田甫綾野先生台湾の幼児教育(3)―台湾の保育者養成
2026.06.29
これまで2つの保育者養成施設の視察をすることができました。台北市にある師範系の大学「台北市立大学」と桃園市にある技術系の大学「南亜技術学院」です。台湾の幼児園で働くための資格には「幼児園教師」と「教保員」という2つがあります。これは一元化以前の二つの資格をそのまま受け継いでいるということです。つまり、2歳以上児の幼児教育自体は一元化されたものの、保育者の資格は二元化のままであるということで、大変驚かされました。
幼児園で働く場合、資格による業務の違いはなく、全く同じことを行うそうですが、給与や福利厚生などは異なっているということです。また幼児園教師の資格を持っていても就職できるポストは少なく、教保員として就職する人もいるとのことでした。
このような複雑な保育者の資格と身分があるということを知り、台湾の保育者養成についての詳細を知りたく、養成校の視察と、関係者へのインタビューを行いました。
台北市立大学のキャンパスまず、幼児園教師ですが、専門性が非常に高く、国立の師範学校系大学を中心に11大学(4年制)と幼児教育センターをもつ3大学のみで養成が行われています。資格を取得するためには、まず大学で教育実習を含めて50単位修得する事が必要で、卒業後に国家試験があり、それに合格すると、さらに6ヶ月間の実習があります。それをパスして初めて幼児園教師の資格が取得できるということです。幼児園教師養成大学の入学者に対して、資格取得者は40―60%程度とのことで、資格取得のハードルが高いため、専門性は高く、社会的地位も低くないそうです。
公立の幼児園はほとんどが幼児園教師の資格取得者で、修士課程を修了している方も多く、皆さん誇りをもって保育をしているように見受けられました。また、今回訪問した公立の幼児園では、どこも玄関先に先生方の幼児園教師の証明書、大学・大学院の卒業証明書等が掲示されており、ほとんど全員幼児園教師の資格をもっていらっしゃるようでした。一方で教保員は、多くの大学・短大で取得することができ、実習を含めて32単位の履修で取得が可能とのことです。今回視察した南亜技術学院では、昼間コース、夜間コース、リカレントコースなどさまざまな学びができるシステムが整っていました。また、実習室が多くあり、実学的な学びも充実していることが伺えました。


幼児園教師の専門性の高度化は、それまでの台湾の教師養成の流れの中で培われたものであり、非常に意味あることであると感じました。一方で、高度化が進みすぎることによって、資格取得者を確保できなかったり、給与が高くなって私立の幼児園では雇用ができなくなったりという問題も生まれているようです。このことによって保育者資格の二元化が起こっていますし、幼児園教師と教保員のヒエラルヒーも生まれています。幼保一元化によって、台湾のすべての子どもたちは等しく幼児教育を受けられることになり、また保育の質の向上にもつながっていることが分かりました。しかしながら、保育者の資格や養成においては、まだ課題といえることもありそうです。今回の視察では、日本のこれからの幼児教育を考える上で重要な視点を、たくさん得ることができ、学びの多いものとなりました。




