星野あゆみ先生第3回 IB都市伝説 その2

2017.09.01

 IB都市伝説②『IBはエリート教育である』 

特権階級の子供の教育や天才を育てる教育を「エリート教育」とするならば、IB教育はエリート教育ではありません。ではなぜそう思われるようになったのでしょうか。
IBの教育は日本ではこれまでインターナショナルスクールで多く実施されてきました。現在も国内47校のIB認定校のうち27校がいわゆる各種学校や無認可のインターナショナルスクールで、20校が日本の学校教育法第1条に規定されている学校、いわゆる一条校です。一条校での取り組みが2013年に文科省がIB教育を推進し始めてから急激に増加はしましたが、数としてはまだインターナショナルスクールの校数には及びません。インターナショナルスクールは国からの補助金がないため、授業料はどこも年間200万円程度はします。これは普通のサラリーマン家庭ではなかなか払えない金額です。これまで国内でIB教育を実施していたのはインターナショナルスクールがほとんどでしたから、保護者に平均的なサラリーマン以上の年収がないとIB教育を受けられなかったのは事実と言えそうです。だからと言って、お金持ちのための教育ではありません。現在は世界中のIB認定校の半数以上が公立学校です。日本のIB認定校の20校のうち現在は4校が国公立の学校で、これから日本の公立学校にも広がっていくことが予想されます。また、IB認定校は現在140の国と地域に点在していますので、開発途上国でも実施されています。
ではIB教育の内容はどうなのでしょうか。IBの提供するどのプログラムでも探究学習が推奨されています。学びの喜びを実感することで生涯学習者が育つ仕組みになっています。また、学習評価、つまり成績のつけ方はテストのみならず様々なアプローチをとり、ルーブリックを活用します。多様な力やスキルが身に付き、各単元の目標である力がつき易く、全体として底上げ効果が期待できます。DPはもともと大学進学を目指す生徒のためのプログラムですが、現在ではシカゴの貧困地域でも成果を上げていますし、キャリア教育を取り入れた新しいCP(Career-related Programme)もあります。
日本国内の普通科の高等学校の数が3800校ほどであることを考えると、IB認定校が世界で4800校程度ということは、かなり実施校数は限られているのは事実ですが、少しでも多くの生徒たちがアクセス出来るようにIBO、政府、地域、学校が工夫を重ねているところです。