高平小百合先生コラム2:賢さの個人差って何でしょう?

2018.10.01

多重知能理論によって提唱されたように、人間の知能には様々な側面があります。人は皆、すべての知能の側面を持っていると考えられます。では、個人差はどのように生まれるのでしょうか?人は皆、得意・不得意があります。ある人は、いくつかの知能の中で他の知能に比べ、特にある特定の知能に秀でているかもしれません。どの知能が突出しているかによって、その人の人格的・認知的個性が決まってくるのかもしれません。
多重知能理論は、8つの知能を仮定していますが、この理論がすべてではありません。理論はあくまで理論であって、人間の知的側面の姿をうまく説明するために提唱されたモデルにすぎません。真の姿を説明するには、いろいろな理論が必要になることもあります。自分が何を知りたいかによって必要な理論を選択し、その理論に沿って自分のリサーチクエッションを設定していくという手法が心理学の研究では用いられています。

別の知能の理論で知能の鼎立理論というものがあります。これは、Robert J. Starnberg(1985)というイエール大学の先生が提唱した理論です。鼎立とは、3本足のような意味があり、3つの知能の下位概念(構成的知能・経験的知能・文脈的知能)から成り立っています。構成的知能は、学校成績やメタ認知能力とも関係があり優等生はこの知能が高いと考えられます。経験的知能は、自分の経験から新しいことを創出する能力があるとされ、興味関心が高いことには熱中し、その分野において自分の知識や個性を生かして何か新しいアイディアや理論などを生み出すことができる人はこの知能が高いと考えられます。オタクに近い人はこの知能に優れているかもしれません。第3の文脈的知能はストリート・スマートとも呼ばれ、現実社会で生きぬくために身につけた様々な知識も含まれます。周りとうまくコミュニケーションを取り、その集団の中で自分を優位に位置づける人はこの知能が高いと言えるでしょう。このストリート・スマートという言葉には、この理論が提唱されるに至った重要な逸話があります。

参考文献

Sternberg, R. J. (1985). Beyond IQ: A Triarchic Theory of Intelligence. Cambridge: Cambridge University Press.