寺本潔先生:SDGs学び旅 -北海道網走・知床への出前授業で考えたこと-観光産業を肯定的にみる次世代を育てたい

2021.12.24

写真4 北海道知床半島にある斜里町ウトロ港からみた夕景

手元に中学校社会科公民の教科書があります。そこには「市場のしくみ」や「金融のしくみ」が解説されています。しかし、観光産業についてはありません。地理的分野の教科書にはわずかに北海道や沖縄県の観光地が紹介されていますが、やはり観光の仕事には着目されていません。ところで新型コロナ感染症拡大に際して、観光産業が悪いかのような印象で語られることはなかったでしょうか。でも、旅館やホテルからクラスターが発生したことはほとんど聞きません。12月に都心で開催された「日本の観光再生シンポジウム」(日本観光振興協会主催)でも、感染症対策として地元の医師会や医学部との連携で各地の観光地が感染を防ぐ先進的なしくみが整いつつあることが報告されました。感染拡大は確かにありましたが、観光業そのものが決して悪いわけではないのです。将来のわが国の経済発展を考える上で裾野が広く関連産業に多くの雇用を生む観光産業は有望です。そのためにも児童生徒に観光産業を肯定的に捉える見方・考え方を養いたいものです。

また、ライフワークバランスの観点から、自らも人生で観光やワーケーションを楽しむ生き方を獲得してほしいと思っています。そのためにも、学校においても観光教育を扱う時間を設け、観光へのまなざしを改善し、地域振興や観光まちづくりへの参画を期待したいものです。「観光は平和へのパスポート」という国連で定めた意味づけがあります。SDGsが重視される時代にあって、「持続可能な観光」や「責任ある観光」を望む時代に入ってきています。北海道へのSDGs学び旅を通して次世代育成を目途にした観光教育の必要性を改めて感じたこの頃です。