田甫綾野先生台湾の幼児教育(2)―幼児園の実践①
2026.06.12
今回は、台湾の幼児園の実践を具体的に見ていきたいと思います。
原住民の文化を重視した教育
桃園市で訪れた園は、台湾原住民タイヤル族の居住地域でした。また、北新市で訪問した幼児園はアミ族の方が多く住んでいる地域とのことでした。日本ではあまり知られていませんが、台湾には現在認定されている原住民族が16あるそうです。
どちらの園も、原住民の生活や文化について園舎の至るところに展示があり、原住民の文化や伝統を大切にしていることが分かりました。桃園市の復興区立幼児園では、ほとんどの幼児がタイヤル族とのことですが、現在家庭では伝統文化が伝承されていないそうです。子どもたちも先生方もタイヤル族の伝統的な織物を使ったユニフォームを身につけ、生活洋式や農作業等を幼児園での生活に取り入れたり、タイヤル語のイマージョン教育を実践したりしていました。また、同じ桃園市の霞雲国民小学と附設幼児園を訪問した際は、小学生がタイヤル族の伝統的な歌を披露して歓迎してくれました。伝統的な薬草を取り入れたスープを子どもたちが食し、歌や踊りを日々楽しんでいることも見ることができました。
アミ族の文化を記したボード(樟樹幼児園)
小学生が制作したタイヤル族の伝統的な織物(霞雲幼児園)自然との共生・環境教育(SDGs)
園庭に広がる田んぼ(八徳幼児園)桃園市立八徳幼児園はもともと農業が盛んな地域ということで、米作りを保育の中に取り入れていました。保護者や地域の人と作った土壁と草屋根の小屋なども子どもたちが遊ぶスペースとして活用されており、環境教育が意識されていることが分かりました。
また、台北市立南海幼児園では、台湾固有の植物が植えられ、台湾に自生する樹木なども園庭にたくさん植えられていました。私たちの訪問時には偶然にも台湾の国鳥である「臺灣藍鵲(山娘)」という美しい鳥が飛来し、自然との共生を幼児が考えられる環境づくりが行われていると感じました。
探究や科学的なものの見方を重視(STEAM教育)
探究や科学的なものの見方を促す環境も工夫されていました。台北市立南海幼児園には、さまざまな自然物の標本(貝、石、虫等)が用意されており、虫眼鏡や顕微鏡などで観察することができるようなコーナーがありました。他にも大きな万華鏡のような装置や走馬灯のようなもの、ライトテーブル、などが用意されており、子どもたちが自分で選んで遊べるようになっていました。
また、クラスで行なっているプロジェクトでは、どうしたらご飯が炊けるかを試行錯誤しているクラス(南海幼児園)や、伝統的な建築物に興味をもち、カプラで再現しようとしているクラス(桃園市立桃園幼児園)など共同的に探求している様子も見ることができました。
地域資源の活用
どの園でも地域の中の幼児園ということが意識されていました。地域の特性や文化を重視することはもちろんのこと、例えば田んぼをつくる際には地域の方が協力してくれていたり、原住民の文化を伝えるために地域の方が保育に参加していたり、教師だけではなく、いろいろな人の協力のもとに保育が行われている様子が見られました。
どの園でも先生方が主体的に保育を考えて、作っている様子が見てとれ、皆さん生き生きと自分の実践を語ってくださるところがとても印象的でした。OECDのラーニングコンパスで示されている「Co-Agency」という考え方も台湾の幼児園の実践から感じることができました。




