工藤亘先生(3)幼児教育や保育でのファシリテーションの現状と小さいけど偉大なる冒険家
2025.06.13
先般、本大学院教育学研究科の修論構想発表会が実施され、9名中6名が乳幼児教育研究コースのM2であり、幼児教育や保育でのファシリテーションについての興味・関心が喚起された。
令和3年1月26日に文科省中教審は『令和の日本型学校教育』の構築を目指して-全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現-(答申)』において、子供たちの可能性を引き出し、個別最適な学びと協働的な学びの実現を目指すにあたり、教師に求められる能力として「ファシリテーション能力」を追記している。そこで幼児教育や保育ではファシリテーションをどのように捉え、どんな現状であるのかを調べたくなったのである。
手始めにCiniiにて以下の検索ワードで件数を調べてみた。(2025.5.24現在)結論から言うと幼児教育や保育では、「ファシリテーション及びファシリテーター」に関する研究は非常に限定的であった。この結果から幼児教育や保育では「ファシリテーション」についてこれから研究されるのか、あるいは「ファシリテーション」という意味がマッチしていないのか等、研究の余地があると考える。
「幼児教育・ファシリテーション」 :2件 「幼児教育・ファシリテーター」 :5件
「幼児教育者・ファシリテーション」 :0件 「幼児教育・ファシリテーター」 :0件
「保育・ファシリテーション」 :18件 「保育・ファシリテーター」 :31件
「保育者・ファシリテーション」 :9件 「保育者・ファシリテーター」 :12件
鈴木健史氏主宰の保育ファシリテーション実践研究会によれば「保育現場においてファシリテーションのスキルとマインドを用いること」を保育ファシリテーションの定義としているが、不勉強のため具体的にどういうことかを知りたいところである。*https://www.hoiku-facili.work/aboutus.html(2025年5月24日最終アクセス)筆者が調べた範囲ではこれ以外に「保育ファシリテーション」の定義は見つからなかったのである。
これまで筆者は主に、小学5年生以上の児童・生徒・学生・教員等を対象としたアドベンチャー教育及びファシリテーションについて研究してきたが、幼児や幼児教育者・保育者を研究対象としてこなかった。しかし、幼児は「小さいけど偉大なる冒険家」だと考えている。なぜなら、幼児は遊びや環境等を通して「アドベンチャー(成功するかどうか不確かなことに、あえて挑戦すること)」(工藤,2005)をしているからである。国(文部科学省・厚生労働省・内閣府)は以上のような視点で偉大なる冒険家を育て、ファシリテーションをしていこうと考えているのか疑問が湧いてきたのである。
<蛇足>昭和40~50年代だと思うがCMで「わんぱくでもいい、たくましく育って欲しい」という言葉が使われていた。しかし令和時代には、“わんぱく“な子はいるのだろうか?ちなみに筆者は、大学生時代にデンマーク人の体操コーチから”ヤンチャ坊主“と呼ばれた・・
参考文献
- 工藤亘「小学部5年生における玉川アドベンチャープログラム(tap)の4年間の実践に関する研究」玉川大学学術研究所紀要第11号、2005年、pp.33-38