坂野慎二先生学校教育をうまく機能させるために(第1回)
2026.09.01
はじめに
日常生活の中で、「〇〇をうまくやりたいな」とか「〇〇はどうすれば達成できるのか」と思うことがよくあります。例えば、「この材料で何をつくればおいしく食べられるか」であるとか、「あの人と親しくなるために同じ趣味をもとうか」といったことを考えます。一般の会社では「どうすれば売り上げが伸びるのか」、「どうすればお客様によろこんでもらえるのか」といったことを考えることがあります。
こうしたときに、マネジメントサイクルとしての「PDCA」という言葉がよく使われます。「P(Plan)」は計画、「D(Do)」は実施、「C(Check)」は評価、「A(Act,日本ではActionが多い)」は改善、といった流れです。まずは計画を立て、実際にやってみることから始まります。その結果を評価、確認して、うまくいかないところを変更したり修正したりして、次の計画へとつなげていきます。
学校におけるPDCAサイクル
学校教育の世界でもこのPDCAサイクルは頻繁に使用されています。その端緒となったのが、学校評価の法令化です。学校評価は、2002年に各学校設置基準に努力義務として規定されました。2007年には学校教育法及び同法施行規則が改正され、学校の自己評価が義務として規定されました(学校教育法第42条及び同法施行規則第66条)。幼稚園、中学校、高等学校等もこの規定が準用され実施されます。また、学校の自己評価に基づいて、保護者や地域住民の方を中心とした学校関係者評価が行われます(学校教育法施行規則第67条)。
学校は、年度単位で動いています。4月に大規模な人事異動があり、新たな教職員がそろいます。学校によっては校長も新たに着任します。学校でも年度単位で学校経営計画や教育課程届といった計画(P)を作成して、教育活動を実施していきます(D)。そして学校評価です。多くの学校は児童生徒と教職員、保護者、地域住民の方を対象に、夏休み前と冬休み前等にアンケートを行います。そのアンケート結果を基に教職員は学校の自己評価を行います(C)。自己評価はまずは各部会や委員会等で行われ、それが学校全体でまとめられていきます。その分析結果に基づいて、改善点を見出し(A)、学校経営報告を作成し(地域による)、次年度に向けて新たな計画を作成していきます(P’)。
PDCAサイクルは機能しない?
学校で毎年行われている学校評価ですが、実際にその効果はあるのでしょうか。学校評価は年度末の多様な時期と重なります。アンケートの集計はある程度自動化されてきましたが、その分析を行い、改善策を考えることは、やはり手間暇がかかります。
多くの学校は新たな学校経営計画や教育課程届を新年度になってから正式に作成します。一方で、東京都等のように、年度末までに次年度の計画を教育委員会に届け出る地域もあります。新年度に計画を作成するメリットは、人事異動で新たに加わった教職員も作成に関わり、「自分事」として計画をとらえることができます。しかし新年度の準備に追われる次期に新たな計画を作成することは多くの負担が伴います。また、学校の事情があまりわからず、前年度踏襲型に陥りやすくなります。一方、前年度内に次年度の計画を作成する学校では、事情を理解した教職員が作成することになります。また、新年度当初から新たな計画に従って仕事を始めることができます。しかし新たに移動してきた教職員は、計画の意図やなぜそうしたやり方なのかが理解しにくい場合もあります。どちらも一長一短ということでしょうか。
いずれの場合も、教職員が同じ目標を共有して、同じ方向に向かって進んでいくことが重要となります。




