴を探る。小原はなぜ全人教育論を唱えたのか、それは如何なる人間観・教育観に由来するのか、如何なる価値体系に基くのか、その理論は実践とどのように融合して来たのか、そして全人教育論は、西洋及び日本の教育にどのような影響を与えてきたのか、また、今日これからの教育にどのような意義を持つのか。
小原國芳の「全人教育論」の理論と実践を総合的・全体的に理解するには、小原が玉川学園を創立するにあたって目標とした「12の教育信条」の体系的・構造的把握が欠かせないと考える。この12信条の一つひとつの有する意味とそれらの関係を考察することに重点を置くことを通して、K-16における「全人教育」の実現の在り方についても検討したい。

脳科学と教育

教育は高度に心理的な技能である。しかし一方で脳科学の極点からの情報的解釈では、脳における高度の学習過程を誘導する、高度のインタラクションとも言える。心理的な世界と脳の世界のあいだにはまだ溝があるが、最近の脳関連の諸科学はそれを埋める大きな進歩を遂げている。その成果は、多様な学習の場面での特性と、その障害により発生する現象の深い理解につながりつつある。
本講義は、教育と学習にかかわる最近の脳科学の知見とその限界を紹介し、実際の教育現場における方法につなぐ努力について議論する。

特別支援教育実践研究

この授業は、現在大きな関心を持たれ、また、現場での対応が急がれている特別支援教育をとりあげる。具体的には、LD、ADHD、アスペルガー、高機能自閉症などをもつ児童、学生の理解や対応を考えるものである。
ただ、「実践研究」を標榜する本授業では、担当者自身の経験をふまえ、一般論ではなく、具体的な事例を積極的に取りあげるとともに、実践的な手法に目を向け、受講生の経験なども反映させながら進めていく。受講生は自身の見聞を担当者とともに検討する姿勢を期待する。

教員養成海外制度研究

教員養成に関する世界各国の制度を比較研究しながら、日本の教員養成制度の特徴を明らかにする。これによって、我が国における教職課程カリキュラム、教員養成評価、現職の研修、免許の更新等の今後のあり方について、有効な視点を形成したい。また外国の教員養成の課題は何か、教職課程はどのように運営されているのか、担当者の意識はどうか、についても明らかにする。

大学教員資格研究

大学教員の資格とは何か。大学院専修免許課程の拡充が課題となる今日、教職課程担当教員の学位、業績、研究力量が問われる状況にある。大学教員全体の資格をもとにしながら、今後の教職課程担当者のキャリア形成の課題を明らかにしたい。

ファシリテーターとしての教師の技術と実践A

子どもの主体的・対話的・深い学びを促進するためには、教師が一方的に主導性を発揮する指導ではなく、子どもの考えや判断を待ち、子どもの発言や試行錯誤を促進できる環境作りが必要である。そのためには子どもを支えながら導く支導(ファシリテーション)が求められ、本授業では基本的なファシリテーション能力の向上を目指す。グループ・アプローチであるTamagawa adventure program(TAP)の実践を通し、体験学習サイクルに則りながら学びを深めたい。

ファシリテーターとしての教師の技術と実践B

本授業は、全ての子どもが対象となる開発的生徒指導で実践されているグループ・アプローチをアドベンチャーの理論に基づいたTeachers as professionals(TAP)を通して体験的に学ぶ。ティーチング・ファシリテーティング・コーチングの違いを理解し、グループ活動におけるファシリテーターの役割、集団の発達、目標設定と振り返りの方法、ルールやリレーションづくり、体験の量と質などを学び、学級マネジメントやプログラムデザインができることを目指す。

特別演習

教育学特別演習Ⅰ
教育学特別演習Ⅱ
教育学特別演習Ⅲ

「教育学特別演習」Ⅰ、Ⅱ、Ⅲは、教育学研究の基礎となる方法論を学ぶことを目的としている。それぞれの研究領域によってその進め方や方法論が異なるので、受講者は自身の研究テーマに即した演習を選択し、各学期当初に担当者とともにコースの進め方、文献の選択などを打ち合わせることとなる。担当者は基本的に修士論文指導も兼ねる。基本的にⅠからⅢまでは同一の担当者がこれを行う。修士課程での研究生活の中心となる科目である。

研究者倫理

科学は多くの先人が作り上げてきた知識の体系であり、人類共有の資産である。科学研究とは、敬意を払ってこの知識の体系を利用しつつ、そこに新たな価値を加えることにより、その発展に寄与することである。科学の健全な発展は、研究活動が真実・信頼・公正に基づくことにより遂げられる。これらから逸脱して科学の健全な発展を阻害する行為が、研究における不正行為である。本講義では、研究における不正行為および疑わしき行為について、実際に遭遇し得る場面を想定しながら考え、議論することを通じて、実践知としての研究者倫理を身につける。

統計

情報の送り手と受け手との間には埋められない情報格差(情報の非対称性)がある。この情報格差をいかに解消するかに情報を分析する意義がある。データは無味乾燥なもので、それ自体に意味はないが、それら情報を統計手法で分析することにより、情報の発信者の意思決定プロセスや情報の受け手の間に一定の傾向を見出すことができる。本講義では、統計ソフトRやエクセルを用いて多変量解析を行う。多変量解析は経済学、経営学、そして工学など幅広い分野で応用されており、これら分析を利用して意思決定が行われるケースが多々ある。本講義では、多変量解析(単回帰分析、重回帰分析、ロジスティック回帰分析)を理解し、実践できるようになるのが目的である。

Research Presentation

学会や研究会における英語での口頭発表やポスター発表は自らの研究成果を示し、情報を交換する場として重要になってきている。本講義では事例となる論文について、その内容のポイントを読み取り、それを相手に的確に伝えるために何を表現するべきか、科学者・技術者の視点から指導する。受講者は自分の領域の代表的な論文を資料として、それを講師の指導をうけつつ理解し、自身で発表して後に改善の指導を受ける。指導は、スライドの作り方、ポイントの置き方、英語の表現、さらに他者の発表に対する質問のポイントの見つけ方など、発表者だけでなく聞いて議論する立場での方法も含まれる。

ELF 500

ELF 500 This course is designed to develop students’ academic literacy in English. Students are expected to acquire skills necessary for academic presentations as well as writing in their areas of specialty.
It is primarily designed for 1 st year graduate students of Humanities, although graduate students in other disciplines as well as qualified undergraduate students may enroll with permission.

インターンシップ 500〜599

「インターンシップ 500〜599 」は、民間企業、各学校等(幼稚園・保育所を含む)・大学又は試験・研究機関(以下「派遣先機関等」という。)において、社会的にニーズのある先端的・実践的な研究課題に挑戦することを通して、“幅広い視点からの課題設定能力と問題解決能力”を養い、実践力・企画力・リーダーシップある人材を育成することを目的とする。実施にあたっては、派遣先機関等や扱う課題に応じて、集中又は分散して実施できる柔軟な体制をとる。受講者は、各研究科教務担当及び派遣先機関等の協働的な事前・事後指導の下で、諸活動に取り組まなければならない。本活動を通じて、自分自身の専門的能力と、各現場から要請される能力の差異を認識し、今後の研究活動に活用・応用していくことが期待される。受講にあたっては、研究科ごとに実施されるガイダンスに必ず出席すること。