大豆生田啓友先生保育の質の確保と向上のための取組②-「往還型研修」と「公開保育」をつなぐ

2026.04.17

保育の質を高めるための地域の研修として、「往還型研修」について触れました。往還型研修は、研修を受けて自分で決めたチャレンジテーマを実際に園の実践を行い、その実践の取り組みの姿を写真で次回の研修に持ち寄り、1回目と同じ受講者グループで語りあう中で学び合いを深めるのです。そして、そこから得られたことや考えたことをも含めて次の実践に活かしていき、最終回には受講者全員がその取り組みについて写真を通してポスター発表します。

その特徴は、外部の研修と園での保育実践が「往還的」であるという側面に加え、受講者同士の語り合い、学び合う中での省察的プロセスに大きな意味があるのです。ポスター発表の場もまさに対話と省察のプロセスの場となっているとともに、互いの取り組みを鑑賞的に対話するような取り組みであり、それは相互的な評価の場でもあり、自身の実践を語ることの喜びにとどまらず、保育者としての専門性の自覚化にもつながっていると言えます。

往還型研修を実践した保育者へのインタビュー調査(高嶋・岩田・松山・三谷・大豆生田2021)では、図表のように、実施当初「不安・負担」もあったが、園長はじめ同僚の支えもある中で、子どもの姿への手応えを感じ、その子どもの姿から保育を展開していく「子どもの姿ベース」の保育のサイクルが生まれていることがわかります。ここでもう一つ特徴となるのが、この研究での対象園は、往還型研修に加えて、「公開保育」も実施しているということです。往還型研修だけでも成果があるのですが、これを園内あるいは園外に向けて公開保育を組み合わせることで、より成果があることが、このインタビュー調査からも見えてきます。

ここでの「公開保育」とは、園をあげて公開に向けて沢山の準備を行い、当日はその成果を見せ、それに講師が講評をするのではないことが特徴です。チャレンジテーマを持って実践は行いますが、準備は最低限にして、日常的な姿を公開し、その日常的な子どもの姿を通して参加者とも語り合うスタイルを取ります。ここでも、往還型研修同様、対話と省察のプロセスによる互恵的な学び合いの場を形成するのです。往還型研修受講者の中からいくつかの園の保育者が公開保育を行うことで、他の受講者も他園の実際の取り組みを通して学ぶ機会となるのです。

他の園の保育を実際にあまり見たことがないという保育者も少なくないことを考えると、負担感を軽減し、もっと気楽に行える公開保育が広がることも大きな課題と言えます。そして、「往還型研修」と「公開保育」を組み合わせた市町等の取り組みは、いま全国で広がりつつありますが、それは、地域全体の保育の質の向上につながる可能性があるので、さらなる広がりを期待します。

高嶋景子・岩田恵子・松山洋平・三谷大紀・大豆生田啓友「保育の質向上と保育者の成長を支える往還型研修 一実践と研修の往還がもたらす新たな意味と価値の創造過程-」保育学研究 第59巻 第3号 2021年