ドイツ・ケルン大学のゼミでミニ講義を行いました

2016.05.17

4月からほぼ1年間、ドイツでの研究滞在の機会をいただきました。滞在先は大聖堂で有名なケルン市です。現在、ケルン大学の経済社会学部経済教育学専攻の客員教授となっています。ケルン大学は1388年に創設されたドイツでも最も古い歴史を有する大学の1つです。
5月12日、担当教授であるマティアス・ピルツ(Pilz)教授の修士課程のゼミで、日本の教育と雇用システムについて、ミニ講義と討論を行う時間をいただきました。(Pilz研究室のHP
日本の教育制度について、ドイツの学生にとって疑問だったことは、国立大学でも授業料を払うということです。ドイツでは、国立(州立)大学がほとんどで、授業料は徴収されていません。一時期、連邦や州の財政が悪化したときに、学期ごとに500ユーロ程度(約62500円)を徴収したことがありました。しかし多くの反対があり、結局16ある州すべてで、現在授業料は徴収されていません。また、日本では私立大学が多く、国立大学よりも授業料が高額であることを説明すると、教育の機会を損なうとともに、職業選択の自由が経済的理由で奪われかねないという批判が多く出されました。
日本の雇用システムは、ドイツの学生には理解が難しかったようです。大学で得た能力と資格を前提として「職」を探すドイツと、大学卒業予定というくくりで「会社」訪問をする日本とでは、雇用の考え方が違っていたようです。同じ会社で経験を積んで、昇進を待つ日本と、今勤めている会社や他の会社のよりよい「職」を求めて、昇進の機会をつかもうとするドイツ。どちらもより豊かな将来を模索しているといえますが、その方法は違います。グローバル化の進む中で、制度としてどちらがより広がりやすいのか、効率的なのかを考えさせられました。
まだドイツ語の感覚が十分に戻っていない中で、拙いドイツ語を懸命に聞き、たくさんの質問をしてくれた学生さん達に感動を覚えました。また、研究滞在を許可していただいた小原理事長はじめ、出張の手配や、不在の間の様々な仕事を代わりに引き受けてくださった玉川大学の皆さんにお礼申し上げます。

(教授 坂野慎二)