星野あゆみ先生第4回 IB都市伝説 その3

2017.09.06

IB都市伝説③『IBは海外大学へのパスポートである』

DPを取得している生徒は海外大学へ進学しやすい状況にあるのは事実ですが、DP取得者がどこの国の大学でもそのスコアだけで合格できるかどうかは別です。
カナダではDP取得者の受け入れの歴史が長く、DPを高く評価しているので、DPの最終スコアが合否の大きな鍵になります。イギリスやオーストラリアでもカナダに近い状況があります。一方、アメリカではDP取得者も特に上位校と言われる大学に進学するためには、SAT(大学進学適性試験)や日本の高校出身者であればTOEFL(英語を母語としない人のための英語力試験)を受験して、そのスコアを提出することが求められます。DPの履修だけでもかなりの時間を要しますので、SATやTOEFLの勉強もするのは大変なことです。
ではどの国の大学もDPがないと合格できないか、と言えば全くそうではありません。一般的な受験の方法、すなわち成績証明書や推薦書などの書類を整えて、場合によってはインタビューを受けて合格することは十分可能で、これまで日本の高校から海外大学へ進学した人たちはこの方法で進学しています。先ほどのアメリカの場合なら、むしろDPを履修していない方が、SATやTOEFLの対策準備に時間がかけられるので有利かも知れません。
ではどうしてIBは海外大学への「パスポート」なのでしょうか。海外の大学ではDP取得者に対していくつかの優遇措置をとっています。第一は学生募集。大学は積極的にDP取得者を受け入れたいので、DP校にリクルーターを派遣します。学校に居ながらにして大学説明会に参加するような機会が与えられる点で海外大学に進学しやすい状況が生まれます。第二は大学入学選抜です。カナダの大学のように、DPスコアをもっていることが優遇される大学があります。これが「パスポート」と言われるようになったきっかけのように思います。第三は大学入学後のクラスのプレースメントです。例えば、DPのスコアで英語のクラスを決定します。第四は大学入学後の単位認定。高校のDPの科目を大学の単位として認定し、履修を免除することもあります。そして第五はDP取得者への奨学金枠の設定です。このような優遇措置があるためにDP取得者は海外大学へアクセスしやすいですし、行きたくなるわけです。
このような優遇措置が今日あるのは、これまでのDP取得者が大学入学後に活躍していて、大学は追跡調査でそれを知っているからこそです。つまりDPはパスポートを得るための教育ではなく、結果としてパスポートを手に入れたのでしょう。そして、このパスポートとは実は入学するためのパスポートではなく、大学のみならず、これからの人生で、これからの社会で活躍するパスポートなのではないでしょうか。