近藤先生:子どもの健康と成育環境についてVol.4:生活リズムの変化

2014.01.27

今回は、子どもの生活の中から、生活リズムについてとりあげることにより、子どもにとって望ましい成育環境について考えてみたい。

「夜更かし朝寝坊」から「早寝早起き」に

子どもたちの生活リズムについては、起床、朝食、遊び、昼寝、就寝などの日常の生活習慣が規則的かどうかや睡眠が十分にとれているかにより、望ましいかどうかを判断することになる。ここでは、就寝時刻をとりあげて現状や経年変化をみることにする。グラフに年齢別・年次別に夜10時以降に就寝する割合を示した。
幼児全体では1980年21%→1990年31%→2000年50%→2010年29%であり、2000年に最も高くなっている。年齢ごとの傾向も同じである。また、起床時刻についても、朝7時以前に起きる子どもは、1980年(27%)から2000年(12%)にかけて減少し、2000年から2010年(27%)にかけて増加していた。
つまり、1980年から2000年にかけて夜更かし朝寝坊の傾向が進んだが、2000年を境として、夜型化に歯止めがかかり、早寝早起き傾向に転じるという変化が認められた。

夜10時以降に就寝する割合

夜型の生活リズム

夜型の生活リズムは、睡眠不足や朝食欠食、日中の活動性や集中力の低下につながり、幼児期だけでなく学童期や思春期、ひいては成人期の心身の健康状態にも悪影響を与えることが諸研究により証明されている。
前述のように、この10年ほどで夜型化傾向が改善されたことは、子どもたちの健康にとって明るい情報である。このような変化には、食育基本法(2005年)にもとづく食育推進基本計画が実施されるようになったことや、文部科学省による「早寝早起き朝ごはん」運動が展開されたことなどが改善に大きく関与していると考えられる。すなわち、小児保健や学校保健の関係者による全国規模の健康教育や啓蒙活動の効果により、子どもたちの生活リズムに望ましい変化がもたらされたといえる。
しかしながら、日本の幼児の約3割は夜10時以降に就寝しており、諸外国に比べるとまだ改善の余地があることも現実である。子どもたちの健全な発育・発達のためにも、今後も引き続き望ましい生活リズムを確立するための育児環境を整えていく必要があるだろう。

子どもの健康にとって望ましい環境とは

夜型の生活リズムを例にとると、図に示したような関連がみられる。朝食欠食、不規則な間食、食事の心配事、テレビ・ビデオの長時間視聴、テレビ・ゲームの長時間使用、気になるくせ、落ち着きがないなど、子どもにとって望ましくない生活習慣や発達特性と夜型の生活リズムが関連している。そして、両親の状況としては、母親の健康不良や子育て困難感、父親のサポート不足などとの関連が認められる。
子どもの発育・発達や健康状態に問題が生じる場合、社会要因、親要因、子ども要因、それぞれが相互に関連していて、いずれが発端になり問題が生じているのかは特定しにくく、悪循環になっている事が多い。保護者に向けて「子どもに早寝早起きをさせましょう」というメッセージを伝えるだけではなく、子育てをしやすい環境を整えること、すなわち母親が心身健康な状態で、悩みを相談できる相手がいて、父親のサポートが得られ、子育てに前向きにのぞむことができるような環境が整備されれば、生活リズムやそれに付随する子どもの問題も解決に向かうのではないだろうか。
子どもの健康にとって望ましい環境とは、両親が子育てをしやすい環境であり、その実現のためには子育て関係者や社会の支援が重要といえる。

生活リズムと関連する要因