坂野慎二先生学校教育をうまく機能させるために(第2回)

2026.09.08

PDCAの落とし穴

前回、学校の教育活動がうまくいくようにするために、学校評価が導入され、PDCAサイクルが学校に普及してきたことを綴りました。しかし学校によっては学校評価等が形骸化し、教職員には徒労感が残る場合があります。それはなぜなのでしょうか。

PDCAサイクルは、本来このサイクルが何度も繰り返されることが想定されています。P→D→C→A→P’…といった流れです。しかし学校の大きな区切りは年度単位で動いています。実際に教職員の定期的な人事異動は4月に行われます。(ちなみに大規模な人事異動を行う国は、先進国の中では日本のみです。また、日本では教育界だけでなく、公務員や企業でも定期的な人事異動が行われます。)このため、サイクルがサイクルとして機能せず、年度単位で終了となってしまいがちです。このため、新年度に計画をたてる学校では、実態を反映しない希望や願望を目標に設定して計画を立てることが起こります。

根拠に基づいた計画(P)の必要性

近年、PDCAサイクルは古いのではないか、という指摘があります。実際、中教審教育課程部会総則・評価特別部会においても、参考資料の中にPDCA以外のマネジメントサイクルが出てきます(令和8年6月1日の田村知子委員資料)。具体的にはCAPD、DCAP、R-PDCAといったサイクルが挙げられています。これらは、計画(P)から始まるのではなく、評価(C)やリサーチ(R)等から計画を作成する必要性を示しているものと整理できます。

こうした考え方は、計画が計画のみで作成されるのではなく、計画の根拠となる証拠(エビデンス)が先に必要であることを示しています。その根拠となるものは、これまでの実態を裏付けるものとなります。具体的には前年度の学校や児童生徒の実態を示すデータ等が基盤となります。とすれば、サイクルは計画(P)から始まるのではなく、評価(C)等で始まるという考え方の方が理にかなっているといえるでしょう。リサーチも同様の考え方です。まず初めに現状を把握するための調査が行われます。その結果に基づいてどのような計画を立てるのか、その実施のための戦略を含めて考えていくことになります。

1970年代以降、教育評価の中で「形成的評価」(プロセスでの評価)の重要性が指摘されましたが、同時に「総括的評価」(出口での評価)と「診断的評価」(入り口での評価)が重要であるとされていました。学校評価も同様なのです。

計画(P)と目標

学校は、多くの目標であふれています。学校の教育目標、学校経営計画の目標、教職員の目標、児童生徒の目標(児童生徒像)、更には市町村教育委員会の設定した目標、等です。こうした多様な目標をすべて満たすことができる学校はほぼほぼありません。

目標は、大きく努力目標と到達目標に区別できます。努力目標は「〇〇をめざそう!」という形で示すことがあります。例えば「不登校0人を目指す」という目標を掲げることがありますが、実際にこうした目標を達成することは多くの学校では難しいのが実際です。そうであるとすれば、「昨年度よりも不登校の児童生徒数を少なくする」、あるいは「今年度は不登校率を5%以下にする」といった形にすれば、努力をすれば達成可能な目標(到達目標)となります。

PDCAサイクルを機能させるためには、計画(P)を立てる際に、その実現可能性を検討し、計画を立てる時点でめざす到達点を明らかにしておくことが重要となります。この計画(P)をどのように立てるのか、なぜこの到達点を目指すのかを、根拠に基づいて示すのか、が必要になります。 こうした達成可能な目標を設定し、それを実現するための計画を作成していくことが重要です。