寺本潔先生:SDGs学び旅 -北海道網走・知床への出前授業で考えたこと-もっと観光教育の推進を

2021.12.20

数年前から、わたしは観光を題材とした授業開発や観光庁の協議会で観光教育推進に尽力しています。その成果は『玉川大学教育学部紀要(論叢)』や『玉川大学教師教育リサーチセンター年報』をはじめ、2冊の出版物(『観光教育への招待』『地理認識の教育学』)として公表していますので興味ある方は探して頂けたら嬉しいです。

写真3 観光客目線に立った知床の楽しみ方を考え合う筆者の板書(筆者撮影)

いろんな観光地に出かけて当地の児童生徒に「観光の花びら」という6枚の花びら(自然・歴史・食・イベント・生活文化・施設)から、その観光地の魅力を尋ねていますが、驚くほどに紋切型の回答や偏った知識しかない実態に驚いています(写真3)。「地元人の地元知らず」は子どもたちも同様です。人は、尋ねられてうまく答えられなかった瞬間に知らない自分に気づくものです。また、案外観光客というゲストが何を求めてやってくるのかを、当地の人々は深く堀り下げて捉えていません。ホストである地域住民自身、半分かりでしか地域の魅力を語れない実態があります。筆者が、ちょっと事象の背景を尋ねたり、地名の由来や産物の中身を質問したりしても、うまく回答できない住民が多いのです。地域の大人の意識を変えていくには、その土地の児童生徒による探究的な学びの姿を周囲に見せていくことで「知らない自分」に気づかせる効果があると思っています。その意味で観光教育はふるさとの価値を見直す「ふるさと教育」の新たなバージョンなのです。

嬉しいことに、北海道教育庁義務教育課では、推進している「ふるさと教育・観光教育」の指定校向けの指導資料として、わたくしが監修の形で『観光教育ガイドブック』と名付けられた8頁のリーフレットを発行してくれました。同時に国土交通省北海道開発局やNPO法人ほっかいどう学フォーラムでも道内の児童生徒に対し、北海道のインフラ理解や観光教育の支援に乗り出してくれるようになってきました。