本学で日本倫理学会が開催されました。

2019.01.15
山口意友

昨年秋に本学で日本倫理学会が開催されました。私が倫理学会の会員でもありますので大会運営スタッフとして教育学研究科の院生数名に声をかけ、受付・教室案内・マイク係などの仕事を手伝ってもらいました。

倫理学とは、一言で言えば「善とは何か」を問う学問です。全人教育で示される「真・善・美・聖・健・富」の「善」に該当する部分です。教育学を、教育基本法第1条が示すように「人格教育」を行う学問と理解すれば、倫理学と教育学は「善」や「人格者」を探究する学問という形で共通性を有することになります。

倫理学と教育学の違いは、倫理学が「善とは何か」を問う学問であるのに対し、教育学は「善とは何かを問い、かつそれをどう教育・実践するか」を探究する学問と言えるでしょう。ただ教育学は教育現場を中心に語られますので実践に主眼が置かれ、「善とは何か」を問うことは少ないようにも感じます。しかし善とは何かを問うことなしに善の内実を説明し実践させること(=教育)はできません。そうした意味でも「善とは何か」を問う倫理学に足を踏み入れてみることも必要ではないかと思います。

教育学研究科の院生が学会2日目のシンポジウムに参加していたようですが、京都大学の中畑正志教授の発表、「生きることの自然性と規範性──倫理的思考の生い立ち」について非常に内容が深く興味深いものだったと語っていました。今学会の発表の中で教育学に直接関係のあるテーマとしては、その他に次のようなものがありました。

  • 「初等・中等教育に対する倫理学の貢献可能性」
  • 「差別の何が悪いのか」
  • 「われわれはどのように共感すべきなのか:道徳心理学への現象学的アプローチ」
  • 「人類愛と仁愛」
  • 「自律の価値と社会」

いずれも教育現場に深く関わりのある内容です。教育学をより深く学ぶために倫理学にも興味を持たれてはいかがでしょうか。

※参考までに2018年度の大会プログラムのURLを以下に示しておきます。
http://jse.trustyweb.jp/2018/09/692018.html