ドイツのベルリン市文部省を訪問しました

2015.09.04

ベルリン市文部省

2015年9月3日、ドイツのベルリン市文部省を訪問しました。ベルリン市にはほぼ毎年来ています。今回は2012年頃から本格的に動き始めた学校支援室「proSchul」を訪問し、学校支援の在り方について議論しました。
ベルリン市等の大都市は、外国人が多く居住しています。彼らの多くは、かつて外国人労働者(Gastarbeiter)として、出稼ぎに来ていた人たちの子孫で、現在では3世代目、4世代目になる人たちもいます。OECDの国際学力比較調査であるPISA調査等で、大都市(州と同格)の成績はいつも他の州と比べるとよくありません。その理由の1つがそうした外国人の子どもの割合が高いことにあると分析されています。このため、ベルリン市は学力向上に向けて、様々な方法を模索しています。
今回訪問した学校支援室は、学校査察(日本では学校の第三者評価と呼ばれます)の結果、学校改革を自力で行うことが難しい学校を支援するための特別チームとして組織されました。主な活動は、第一に校長を中心とした学校管理職等に学校改革プロセスを丁寧に付き添い、支援すること、第二に教科指導法の改善を学校単位で支援すること、第三に指導力をつけたい教員に授業ビデオの分析を行い助言すること、です。スタッフは20名ほどで、授業力のある教員だった方や、学校管理職経験者が主体です。かつて京都市にあった地域教育専門主事室の最初の頃に似ているかもしれません。

学校支援室の皆さんに作成いただいた資料

学校の第三者評価は日本でも徐々に普及してきています。しかし、評価の結果をその後の支援へと結びつける活動はあまり進んでいません。評価結果を分析し、より良い学校に変わりたいという教職員の思いを活かす制度的な枠組みが必要です。学校支援室のスタッフは、2年程の期間、学校に寄り添い、学校管理職を中心に支援を行います。支援を開始した当初は週2回程度スタッフが学校に通い、学校教職員と頻繁に意見を交換し、学校改革の方針を決めていきます。特に重要なのは、校長と教職員の間で十分な対話を行う文化をつくることだそうです。ドイツの教員は職員室に個別の机がなく、授業が終わると自宅に仕事を持って帰ることが普通です。このため、教職員間での対話する機会を確保することは非常に重要と考えられています。組織としての学校の一体感をつくることが大切で、みんなで学校を変えるという意識を持ってもらえると、学校が変化し始めるそうです。ベルリン市の学校支援室のような取組が広がれば、学校教育の質改善につながっていくでしょう。
日本の学校改革についてもお話しましたが、日本以外ではあまりみられない教員の定期的人事異動に多くの関心が寄せられました。また、日本の教員評価(人事考課)が校長と教員の面談を基盤として行われていることも興味ある事例であったようです。これまで、ドイツを何度も訪問しましたが、日本の教育について積極的に情報発信することが重要であることを改めて確認することができました。

(教授:坂野慎二)