鈴木美枝子先生「こどもまんなかの食生活支援」について考える(3)
2025.09.08
ここまで、第72回日本小児保健協会学術集会のシンポジウムでの発表内容についてお話してきましたが、その後のディスカッションタイムで、「保育・幼児教育施設での『こどもまんなか』の食生活支援については理解できたけれども、乳幼児健診の場などで子どもの食に関して困っている保護者に対してはどのように『こどもまんなか』の食生活支援をしたらよいか」という質問が出ました。様々な考え方があろうかと思いますが、子どもの食の困りごとを感じている保護者に対しては、まずは保護者のその気持ちに寄り添うことが先決だろうと思います。そのうえで、様子をみながら「こどもまんなか」の視点で考えてみることも提案していけるとよいのではないでしょうか。「自分の子どもの好きなことは何か」、「子どもは食べないときにどんな気持ちになっているのか」といった、「こどもまんなか」の視点を持つことで、子どもの気持ちに思いを馳せ、保護者の「食べさせなくては」という強い思いを少し和らげて、再考してみる余裕が出てくるかもしれません。こうした子どもの立場に立った視点を加えることで、保護者にとっても「こどもまんなか」の食生活支援ができるようになっていくのではと思います。保護者としての願いはあってよいのですが、その思いを実際の子どもの姿と重ね合わせたときに、「子ども自身はどう感じているのか」といった子ども理解を同時に行っていくことが重要であろうと思います。子どもの現状を受け止めながら、「ではどうしたらよいか」を考えていくことが必要です。このように子どもと歩み寄りながらかかわっていくことは、何事においても非常に大事な視点であるといえるでしょう。
このように見てくると、保育・幼児教育施設では、保育者と保護者が連携しながら、「こどもまんなかの食生活支援」をすることができる絶好の場ともいえます。本コラムの(2)で示した事例からも、そのことが伝わると思います。さらには、保育の場と母子保健の場とが一体となって保護者を支援していけると、さらに「こどもまんなかの食生活支援」が実現されるのではないかと考えます。一筋縄ではいかないこともあるかもしれませんが、気長に子どもが安心できる環境を作り、多角的なアプローチを試みて、目の前の子どもがどう感じているかを丁寧に捉えながら「こどもまんなか」の食生活支援をみんなで進めていかれたらと切に願っています。
参考文献
- 「幼児期の健やかな発育のための栄養・食生活支援ガイド【確定版】」令和4年3月
https://www.niph.go.jp/soshiki/07shougai/youjishokuguide/YoujiShokuGuideKakutei.pdf
(2025年8月19日閲覧) - 「シンポジウム4 こどもまんなかの食生活支援―『幼児期の健やかな発育のための栄養・食生活支援ガイド』をもとに考える―」『小児保健研究』第84巻講演集,p.p.95-96,2025年.